第43話 静けさ
その後も、野外の舞台設置やら、落ち葉拾いやらをして、気づいたら太陽もだいぶ傾いて、周りが赤くなっていた。
ようやく明日からの文化祭の準備が終わり、生徒会室に戻るため校舎の中に入った。
まだ半分以上のクラスでは明日の準備に追われているようだった。
今までは、文化祭のために頑張って準備する連中の心理がわからなかったが、今なら少しわかるような気がする。
生徒会室に入ると、中には青山と清水がいた。
「佳月と結衣には、もう少しかかるから先に帰っててって言われたけどどうする?」
「じゃあ帰るか」
「そうね」
「それにしても今日は大変だったな」
「そうですね。外での作業なんて今までなかったですもんね」
* * * *
家に帰ると、理沙がリビングで参考書やらノートやらを広げたまま机に突っ伏して寝ていた。
俺は、理沙にそっと毛布を掛けて、冷蔵庫をあさって、あるもので適当に夕食を済ませた。
理沙が起きて、俺が夕食を食べたことを知ったら、いつもみたいに怒るかもしれない。
けれど、兄としても妹にできるだけ負担をかけたくないという思いはある。
ただでさえ受験生なのに家事までこなして大変だろうに、そんな表情は一切見せない。
家でくらい、兄にくらいもう少し甘えてもいいんじゃないかと思うことがよくある。
そうはいっても、これは理沙に限ったことではなく、俺自身もそうなのだ。
けれど俺の場合は隠していても、理沙にはバレバレらしい。
本当にハイスペックな妹を持つとある意味大変だ。
まぁ理沙がハイスペックななのは、兄である俺のクズっぷりを見てきたからなのだろう。
理沙が俺みたいになりたくないと思ったのか、俺を支えないと思ったのかは分からないけれど。
俺は前者であってほしい。
兄として理沙に余計な負担や責任を負わせたくはない。
最近は、この感情がここだけの話にとどまらなくなっていることに俺は気づいていた。
けれど、だからと言ってそれで俺の行動に変化が生じたかというとそれは少し違う気がする。
人間なんて誰しも、思っていることとやっていることが違うことなんていくらでもあるだろう。
「んーー。 あ、お兄ちゃん。帰ってたんだ」
「あぁ。」
「今、夕食作るので待ってて」
「あ、いや。今日は、だな…あれだ…友達と食べてきたから大丈夫だ」
「お兄ちゃんに友達?」
「いや、疑問そこかよ! まぁ間違ってはないんだけど」
「それより珍しいね」
「ま、まぁ明日から文化祭だし、それでな」
「そう。 まぁいいけど…」
なんとかごまかせたようだ。
「そう言えばお兄ちゃんは文化祭で何やるの?」
「……散歩…かな?」
「なーんだ。じゃあいつも通りじゃん」
「ま、まぁな」
こいつ、俺のことよく知ってんな。




