2.知ってました。
「腹減ったろ、食べな」
「いただきます」
「いただきまーす!」
大谷のじーさんの合図に、俺達は手を合わせた。先ずは味噌汁に口をつける。すると大谷も真っ先に味噌汁に手を伸ばした。
『ウマい!』
と、大谷は絶対心の中で唸っているだろう。一口飲んでニンマリと満足気に笑う様子を見せられてしまえば、大谷の考えているなど手に取る様に分かってしまう。道の駅でジェラートを食べている時もそうだ、俺が土産に持参したカツサンドやオムライスも……大谷は本当に旨そうに頬張っていたな。
次に茶碗のご飯を一口食べて、それからメインのメンチカツに漸くと言った様子で手を伸ばす。それが箸でサクリと割れた瞬間、パアッと大谷の眉間が明るくなった。
「あれ?電子レンジだよね」
「スチームのヤツ買ったからな。それで温めるとサクサクになるんだ」
「え~!スゴイ」
目を丸くした大谷は大きな口を開けてカプリとメンチカツを頬張った。よほど美味しいのか、キュッと両目を細めて陶酔の表情を浮かべる。
ジックリその一口を味わった後、彼女は再びご飯や漬物にも箸を伸ばし始めた。漬物をポリポリ齧って浮かべる……その満足そうな表情と言ったら。
「……」
俺は無意識にその表情に見入ってしまっていたらしい。クルリと大谷の丸っこい瞳が唐突に俺の方に向けられた瞬間、その事にやっと気が付いた。
「ん!?」
その二つの瞳が、今夢から醒めたと言わんばかりに大きく見開かれる。
「はんまり、見ないでください!」
何だかバツが悪くて、俺は咄嗟に言い訳を口にした。
「いや、すごく旨そうに食べてるから、つい」
「うっちゃんは本当に食べるのが好きだからなぁ」
大谷のじーさんが合の手を入れると、大谷は途端に慌てて視線を彷徨わせた。
「見てばかりいないで、課長も温かい内に食べてください!美味しいですよ」
焦ったように話を逸らすから、可笑しくてしょうがない。思わず声を上げて笑ってしまった。その日食べたメンチカツは―――何だかこれまでで一番美味しく感じられたのだった。
食事をすっかり平らげた後、大谷のじーさんがお茶を運ぶついでにテレビを点けた。
「うっちゃん好きだろう」
と、じーさんに言われ大谷が目を白黒させているのを見て、噴き出しそうになったが何とか堪えた。やはり大谷のあの鼻歌は無意識だったらしい。
大谷、今更慌てても遅いんだ。
って―――コイツ、分かってないんだろうな、たぶん。




