ラスボス戦前日
「この戦いが終わったら…俺の妻となってくれないか」
「あ…」
「返事はまだいい。…全てが終わった後、お前の答えを聞かせてくれ」
なんという死亡フラグ臭。
ちなみにこの流れは相手を変えての本日5回目です。なんなの?ヒロインちゃんのお相手はそんなに死にたいの?お姉さん全力でフラグ回収しちゃうよ?
それにしてもヒロインもよくやるもんだ。結局パーティメンバー全員とフラグを立てやがった。
いや、気持ちはわかるんだ。セーブロードの存在しない乙女ゲームなら私も全力で同時進行頑張るよ多分。多分ね。
だが一言言わせて欲しい。
鉢合わせて修羅場らないよう調整するこちらの身にもなれという!例えるなら所属サークル内で五股かけるようなもんだよ?無理ゲーすぎない?サークルどころか共同生活24時間ルームシェアだよ!一緒に旅しちまってんだもの!なにこれつらっ!
うっかりミスの際のメンタルケアに送った焔が大活躍でした。逐一こちらから鏡で位置を確認しつつ、時間稼ぎや妨害などに全力を尽くして頂いた。本気で特別手当出してあげたいレベル。
「…蓮華様。参りました」
「よしよし、存分にもてなしてやろうぞ。のう、朔夜?」
「仰せのままに」
屋敷に居た下級妖怪達は既に追い出した。上級のタチの悪いのは気紛れを装って朔夜に始末させたし、良さそうなのはヒロインのレベル上げに使わせてもらった。
…唯一の難関は朔夜なんだよなあ。私自身は魅了特化の戦闘力皆無で通してるからサラッと倒されれば良いとして、どう考えても朔夜がヒロイン達を皆殺しにしちゃうよな。うーん…よし。
「…朔夜」
「はっ…!?」
ぐいと着物を掴みこちらに引き寄せると、朔夜の頭をそのまま自分の胸に抱え込んだ。ここでボンキュッボンのお姉さまなら胸で圧迫されて息が出来ない、なーんてロマン溢れるシチュエーションになるのだが、あいにくゾンビは絶壁である。ゾンビだから仕方がない。
「れっ…れん、げ、さま!?な、なにを…っ!?」
「いやなに、わらわの可愛い下僕にたまには労いでもなと」
動揺のあまり舌足らずになりながら、両手を右往左往させて朔夜は混乱している。手の置き場がなくて困っているようだ。真っ赤になりながら震えるその姿に戦慄を禁じえない。…こいつ、もしかしないでもヒロインより萌える気がする。
「なにか不満でもあるのかえ?」
「い、いえ…っ!!」
勿論朔夜に抵抗が出来るはずもなく、呼吸を浅くして震えながらじっとしている。おい誰だこの小動物を冷酷だとか言った奴。緊張を解くために優しく頭を撫でながら静かに反省した。
…弁解をさせて頂くと、私は決してセクハラがしたかった訳ではない。ちょっと楽しくなったのは否定しないが。
私の魅了効果は香によって効果を発揮している。嗅げば嗅ぐほど魅了が強まり、思考回路が単調化していき、動きが鈍くなっていく。案の定朔夜の目からは徐々に力が失われていき、ただでさえ通常の魅了効果で生気のなかった眼差しから理性すらもはぎ取られていった。
「良い子じゃ朔夜。わらわの言う事が聞けるかの?」
「………は…い…」
「1人も殺してはならぬぞ。よいな?」
「…………………は………い」
下された命令の意味を咀嚼する力すら失われた、ただの操り人形と化した状態でようやく五分五分といったところか。戦闘力自体が落ちた訳ではないから、戦闘中もこまめにフォローするかな。
さて、ついにラスボス戦のお時間だ。
アイテム補充やイベント回収は万全か?
よろしい、それでは退屈そうに寝そべりながら君のハッピーエンドを待つとしよう。
はやく、はやく、終わらせてくれ。
なんてったってもう5人ともキス済んでるから、ラスボス戦後即行帰れるからな!!
やっぱ私一途ヒロイン派だよ!!可愛くねーよこのヒロイン!!




