ずるいよぉ【幟杏】
やっぱ本命がいない子は書きにくい~
(´・ω・`)文才ホシイ
皆ずるいよ。私をさし置いてイチャイチャイチャイチャ・・・知ってるんだからね。大人しそうなあの子も、草食系のあいつも、藤田も、本命がいるくらい!
まぁ、ひーと君はまだ迷ってるみたいだけどね?
私はそれを知って、今無性に暴れたくなってるワケ。まさかのまさかで氷椏にも本命がいるみたいだし?本当、ぶっ壊してやりたい!
でも今壊したらつまらないから、もっと成熟したとこで壊すの。絶望に突っ伏する氷椏の姿を悠々と眺めていたいから。私より幸せなんて許さないもんね!
そんな事考えながらも、今日は穏便にって思ってアイシングクッキーを皆に配っていた訳。まーいい感じのペアがいるわいるわ。新たなCPもいるみたいだし。何これフラグ立ってるんだけど。むかつく。
んー、何で私ってモテないのかなぁ。可愛くないとまではいかないし・・・まぁ少なくとも氷椏よりは可愛いし、声だって氷椏よりは――。
あーあ・・・イケメンが周りに沢山いたらなぁ――って思ってみればいるじゃん!
璢夷は冷静系のイケメンでしょ~、藤田は元祖でしょ~、ひーと君はもうタイプの域だし~、あっでもでも何だかんだで輝生も・・・右流砂も意外と?あぁでもあのウジウジはいただけないなぁ。
大体の人にクッキーを配り終えて、寮に戻ってきた。氷椏と同じ部屋じゃないし、パソコンもあるから有難い!本当、天国だよね~!
急にドアをノックする音がして、誰が来たんだろうとドアについた覗き穴を覗く。
ゲッ、氷椏じゃん。
「・・・幟杏?入るよ?」
あいつは合鍵持ってるから居留守しても無駄。しょーがない、入れるか。
「どーぞー」
ガチャリという音がして、氷椏が入ってきた。その手にはチョコチップクッキーが握られている。
「あんまり美味しくないかもしれないけど、良かったら食べて」
氷椏はそれだけ言ってクッキーを置いていくと、すぐに部屋を出ていった。あー良かったぁ!
氷椏が居なくなった後、貰ったクッキーを何となく眺めていた。でも考えてみてよ。あんまり美味しくないかもしれないとか言われて、すぐに食べたくなる?
私の場合はそうは思わないね。だからクッキーはそっくりそのまま“封印”した。
これで今日はやること無くなったって訳だ!特に本命も居ないし。それよりも――パソコンしたい!
早速パソコンを立ち上げ、ネットに接続する。
実際、3Dの人間なんて不細工が圧倒的に多い。そんな世界よりも――。
“ようこそ、ちゃみぃさん”
ネット世界の住人の方が好き。だって顔知らない方がいいと思わない?それにこっちの世界の方が、私モテるし!こっちの世界の方が幸せだもん。私のアバは皆のより可愛いし――そりゃあ他の人よりお金掛けてるからね!
『ちゃみぃおかえり!』
あっ、私のネット彼氏の“しゃみぃ”だっ!やっぱり私より先にログインしてたんだ。
『ただぃまっ今帰ったょぉっ♪なんてね。これぢゃぁ立場が逆だょ?』
『あはは、そうだなw』
もう、しゃみぃってば!天然なんだから~っ。でもそんな所が好きなんだよね。
『ねぇちゃみぃ?』
『ん、なぁに?』
『もしさ・・・自分の大切な人にチョコ貰えなかったらどうする?』
もー、しゃみぃってば私から貰えないからってそんな事言っちゃって!ネット世界ではこんなに近くにいるけど、リアル世界では離れているんだから、渡せる訳ないのに~~。
『ぅーん、そぉだなぁ~・・・自分から貰いにぃく、とか?』
少しの間、反応も返事もない時間があった。もぅ、早く返事してよ!まさか、こんな時間に寝落ちなんてしないよね!?
『そっか、有難う!じゃあそうしてみるよ』
え?
『大切な人って、私ぢゃなぃの?』
『勿論、君も大切だよ。でも俺には大切な人がもう一人いるんだ。』
『誰っ!ねぇ誰なのっ!』
『――妹だよ。安心して。決して好きな人とかじゃないから』
安心してって言われても、まさかしゃみぃって――。
『しゃみぃのシスコンっ!ぁたしなんか嫌いなんだっ!一番ぢゃないんだぁっもういいもんっ!』
『違うよちゃみぃ!一番はちゃみぃだってば!』
そんな慰めの言葉いらないもん。しゃみぃが妹の方が大切っていうのはよく分かったから。だってチョコの話に私が出てこなかった。つまり私からのチョコは別に欲しくないって事でしょ?
・・・しゃみぃなんか大っ嫌い!!
何よ皆して――。
私は苛ついてそこら中にあるものを投げたり叩いたり壊したりした。イライラした時に起きる破壊衝動はこうしないと収まらない。
一通り破壊して滅茶苦茶にして少し落ち着いた私は、またパソコンをネットに繋ぎ、しゃみぃの行動を監視した。だけど、ログインした様子は見当たらない。ログアウトしたままみたいだ。
逃げた――。
私はまた破壊衝動に襲われた。あんなに簡単に諦め手を引くなんて。少しは謝れよ。それで――。
そんな考えは虚しく、そこから数時間しゃみぃはログインしなかった。
私は何もする気になれなくて、ただひたすらにしゃみぃのページを覗く。
『新着メッセがあります』
マイページに戻ると、一件のメールが来ていた。どうせ運営からのメールだと思うけど――何故か早くあけて見なければいけないという気にさせられた。私はとり憑かれたようにリンクをクリックする。
『件名:ごめんね
差出人:しゃみぃ
本文:さっきはごめんね。でも僕の話を聞いてほしいんだ。さっき君の言った通り、自分から貰いに行ったんだ。そうしたら・・・僕の分のチョコは初めからあったみたいなんだよ!それに気付いたのは君のお陰だね、有難う。それとね――僕が君とネットで付き合っている理由。それは――僕の好きな人にそっくりなんだ。だからどうしてもって――。』
えっ?なにそれ初耳なんですけど!
『リアルでも好きな人いたの?』
私はそう返信せずにはいられなかった。
『うん、名前はシアンっていうんだよ』
“しあん”……?私の名前、幟杏だよ!?もしかして、この人知り合い!?
――な訳ないか。
こんなちょっとした事で嬉しくなるなんて、想像出来なかったなぁ。
『そっか。リアルでも上手くいくといいね』
今まで散々周りに不幸せを願っていた筈なのに、しゃみぃにだけはそんな事を思わなかった。これが恋ってやつなのかな――うん、きっとそうだよね。
じゃなきゃこんなに穏やかな気持ちになんてなったりしないもん。
口では散々言ってるけど、本当はしゃみぃの事、大好きなんだ。嫌いって思っても、好きが強すぎて嫌いが消えちゃうの。
不思議だよねぇ・・・。
明日もしゃみぃとまた話そうっと!
ちゃみぃは幟杏、ではしゃみぃは?
ふふふ、内緒です(笑)