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loss【紫綺】

最近『ちくしょう』や『ちくせう』が口癖になっている璢音です。


blanketキャラクターでそれを言わせるとしたら、彼ですね。・・・という訳で、


「ちくせう!」


な内容にしました(謎)

 大分前から並んだあのバレンタイン用の品物も広告も、今日でおさらば。そう思うと何だか気が軽い。


 今日は俺達にとって勝負とも言える日。如何にチョコを多く貰えるかなんて、男性諸君なら一度はやった事があるんじゃない?


 因みに俺は自慢じゃないけど、今までに沢山のチョコを貰ってきた。中には貰いたくないやつもちらほらあったけど、俺なりのバレンタインのルールってものを作ったから、一応笑顔で受け取ってる。


因みにルールは以外の通り。


ルールその1。

どんなに嫌な奴からでもチョコを貰ったら笑顔で優しく応対する。今日だけは。


ルールその2。


ホワイトデーには必ずお返しをする。しかも手作りの物を。相手が如何に質素なチョコだろうが市販品だろうが必ず。


ルールその3。

自分の好きな人からは、チョコを必ず貰う。


 ルール3については、今まで本命が居なかったから適用されなかったけど、今年は別。今回初めての勝負になる。


 俺はその勝負をする為に、ある人物へメールを一方的に送りつけていた。勿論、差出人は不明で。まぁ、あいつなら分かるんだろうけど。


 返信が来ないので嫌がらせのように何度もメールを送りつけたせいか、送信BOXに溜まったメールは早くも30件近く。いい加減諦めて返事をくれ。そう思っていた時だった。


『どうしてそんなにチョコが欲しいの?』


 やっと返事が返ってきたんだ。


『美麩のチョコは美味しそうだから』


 俺はすぐさま返事を出した。ルールの事は、璢夷しか知らないから、多分周りには知られてない。それを言うのは嫌なので敢えてありきたりな返事を出した。さてどう返ってくるか――こっからは駆け引きだ。


『・・・駄目です。これはもう先客がいるので』


 先客?そんなのいんの?は?誰だし。もしかしてあいつにも本命が?嘘・・・。だとすると、チョコを貰うのは一筋縄ではいかないらしい。


『ふぅん・・・じゃあ今から受け取りにいくよ』


 ならば、こうするまで。

あいつは案外賭け事が好きだ。それに、普段の素振りから見て本命がいるとは思えない。だとすれば、さっきのは俺のメールを止めるための口実。なら、こう言ってゲームを仕掛けてもらうしかない。


 返事は案外簡単にきた。


『ではこうしましょう。私がある人を私がいる場所に呼び出します。その人より先に貴方が来たら、このトリュフは貴方に差し上げましょう』


 ほら、思った通り!


『おっけー。そのゲーム、乗った!俺、それ勝てる自信あるよ』


 実際は、ない。だって俺はあいつの居る場所を知らない。でも、あいつを焦らす事が出来ればいい。嘘も方便ってやつ。


 そうと決まれば探すのみ!俺は家を飛び出しあいつを探しに向かった。


あいつが行くとすれば・・・?

 図書館くらいしか浮かばない。あいつが混雑してるであろう学校に行くわけはないし、誰かを呼び出す以上は、外出している。


しかも、寮から離れた場所でないとフェアじゃない。


俺は図書館にあいつがいると思い、そこへ向かう事にした。


 途中タクシーがいたので適当に拾って図書館へ。


入り口が見えてきた。まだそんなに時間は経ってない。だってすぐそこまでタクシーで来たのだから。


 これで勝負はついたな――そう思った時だった。


「紫綺くぅうううん!」


 千佳が思いっきり叫びながら手を振ってきた。うわ、最悪だ。でもあいつはきっと図書館に・・・だとすればしょうがない。


 千佳はわくわくしたように入り口の前で待っている。


「な、何でお前がここにいんの?おかしくない?」


「紫綺くんにこれを渡したくって――」


 だから何で俺がここにいると――・・・。


「待った!入り口じゃ邪魔になる。一度移動しよう」


 これはもうさっさと要件を済ませて図書館へ戻るしかない。


 俺は図書館のすぐ横にあるカフェへ入った。


「――で?用件は・・・それ?」


「うんっ!千佳の特製ガトーショコラだよっ」


 ・・・ちゃんと俺が好きなガトーショコラにしてきたんだ。千佳らしいな。


「ふぅん・・・有難う」


 ルールがルールだから仕方がないけど、状況も状況だ。もっとマシな環境で渡されてたらもうちょっといい笑顔を作れたかもしれない。


 俺が微笑すると、千佳が店の入り口に向かってサインを出した。すると同時に女子が店に雪崩れ込む。


「私からもっ!」


「貰ってくださいっ!」


「好きですっ!」


「ちょ、ちょっと待てっ・・・!」


 何だこの人数!何が起きた!?おい千佳どうなってんだどうにかしろよぉおお!


 そんな事を思い、千佳の方を見る。お願いだから察してくれ――!


「!」


 千佳が何かに気付いたようだ。良かった、どうにかなりそ――じゃない。


「皆!一列に並んで!一人一人渡すのっ!」


 そうじゃない!

 こんなに大人数のチョコを貰った所でまず持ちきれないし、対応しきれない!ルールは厳守だから一応笑顔で対応するけどっ――このままじゃ――!


 結局、俺は大きな袋に詰めても詰めきれないチョコを受け取った。


「あ、有難う――」


 チョコは好きだけどこんなに要らないし食えない――。


「きゃ~~~っ!」


「千佳、こいつら誰?」


「紫綺くんFCの子逹だよっ!」


 あぁ、そういう事か――。


「俺、ちょっと用事あるからさ・・・皆、チョコ有難う。じゃあね」


 適当にウインクでもしておけばどうにかなるよな。


「きゃああぁああッ!」


 もはや悲鳴だなこれ。


「千佳、ガトーショコラさんきゅー!食べたら感想をお前のサイトにUPしてやるよ」


 一応千佳が追ってこないように、足止めをっ・・・!


「じゃあね!紫綺くんっ」


 俺のファンクラブ?に見守られ、俺はカフェを後にした。勿論代金は支払ってから。


 それで漸く図書館に入ることが出来た。


 中を探してみると、本を探しているらしい美麩を見付けた。美麩は俺に気付くなり一言。


「遅かったですね」


 やっぱり負けた――。俺より先に誰かがあいつの手作りの菓子を貰っていったのか。


「ちなみに、貰ったのは誰?」


「璢夷」


 だよね。あいつが呼ぶとすれば、璢夷しか有り得ない。でも璢夷で良かった――。もし他の奴だったらキレてそいつの家になぐり込みにいく所だったよ。


 でも何か悔しいな――。


「何故こんなに遅かったんです?」


「千佳達に足止めされた」


「・・・成る程。障害があったんですか」


 美麩はクスクスと笑った。きっと俺と千佳の話を想像しているんだろう。


「それがなければ、勝ってたかもしんない」


「じゃあ」


「ん?」


「来年もやりましょう、このゲーム。私も意外と楽しかったので」


「じゃあ来年もチャンスがあるって事か。分かった。次こそは先についてやるから。」


「来年もガトーショコラを作りますね」


「心込めて作ってよ!」


「・・・はい」


 彼女が楽しそうに笑ったのを見て、安心した。これは来年も楽しみだな、バレンタイン。

今回は、


千佳→紫綺×美麩。


千佳sideはもう投稿済みなので絡めてご覧ください(笑)


次回は美麩編です。

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