つれないあの娘【ケイン】
おはようございます。早いもので今日は2月16日です。
バレンタインも終わり、ホワイトデーが近付いて来ますな。
うー、やろうかやるまいか。実際、バレンタインだからといって女性しかストーリーを書いていない訳ではないし・・・。
うーん、迷いどころ。
今日はバレンタインかぁ。きっと霧雨ちゃんは璢夷に本命を渡すんだろうなぁ。そんな事を考えていたら、夜が明けていた。逆チョコを作ろうかとも考えたけど、彼女が受け取ってくれるはずがない。俺は俺なりに彼女を理解しているつもりだ。
何はともあれ学校にいかないと霧雨ちゃんに会えないから、とりあえず学校へ向かった。
俺が家を出たのは6時過ぎ。勿論いつもよりはやい。完璧に誰もいない時間だよな。
――やっぱりだ。
学校についた俺を静けさが迎えてくれた。もとい、誰も俺を迎えてはくれない。
しょうがないので霧雨ちゃんが来るまで門の影に隠れてみる。そっからぞろぞろと人が集まり始めた。見たこともない女子高生が沢山集まってきたからさぁ驚いた!
数人のクラスメイト(女子)も学校に到着して、知らない女子高生を掻き分けて校舎に入っていったのが見えた。だけどその中に霧雨ちゃんはいない。
霧雨ちゃんより先に璢夷が到着した。何故か花束を持っている。あれは何に使うんだ?
見知らぬ女子高生の一部は、璢夷がきたのを確認すると一斉に璢夷に群がった。どうやらチョコレートを渡しているようだ。
・・・と璢夷を観察しているうちに、本命の霧雨ちゃんがご到着。璢夷が居るのを見つけるとすぐに璢夷の方に向かっていった。チョコを渡した後もその場に残っている女子を見て、何を思ったのか璢夷を連れ出してった。
俺は勿論二人を追跡する。・・・断じてストーキングをしている訳ではない。
「璢夷くんってば何で女子をそのままにしておいたの?貴方が自由に動けなくなってしまうじゃない」
霧雨ちゃんが璢夷に話しかけた。やはり霧雨ちゃんは璢夷に対してかなり優しい。・・・俺にもあんな感じで接してくれたらいいのに。そんな霧雨ちゃんの言葉に璢夷は参ったという顔をしながら答えた。
「いや、彼女達が頑張ってこれを用意してくれたんだ。それを考えたら冷たくあしらう事など出来ない」
そういえばさっきまで手に持っていた花束が無くなっている。もしかしてあの女子たちにあげたのか?誰にでも優しい璢夷なら有り得る。
「貴方は優しすぎるわ」
「そうか?」
確かにそうだ。
二人は学校付近の道をゆっくりと歩いていく。幸い俺がいる事には気付いてないみたいだ。
何だかとても良いムードになってんなぁ・・・璢夷が羨ましい。
「璢夷くんって変わらないわね」
璢夷の昔を知っている俺からしても同感だ。璢夷は前と全く変わらない。優しさ、性格共に。周りに振り回されても、常に他人を第一に考えるその思考には思わず敬意を示したくなる。
流石完璧な璢夷だ。そんな彼だからこそ、愛しの霧雨ちゃんが彼に惚れたんだ。
「お前が笑うなんて珍しいな」
璢夷が霧雨ちゃんの方を見ながらクスクス笑っている。それに対し霧雨ちゃんも微笑む。
流石にこんな光景を見させられたら我慢出来ない。
俺は二人の前に飛び出した。
「霧雨ちゃーーーん!」
俺をみた瞬間に歪む霧雨ちゃんの顔。完璧に邪魔者と思われてる。
「ケイン、こんな所で何してるんだ?」
流石に璢夷も驚いたのか、それとも俺に気付いた上で庇っているのか?
「あ~それがさぁ、運命の導きってやつなのかなぁ、霧雨ちゃんに会いたいって思ったらなんと!叶っちゃった!」
・・・だといいなという妄想でしかないけど。
「私はアンタに会いたく無かったわよ!何よっ折角璢夷くんと二人きりで――」
「おいおい、さっきまでの顔が台無しだぞ?」
璢夷、お願いだから霧雨ちゃんに優しくしないでくれ――。
「――ッ!」
ほらな、霧雨ちゃんがこんな表情をするから。しかも視界から俺が消えるし。ここは発言して居ることをアピールするしかない!そういえば――。
「そうだよ!さっきの霧雨ちゃん可愛――」
あ。しまった。
「見てたのね」
わなわなと震え、怒りに燃える霧雨ちゃん。やばい、逆鱗に触れてしまった。ここは素直に謝るしか――。
「霧雨ちゃ――」
「アンタなんか大っ嫌いよ!行きましょ、璢夷くん!」
だ、大っ嫌い・・・?
「え、あ、ちょっと待てそれではケインが――」
「良いの!放っておいて!」
そんな事、言わないでくれよ!
「そんなぁ~霧雨ちゃん、俺も入れてよ~ッ」
「生憎アンタの分のブラウニーはないの!」
「ガーーンっ」
密かに期待していたチョコレート。義理でもいいから欲しかったのに――完全否定された。ショックだ。
「お前も本命がいるのか」
俺はショックのあまり地べたに倒れた。少しでもいいから俺を気遣って!ほら、俺倒れちゃったぞ!?そんな俺の思い虚しく霧雨ちゃんは俺をシカトして、天然な璢夷に向かって――。
「勿論貴方へよ。璢夷くん♪」
最上級の可愛さアピールで告白した。
もう、ショックすぎて言葉が出てこない。
「・・・何か申し訳ないな。すまない、ケイン」
「い、いいんだよ知ってたから・・・」
知ってたさ、霧雨ちゃんは璢夷の事が好きだって。ううんそれだけじゃない。俺の事が嫌いって事も分かってた。それでも、諦めたくなかった。俺は霧雨ちゃんの事が好きだから――。
「・・・霧雨。」
「なぁに?璢夷くん?」
「すまないが、これは受け取れない。ケインに――申し訳がないからな。でも有難う。気持ちだけ貰っておく」
「でも――」
「あ、あとこれ・・・礼だ。いつも慕ってくれて有難う。」
璢夷の手から差し出された黄色い花。さっき女子高生に渡したであろう花と、全然違う。しかも、さっきの女子高生には同じ花をあげていたのに――。
「では俺は用があるので失礼する。じゃあ、また明日な」
璢夷は花を渡した後、どこかへ向かっていった。誰かに呼び出しされてるんだな。
「――ッ」
ブラウニーを受け取って貰えなかった霧雨ちゃんはショックを受けて黙りこんだ。だけど、絶望にうちひしがれている訳ではなさそうだ。
「霧雨ちゃん・・・?」
璢夷がいなくなった事で、俺に対して遠慮する理由はなくなった。怒りの矛先は間違いなく俺に向かう。
でもそんなの当然だ。俺のせいで霧雨ちゃんは――。
「・・・ごめん霧雨ちゃん。」
素直な言葉が口から溢れていく。
「えっ?」
「俺、自分勝手な事して霧雨ちゃんの邪魔しちゃった・・・最低だな、俺。」
自分の事しか考えてなくて。そのせいで二人を邪魔して。その結果霧雨ちゃんは傷付いた訳で。全部、俺のせいだ。
俺がいなきゃ、もしかしたら。
「――これ、アンタが責任持って食べて」
「で、でもそれはさぁ!」
璢夷に渡すはずだったモノ。霧雨ちゃんが心を込めて作ったブラウニー。
「良いの!」
霧雨ちゃんは無理矢理ブラウニーを俺に押し付けた。そして寮へ帰ろうと俺に背を向ける。
でも待てよ?いつもの霧雨ちゃんだったら、例えこんな事があっても俺にこれをくれる訳がない。・・・もしかして。
「霧雨ちゃん」
「何よ。まだ謝るの?」
「俺のこと、気にかけてくれたんだ」
不器用な霧雨ちゃん。根は優しいんだよ。俺の事邪険にしながらも、気にかけてくれてる。
「俺はさ、大好きでしょうがないんだよ。霧雨の事。」
俺の、本音。いつもと変わらない言葉と想い。偽りでも、誇張でもない素直な気持ちを君に。
「そう・・・有難う。」
「――ッ」
有難うの言葉が身に染みる。でも俺に、それを言われる理由はあるのか――?
彼女を傷付けてばかりなのに。
霧雨ちゃんと別れた俺は、霧雨ちゃん特製のブラウニーを持って、ある人を探し始める。
その人は、霧雨ちゃんがこれを渡すはずだった、あの人。
俺は璢夷を探して町のあちこちを走って回った。璢夷が何処に行ったのか知らない以上、色んな所へ足を運ぶ以外に方法はない。
だが、町はそう狭くない。簡単には見つけられなかった。俺は霧雨ちゃんと別れた場所からもう随分と離れた場所まで来ているのに、璢夷どころか知り合いさえも会えていない。
諦めるしかないのか――、そう思った時だった。
璢夷が図書館方面から歩いてくるのが見えたんだ。
俺は必死になって彼に向かって走っていった。璢夷は俺を見つけると何事かというような驚いた顔をした。それもそのはず。俺の顔はずっと走っていた影響で真っ赤で、汗があちこちから流れている。まさに、必死に走っていたというような見た目をしていたのだ。
「やっと見つけた・・・!」
俺は息を切らしながら言った。
「どうした、大丈夫か?一体何があった?」
璢夷は心配そうに聞いてくるが、伝えるべきは今の俺のことじゃない。本題だ。
「霧雨ちゃんのブラウニー、お願いだから受け取ってくれ!霧雨ちゃんは璢夷の為に作ったんだ」
それを、伝えたかったから俺はここまで走ってきたんだ。
「・・・ケイン、お前・・・。」
俺は頭を下げて願った。霧雨の作ったブラウニーを食べてほしいと。
「・・・分かった。そこまで言われて断るやつはいないだろう。」
「ほ、本当かっ・・・!?」
「あぁ。」
霧雨ちゃんのブラウニーは、璢夷の元へと戻った。あぁ、これで良かったんだ。
俺じゃなくて、璢夷が食べた方が霧雨ちゃんが喜ぶしな!
「ケイン、ほら一緒に食べるぞ」
ブラウニーの入った箱を差出し微笑む璢夷。俺は泣きそうになりながらブラウニーを一つ受け取った。
「お、おいひぃ・・・。」
霧雨ちゃんの愛情たっぷりのブラウニーを頬張りながら、俺は笑顔で叫んだ。
「はっぴぃーバレンタインっ!」
来年こそは霧雨ちゃんから直接チョコを受け取ってやるぜ!
今回は、霧雨と璢夷の話にケインを絡めたケイン×霧雨×璢夷です。
璢夷の方にはまた違う人が絡んで来るので内容が変化します。
霧雨のストーリーでは、ケインがこれをした事は書かれていません。つまり、霧雨はこの事実を知りません。知ったらどうするでしょうね。
ケイン、いい奴です。




