帰郷への開拓路 12話 「通じる為の会話」
ギーク「ああ…寝ても疲れが取れない…どうすべきか?」
朝日がのぼり、青い星と太陽が大きく光っている。ギークはフラフラと宿屋に寝泊まりをしながらの旅の最悪な気分を味わっていた。ギークは宿屋の主に追加で滞在費を払った。延長すれば、3ヶ月は何日も戻らない限り、滞在できる。
宿屋の主「確かにマナを受け取ったぞ、お客さんの荷物はちゃんと預かっとくよ。ところで、あんた、フラフラしてるけど、朝から酒でも飲んだのかい?程々にした方が良いですぜ?その槍から察するに、戦う職業なんでしょ?ゲロ吐くと力が弱くなりますよ?」
酒は戦士の毒だ。飲めば気持ちが良いが、実際はゲロを吐いてしまい、本当に力がなくなってしまう。一般人でも大人になりきれない子供には飲ませない決まりさえある。
ギーク「酒?飲んでねーけどなぁ?やっぱりそう見えるか?」
宿屋の主「ええ、結構先程から足がフラフラしながら歩いてますよ?」
ギーク「なら、やっぱり療養すべきだな…宿屋よ。世話になるぜ。」
そう言って、ギークは店主に手で会釈して、この前の狩人の商店街のような場所がスモクにもないか散歩に出かける。街並みは常に炎があちこちに、ちらほらと点在している。パイプが通っている箇所が何箇所も存在しており、久しぶりにこの地を踏み締めた感覚がユミと炎のサーカスを見てデートしたことを思い出す。サーカスは主に舞が中心であり、その達人も炎を使ったド派手な技をみせる。
果物に火を通した屋台が多く見えてきたのをギークは喜ぶ。
ギーク「美味いもん食って寝たら治ると信じよう」
?「お兄さん!槍を背負ってるそこのお兄さん!昨日は槍で何をなさっていたんですか?その槍、見るからに特別ですね!昨日のはもっと特別でしたけど、今回のも素敵ですよ?私達の店見て行きませんか?」
商店街で早速ギークは声をかけられる。火の聖域のマークの入った行商人だった。彼女は気さくに声をかける。品揃えが良さそうだったので、ギークはみることにした。
ギーク「覗くよ。覗くだけな。」
(この商人、この前の目が合いすぎた商人か…ダインアーツを見られたか…まぁ、大丈夫だろ。騙されないようにマナは多く持ってないフリをしとくか)
ギーク「待ってくれ…少し挫いてしまって、靴紐を結ぶぞ」
?「お待ちしてますよ?私の名前。マーチェと申します。あちらに店を出してますの」
靴紐を結ぶフリをして、ギークはマナを足のポケットの中に隠して、買う分を財布にいれる。
マーチェ「私の商店、少し歩いたとこです。おや…?お客さんお酒でも飲まれました?お客さん多分傭兵ですよね?珍しい。」
ギーク「特殊な事情があってな…酒でも飲まないとやってられないのよ」
(いや、飲んでねぇけど、とりあえず黙っておくか)
マーチェ「それでは、こちらへ」
マーチェに案内され、ギークは馬の獣人?がいる。移動式の馬車のお店に連れて来られる。黄金の車輪のマークの入ったタンクに、火の聖域で製造された種子、槍などの武具、珍しく、鉄でできたトゲトゲが置いてあり、ギークは気になり、それを手に取る。
ギーク「これは何だ?」
マーチェ「はい!こちらは中心の液体入れに仕込みをして、敵からの逃亡を図る邪魔専用の道具です。」
ギーク「良い品が沢山あるな」
馬の獣人「マーチェさんの商品は特別なんだよ?僕がこのタンクと少しの素材を水の聖域に運びに行くんだよ!そのくらい良い品なのさ!1ヶ月もしたら、水の聖域でお祭りがあるから、そこでも飛ぶ様に売れる品物だよ!」
馬の獣人が話しかけてきた。それを聞いて、ギークは少し不安になり、頭を抱えて、座り込んでしまった。
ギーク「ああ、悪い…少し飲み過ぎた様だ。マーチェさん…座る場所貸してくれ。」
マーチェ「あ、お客様!大丈夫ですか?さぁ、店内へどうぞ」
マーチェはギークを店内へと案内する。
ギーク「すまない。少し、待ってくれ」
マーチェはギークの様子をじっくりと見て、確信した。噂の彼だという確証は得ているが、少し気がかりなことがあった。
マーチェ「お客さん…酒じゃない理由で、少し具合でも悪いのじゃないかい?」
ギーク「…!?。やはりか…商人は目が肥えている。」
マーチェ「やっぱりですか〜じゃあ、うちらは武具だけしか置いてないわけじゃないから、そっちの店も見てって?食べ物食べれば良くなると思うし、うちのデザンっていう用心棒が店番してるから〜」
ギーク「それは助かる…すまない。肩を貸してくれないか?」
(結構まずいな…水の聖域は今の家がある場所だ。少し思い出しただけでこれかよ。まずいな)
ギークはあの共鳴の荒者との戦いで、疲弊し続ける。
マーチェ「もちろんです!ついでにそこまで案内してあげますね?」
マーチェはギークに肩を貸して、得意げな表情で店まで案内していく。
マーチェ「お客さん?お名前は?私、案外見当がつくかもしれないです。」
ギークは渋々と観念した声で答える。
ギーク「酒は得意なはずなんだよ。ギークだ。」
すぐそばに屈強な男が立っている店があったが、そいつがデザンだ。彼は薬の専門店の装いで誠実に店を構えている雰囲気があった。この黄金の車輪の紋章がそれをさらに示しており、客は絶えない様で、時折、店に人が出入りしている。彼の出店も信用できそうだ。
デザン「らっしゃい。マーチェ殿。明らかに俺達にマナを恵んでくれそうなお兄さんじゃねぇか?ん…?もしや、有名なケモノならず者の旦那の方か?こりゃすげーな。」
ギークは少し曇った表情で照れるが、要件を言う。
ギーク「すまない。君の雇い主に紹介されてきた。薬があるんだって?どんなのがお勧めだよ?最悪、錬金術師に診てもらわなくてはいけない。」
デザン「こっちの、酒酔い後の回復薬があるから、お勧めだよ。50マナだな。守備貝の粉末を植物と合わせた品物だ。」
彼等の世界では、大抵の事を錬金術師に診てもらわなくてはいけないが、大概は重病人として診てもらうのが殆どだ。ギークは薬で何とかなりそうだと、推測し、デザンから守備貝の粉末を買う。
マーチェ「お客さん、大丈夫?さぁさ。飲んでみてくだされ?」
ギークは屋台の隣のベンチに座り、薬を飲む。普通はこの時点で効能が出るはずだが、ギークは
ギーク「うえぇ…」
逆に虫を吐いてしまう。
マーチェ「ちょっと!お客さん困るって商売上がったりですよ。それじゃあ…本当に大丈夫ですか?」
ギークはもっと戸惑った顔になる。
ギーク「おかしい…あんたら国の息がかかった商人だろ?」
マーチェ「すみません…」
ギーク「いやいや、そうじゃなくて、俺も何故こうなったか、分からない…別にあんたらが悪い事をしてる訳ではないからな…実は特殊な事情がある。」
マーチェ「と、言いますと?」
マーチェは表情が少し緩む。
ギーク「裏で話をしたい。昨日の錬金術師と俺の同行を見ているなら、その件だ。」
(商人とて国の存在だ。情報を知られても問題はないだろう。錬金術師も秘匿するレベルだとも話していなかったからかなぁ)
マーチェは呆れた表情になるが、すぐにその情報を知りたくなったとでも言うような表情が変わり、答える。
マーチェ「裏の方の人払いしている倉庫で、もっと効くかもしれない薬もありますし、そこで話をしますか〜さ、こちらへ」
ギークは屋台のさらに裏の馬の獣人であるグレッグドの近くの場所の中に入らせてもらう。3人は狭い中で、熱心な表情の2人がギークの様子を伺う。
マーチェ「このままでは、私の評判も収まらない!是非!詳細を!」
デザン「ケモノならず者の旦那。頼みまっせ。」
ギーク「これは全く新しい武器の運用試験に参加した後にこうなった…口止めはされていない。この症状の訳は多分、そのせいだ。その武器の運用が不可能に近いからだろう。」
マーチェ「ほう…ほう!面白い情報ですな…ギークさん!それで…何でその武器が他の人には運用が不可能なんだい?」
ギーク(商人もこの情報は知らなかったのか?)
ギーク「それは…使用者の心が破滅するからだ。」
心の破滅…それはこの世界において、最も恐ろしいに近い。話を聞いた2人の背筋を凍らせる。
デザン「て…いうと、旦那はそれを使えたってことか?」
ギーク「そうらしい。王命だったから仕方ない。」
マーチェ「うわーマジですか…あれ、噂本当だったんだね。うちらの知り合いの錬金術師もやばい仕事が入って部下が大変だって聞いた事あるけど、それかなぁ…うーん。これはうちらじゃどうにもできないかもね。」
ギークは困った表情で2人を見つめるが、2人も顔を見合わせて、どうしようもないとでも言いたげな表情だ。
ギーク「分かった。すまん。武具をお詫びに買うよ。座ったら少し症状が和らいだ。酒呑根の種子があれば何個か買うよ」
マーチェ「お客さん、随分と太っ腹ですね。ありがとうございます。また何かありましたら、うちらのマーチェ商会を贔屓してくだい。」
マーチェは申し訳なさそうに返事をする。ギークは商品を受け取り、店を後にする。フラフラと歩くが、飯を食べたくなり、植物を焼いている屋台に歩き出す。このスモクでは、炎を活用した植物の料理が彼を惹きつける。




