第九話
TVや映画でしか見た事の無いような山盛りの現生に当てられて呆然としていると
「ピリリリリり!」
いきなり、スマホがワン切りで着信音を鳴動させた!
恐る恐る取り上げてみてみると、どうやらLINEのメッセージが届いたらしい、……いや、このスマホは「東郷忠良」さんの物なのだから僕が中を覗いちゃまずいだろう、と5秒位悩んだ末、僕はLINEのアプリを立ち上げてメッセージを確認する、だってもしかして急用だったりしたら、今僕は「東郷」さんの記憶を失っていて対応できない事を少なくとも先方に伝えておいた方が良いと思うのだ
差出人は、、、「小百合」、アイコンは凄く綺麗なお姉さん
それでメッセージの内容はと言うと
小百合:『待ち合わせの時間とっくに過ぎたんですけど〜』
小百合:『なんかあったの?』
待ち合わせ?綺麗なお姉さんと?仕事か何か?
僕は恐る恐る、
僕:『すみません、実は、東郷忠良さんは事故にあって』
事故にあって、、それから何て言えば良いんだろう?
僕:『暫くお会いする事ができません』
これで良いか、と打ち込んだ0.5秒後に返信がきた
小百合:『東郷さん怪我したんですか?』
小百合:『大丈夫なんですか?』
小百合:『話できませんか?』
凄く心配してる、、、
小百合:『お見舞いに伺いたいんですけど』
小百合:『病院を教えていただけませんか?』
何だか凄く心配している、、、けど、
僕:『すみません、東郷さんとはどの様なご関係でしょうか?』
小百合:『恋人です、お付き合いさせていただいてます』
0.5秒で返信がきた
て言うか、何でこんな綺麗なお姉さんのアイコンの「小百合さん」が55歳の禿げ親父の恋人なんだ? それって一般的に普通の事なのか?いや待て冷静に考えて、LINEのプロフィールのアイコンが綺麗なお姉さんだったからと言って、本当に本人が綺麗なお姉さんだとは限らないだろう、いや寧ろ少なくとも化粧と加工で改変されている可能性は高い
僕は一応念の為審議の程を確かめる為に仕方なく、「東郷忠良」さんのスマホの写真フォルダーを開いてみる、するとそこには身長170cmのLINEのアイコンと同じ顔の超絶美人のお姉様が仲良さそうに「僕」と腕を組んで笑っている自撮り写真がいっぱい、水族館、何処かの高級そうなレストラン、露天風呂付きの旅館?挙げ句の果ては見た事もないような海外旅行の風景まで、、、
これは、確かに二人が親密にお付き合いしている事は事実の様だが、高校2年生の僕がどう見ても親子程も歳の差がありそうな美女と野獣のカップルとか常識的に考えて、やはり金目当て?
僕はクローゼットの中の1億円が入ったキャリーバッグをチラ見する
小百合:『君塚小百合と申します』
小百合:『1年前から結婚を前提にお付き合いさせていただいている者です』
小百合:『何とか東郷さんとお会い出来ないでしょうか?』
小百合:『怪我は大丈夫なんですか?』
僕は、どうすれば良い?