第十八話
悠里には申し訳ないのだけれども一週間会社を休んでもらって、それから毎日、僕と悠里は同じ時刻に同じ駅のホームで「東みどり」を待ち伏せをする事にした
幸いな事に二日目で僕達はみどりと再び第三種接近遭遇を果たし、今度は慎重に、悠里から丁寧に話しかけて簡単に事情を説明し(僕が記憶喪失でみどりの事だけ覚えていたと伝えた)、それから僕達は駅の近くのファミリーレストランで話をする事になった
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「山田さん?」
「はい、」
東みどりの格好をしたその女子高生は、テーブルの向かい側で申し訳なさそうに俯きながらそう告白した
「私の名前は山田みどりです、東みどりとは別人だと思います、」
「そんな、、どう言う事?」
「それで、轟木哲也って男の子の事は本当に心当たりがないんですか?」
「はい、知りません、」
彼女は「轟木哲也」の事を知らないと告白した
「でも、あの男子の名前は甲斐、なんですよね?」
「はい、甲斐絆くんです、」
僕の記憶と同じ姿をした二人の人間が存在すると言うのに、僕の目の前にいる「みどり」は、どうやら僕の知っている「みどり」では無いと言うのだ、こんな事が実際にあり得るのだろうか?
「二人はどう言う関係なんですか?」
「高校のクラスメイトです、」
「因みに、彼がボクシング部だって事は間違ってないんですか?」
「はい、」
所々の情報は一致しているらしい、これではまるで似てはいるけれども別の世界線に転生してしまったSF物語みたいで一筋縄では太刀打ちできそうにもなくて、最初っから作戦を練り直す必要がありそうだ
「あの、怖い思いをさせてすみませんでした、」
「いえ、」
悠里が深々と頭を下げて謝罪し、みどりに似た少女は頭を振って恐縮する
「あの、甲斐くんは大丈夫だったんですか?」
「はい、あの後病院で診てもらって、特に問題はないだろうって、」
「そうですか、彼にも謝りに行かないと、」
悠里は甲斐の怪我が「僕」の拳法の技によるモノだと思っているのだ
「その件で、お願いがあるんですが、」
山田みどりはそう言うと、何かを決心したかの様に顔を上げて話し始めた
〜〜〜
みどりの話によれば、、、
この山田みどりには弟が一人いて(僕の知っている東みどりは一人っこだった)、その弟が最近悪い連中に捕まって虐められているのだと言う、元々は弟の友達の付き添いでその悪い連中との集会に参加して、それ以来仕方なく連む様になったのだが、その連中というのがヤクザよりもタチの悪い半グレを気取った暴力集団で、弟とその友達にもひったくりや恐喝で金を稼いでこいと強要してきたのだ
それで弟はその事を姉の山田みどりに相談して、何とかその暴力集団から抜けさせてもらう様に頼みにいく為に、ボクシング部のエースで不良グループのトップでクラスメイトの甲斐に力を貸して欲しいと相談し、みどりと甲斐が付き合う事を条件に甲斐がその暴力集団と話をつけてくれる事になっていた
という事だった
「東郷さん、甲斐くんを怪我させたのって、偶然じゃないですよね、」
「え?」
そして山田みどりが前のめりに僕に詰め寄ってきた
「私、空手やってるんで分かるんです、おじさん本当は滅茶苦茶強いですよね、」
「いや、そんな事は、」
「東郷忠良」さんが拳法の達人だったとしても「僕」はずぶの素人なのだ
「お願いです、力を貸してくれませんか?」




