第十三話
僕は、小百合さんの事をどこまで信用して良いのか決めあぐねていた
彼女が「東郷忠良」さんを愛していた事はどうやら本当らしい
だとしたら今のこの状況は彼女には死ぬ程辛いに違いない
それなのに当の「東郷忠良」さんはもうとっくに自殺未遂をして
しかも気がついたら中身は僕=「轟木哲也」に入れ替わっているのだ
この状況がかつて「東郷さん」がやろうとしていた「危ない事」と関連しているのかは分からないが、「東郷忠良」さんの魂を取り戻して「轟木哲也」が元いた身体に戻るには、その「危ない事」の真相を突き止める必要がある様な気がする
もっとも、元の「轟木哲也」の身体が無事で居ると言う保証は何処にもないのだが、だからと言って小百合さんを欺いて「僕」が大金と超絶美人の愛人をネコババして東みどりの事をほったらかしにするのは絶対にあり得ない
「あの、僕も、打ち明けたい事があるんですが、」
僕は駄目もとで、今僕の身に起きているこの状況を小百合さんに告白する事にした
〜〜〜
「信じてもらえないかも知れませんが、本当の事です、」
案の定、小百合さんはポカ〜んと絶妙に微妙な表情のまま固まってしまっていた
「それって、記憶障害の副作用的な二重人格とかじゃなくて?」
「はい、」
少なくとも、僕にとって僕は「轟木哲也」以外の何者でもない
「でも、それを証明する為の記憶が失くなっているって事?」
「はい、」
「貴方、高校2年生なの?」
「はい、」
「分かった、……取り敢えずそれを信じるとして、」
彼女の視線がまるで車に轢かれた犬の死骸を見る様な気の毒な眼差しになる
「これからどうするの?」
僕は暫し宙を凝視して口をへの字に曲げて熟考する
「先ずは「東郷さん」の記憶を取り戻せないか試してみたい事があります、……「東郷さん」が事故に遭った現場に行ってみたいと思います、」
流石に「東郷さん」が自殺しかけた事を彼女に伝える事は憚られたのだ
「分かった、私も一緒に行く、」




