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3-7

 その日、マクファーレン王国では新王となったアランが国民の前で王となったことを宣言する予定だった。王城の門が開き、バルコニーに立つアランを見上げるようにして民衆は新王の姿に目を奪われていた。

 けれど、アランはその場で誰もが思っていなかったことを宣言した。


「私は全ての力を失った。聖女もこの国を去った。その責は全て私にある。よって私は王の地位を辞することにした」


 集まった民衆はざわつき始める。それもそうだろう。みな祝意を伝えるために集まったのだ。

 事情を知っていたものは一様に下を向く。みなこの決定を苦々しく思っていた。何度も押し止めようとした。けれどアランの意志は固かった。

『このために、私は王になったのだ。許せ』

 そう言われてしまうと誰にも止められなかった。


「くそっ」


 アランの傍らで宣言を聞くクリスもまた同様で、苦虫をかみつぶしたような表情で悪態をついた。けれどクリスは思うのだ。立場が逆だったらきっと自分もああしていただろうと。そしてそれをしたのが自分ではなくアランだということが余計に腹立たしいのだとわかっていた。


「アイリ……お前、本当にこれでよかったのか?」


 クリスが独りごちる。その瞬間――民衆のざわめきが一際大きくなった。そろそろ出番か、そう思いクリスは顔を上げた。


「なっ」


 視線の先にあったのは想像だにしていない光景だった。

 そこにあったのは金色の光に包まれたアランと――そしてその頭上には。


「アイ、リ……?」


 金色に輝く光の中にもう二度と会えないと思っていた人の姿が見えた。

 これは、夢なのだろうか。夢でも構わない。もう一度会えたら……。

 そっと手を伸ばすアランの耳に、恋しい人の声が聞こえた。

 

「アラン、様……」

「どう、して……ああ、やはり夢だ……」

「夢じゃないです。私が、私の意志でこの世界に戻ってきました」


 アランがそっと手を伸ばすとその腕の中にアイリの身体が収まった。まるでそこにいるのが当然のように、そうするのが自然なように。


「戻って、きただと……? アイリ……君、は……私がどんな思いで、君を元の世界に戻したか……」

「ごめんなさい。謝ってももう遅いのはわかってる。でも、私どうしてももう一度アラン様に会いたかった。元の世界を捨ててでも、それでもアラン様のそばにいたかった!」

「遅いわけない! だがもう君を離せない。それでも、いいのかい?」


 アランの問いかけに、アイリは小さく頷いた。


「やっと気づいたの。あなたのそばが、私の生きる場所だって。私はあなたと一緒に幸せになりたい」

「……アイリ!」

「きゃっ」


 アランが力一杯アイリの身体を抱きしめる。その瞬間、民衆から大歓声が沸き上がった。


「アラン国王万歳!!」

「アイリ王妃万歳!!」


 盛り上がる民衆とは裏腹にクリスの周りに控えていた側近達はこのあとどうすればいいのかとオロオロする。予定ではこのあとクリスがバルコニーに立ち国王となる宣言をするはずだったからだ。……とはいえ、オロオロしているはずの側近達もどこか嬉しそうな表情を浮かべているのを見ると、クリスはおかしくなって未だ抱きしめ合っている兄とその妃となるであろうアイリを見て小さく笑った。そして。


「もう観念してずっと国王しとけ! 俺は俺のやりたいことをやるからな!」


 クリスの声にアランは困ったような表情を浮かべたあと「すまない」と呟いた。


「バーカ」


 やってらんねえとクリスはその場をあとにする。

 残されたアランとアイリは――。


「アイリ。生涯君だけを愛することを誓うよ」

「アラン様……。私も、生涯あなただけを愛します」


 見つめ合い、そして二人は口づけた。

 そんな二人に民衆は歓声を上げる。

 街は祝福に包まれ、歓声はいつまでも響き続けた。

 二人のこれからに溢れんばかりの幸せが訪れることを願って。


最終話までお付き合いくださりありがとうございました!

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