はじめての・・・出発!
ユカリ「おぉ、ノウンよ。死んでしまうとは情けない」
カミラ「なんでノウン、すぐ死んでしまうん?」
ノウン「やめて。そんなにいじめないで!」
当たり前のことなのだが、蘇生には、体が必要だ。
体が無ければ、蘇生のしようが無い。
だから、蘇生は出来ないのだ。
どうあがいても無理だ。
だから祈るのだ。
神でも祈る。
祈る。
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「どうかな? と言っても、この後の展開で行き詰まっちゃって。悩んでるのよねー」
私の原稿を見せながら、困ったよ、と聞いてきた。
「問題点がいくつかありますが、とりあえず二点」
「ふむふむ」
メモを取るふりをしながら聞く体勢になる。
「先ず一つ。私が死ぬのが納得出来ません。次に二つ目。なぜ、私がユカリと接吻をしないといけないのでしょうか? 血迷ってもそこまでは・・・」
「だって・・・実際・・・」
「ん? なにか言いました?」
「ま、いっか。なんでもないですー」
ユカリは原稿用紙(羊皮紙製)の束をカーミラ嬢に渡す。彼女は、器用なことに、手のひらの上で、魔術を使って、全部の用紙を綺麗に燃え尽きさせた。
「そうそう。それに、カーミラ嬢だって、現在10歳なのに、6歳ぐらいの設定って、あんまりですよ。ユカリだって、今年16歳になっているのに、作中では12歳。なにか作為的なモノを感じます。少女趣味か幼女趣味の人がターゲットですか? やたらと薄い層ですよ?」
「いいのよ。別に。ね? カーミラちゃん」
「そうです。別に、ノウンさんに喜んでもらうために書いたのではありませんよ?」
そもそも事の発端は、私が、不幸にも、僧侶というNPCにしか就けない職業を選択させられ、しかも、能力値割り振りボーナスである1000を全部信仰心という極振りをさせられ、冒険者にもなれず、凹んでいたときに、そこで、偶然出会った、私の神でもあり、創造主(キャラを作成してもらった)のユカリに渡されたモノだ。とりあえず読めと。そばには、女性らしい柔らかさがでてきた、将来が楽しみな天才魔法美少女、カーミラ嬢もいた。
「で? どうするの? 私たちとパーティーを組んでくれるの? くれないの?」
「もちろん、組みます。いまさら、貴女と離れるは、僧侶として失格です。でもいいんですか? 私となんて? お二人はかなりのレベルなのでは?」
「あ、そうか。私とかのステータス見れる?」
「ら、が抜けてますよ。しかし、どうやって・・・。そうか、ターゲットするのかな? はい、確認出来ました。あ、ユカリはレベル1なんですね。スキルも持ってないと・・・。了解です。次にカーミラ嬢は・・・、っと、「神の覗き見み」を手に入れました-」
なんかデジャヴュを感じなくも無いが、気のせいだろう。
「カーミラ嬢はスゴイデスネ・・・。レベル59って、12歳でこれですか。すごいです。スキルも半端ないっすね」
当のカーミラ嬢は「それほどでもー」と、ご謙遜。なかなかかわいらしい。
ピコン。
【ユカリさんから、パーティー招待を受けました。承諾しますか?】
拒否したらダメな空気が。私にはエアーリーディング機能が備わっているので、承諾します。
「と、ところで、この、クエスト「受難の日々」ってなんですか? かなり怖いクエスト説明ですが」
「簡単に言うと、クエストほいほいね。しかも、難易度高め。でも、そのおかげで、カーミラちゃんのレベルがあがるあがる。私の信者増える増える。そうでなかったら、こんなに早く、ノウンに会えなかったしね」
「?」
最後の部分がよくわからなかったが。まぁ、スルーの方向で。問題は、次に何をするかだ。
「それで、我々はこれから、どうするのですか? クエスト受けるにも、冒険者にはなれないのですよ。どうしたらいいのやら・・・」
「はい。その点は考えてあります。クエストの方が私たちを放っておかないんですが、すこしでも、この都市にある地下の大迷宮に潜りたいと思います。潜るだけなら、冒険者の資格はいりません。そこで、お二人に生き残る術を身につけてもらいます。せめて、自分の身は守って頂きますよ?」
と、スパルタ先生カーミラ嬢がおっしゃった。
「死んでしまっては、次が大変ですし」
「そうね。千人の信者つくるのでも、あれだけしんどかったのに、次は一万人でしょ。もう無理ね」
あの? なぜ、私をにらんでいるのですか? 怖いです。
「さ、行きましょう? 時間が少しでもあれば、鍛錬して、いつでも困難に立ち向かえるようにしておかないとねっ!」
あぁ、笑顔が眩しい。やる気がわいてくる。確かに、優遇スキルがない分、苦手スキルが無いのは、逆に有利なのではなかろうか。そんな気がしてくる。よし、いっちょやってやるか。
「さぁ、まだ見ぬ冒険へ!」
「「おー!」」
ユカリのかけ声に、カーミラ嬢と声を合わせる。
職業がらか、思わず、冒険の安全を神に祈りたくなった。
あぁ、目の前に、冒険者の神が居るんだった。
だったら、口に出して、直接祈ろう。
「これからも、よろしく。ユカリ」
私は「僧侶」。
何度でも祈ろう。
私は、Prayerなのだから。
ユカリ「これで、一端、終了です。いままでありがとうございました」
ノウン「今回は、いろいろと勉強になりました。たくさん課題がみつかりました。次は、もうちょっと、設定等を考えて、実行に移りたいと思います。何はともあれありがとうございました」
カミラ「伏線の回収は?」