第6話:原石の発見と、新潟からの旋風
1999年5月下旬。
動画投稿機能と収益化プログラムの解禁から一週間。『NextStream』には毎日、数十本単位で動画が投稿され始めていた。
当時のネットユーザーが投稿する動画といえば、飼い猫の映像、旅先の風景、あるいは自作のFlashアニメ(を動画化したもの)などが大半だった。回線の細いこの時代、一般人が動画を撮影してPCに取り込み、エンコードしてアップロードするだけでも膨大な手間がかかる。
だが、俺の「技術100」によって作られた『Next-Encoder』は、ドラッグ&ドロップひとつで動画を極限まで軽量化し、数分でアップロードを完了させた。
「……そろそろ『あの男』が動く頃だな」
秋葉原の事務所で、俺——瑞樹は投稿された新着動画のリストを「知力90」の高速処理でチェックしていた。
すると、一本の動画が目に留まった。
タイトル:【ボイパ】口だけで色んな音出してみたww【KAZUKIN】
投稿者:KAZUKIN
「……きた!」
俺は思わず身を乗り出した。
再生ボタンを押すと、画面に映し出されたのは、少し緊張した面持ちの垢抜けない青年だった。カメラの画質は粗いが、彼が口を開いた瞬間、部屋のスピーカーから重厚なバスドラムとハイハットの音が響き渡った。
『ブンッ、ツッ、チャッ、ブン! どうも、KAZUKINです! 今日はヒューマンビートボックスをやってみました!』
拙い部分はある。だが、溢れ出るテンポ感、そして何より「画面の前の視聴者を楽しませようとする熱量」は、紛れもなく史実で日本最高のトップクリエイターとなるあの男の原石そのものだった。
再生数はまだ「42回」。コメントは「2件」。
「この原石を、ここで咲かせない手はない」
俺は即座に行動を起こした。
自身の公式アカウント『瑞樹』の個人ページ、そしてネクストのトップページにある「今週のおすすめ動画」の筆頭に、KAZUKINの動画をピックアップして掲載したのだ。
さらに、自身のX(当時は存在しないため、ネクスト内のつぶやき機能『ネクステログ』)で一言呟いた。
『この人のボイパ、凄すぎる……! 口だけでこんな音出るの!? みんな絶対見て!!』
「カリスマ90」を誇る瑞樹の一言。
それがどれほどの破壊力を持つか、1999年のネット界はまだ知らなかった。
その日の夜。新潟県内の実家。
「……え?」
自分の古いノートPCの前で、青年——KAZUKINは目を丸くしていた。
趣味のボイパを撮って、昼間にダメ元でアップしただけの動画。
再生数が、とんでもない勢いで跳ね上がっていたのだ。
「ひ、ひゃく……せん……いち万再生!? 嘘だろ!?」
F5キーを押してページを更新するたびに、数字が数百単位で増えていく。コメント欄には、見たこともない量の書き込みが殺到していた。
[動画コメント欄]
・みずきちゃんの紹介から来ました!
・うっそだろこれ口で鳴らしてんの!?
・ボイパうまくて草
・KAZUKIN兄貴凄すぎてワロタ
・ネクストで一番面白い動画だわwww
・みずきちゃんが絶賛するのも納得
「み、瑞樹ちゃんが……俺の動画を……!?」
画面に躍る、あの超絶美少女でありネクストの創業者・瑞樹からの推薦コメント。
KAZUKINの全身に、電気のような衝撃が走った。
そして、彼の元に一通の「ネクスト公式ダイレクトメッセージ」が届く。
『KAZUKIN様。はじめまして、NextStream運営の瑞樹です。あなたの動画、本当に素晴らしかったです! もしよろしければ、今週末の私の生配信に「ゲスト」としてご出演いただけませんか?』
「……マジかよぉぉぉぉぉ!!!」
新潟の小さな部屋で、未来のトップ配信者の叫びが響き渡った。
1999年のインターネットに「コラボ配信」という概念を持ち込む。
素人の才能を発掘し、プラットフォーム全体で押し上げて大スターを作る——そのシステムが完成した瞬間だった。
俺は鏡に映る瑞樹の姿を見つめ、口元を緩めた。
「さあ、カズキン。一緒に時代を創ろうか」
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【瑞樹の現在のステータス・資産状況】
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名前:瑞樹
年齢:17歳(高校2年生)
資産:2,500万円
割り振り可能ポイント:0 P
【パラメータ】
・容姿:85
・知力:90
・技術:100
・カリスマ:90
・運:90
【指標】
・『NextStream』会員数:150,000人突破
・KAZUKINの初動画再生数:80,000回突破(急上昇1位)
【現在の目標】
KAZUKINとの初コラボ配信の実施、および1999年夏の「ドットコムバブル」への大規模投資の準備。
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