第11話:ブロードバンドの夜明けと、奇天烈な大学生
2001年、春。
日本全国に「ADSL」の波が押し寄せていた。定額制・高速通信の普及により、ダイヤルアップ時代の「テレホーダイ待ち」は過去のものとなり、ネットは『常時接続』の時代へと大きく舵を切った。
世間がブロードバンドの恩恵に歓喜する中、秋葉原の『ネクストタワー』最上階。俺——瑞樹は、さらなる先を見据えていた。
「世間はようやく数MbpsのADSLだけど……ネクストの自社サーバーは既に10Gbpsバックボーンへ増設完了。技術100で作った『Next-Codec v2.0』なら、4K解像度すら見据えた映像送信が可能だ」
全ステータス(ALL100)の全能感は健在だ。
18歳になり、高校を卒業した俺は名実ともに『ネクスト・エンターテインメント』の絶対的経営者兼トップ配信者として君臨していた。
『NextStream』の会員数は【500万人】を突破。
KAZUKINをはじめとする初期クリエイターたちは連日ミリオン再生を叩き出し、世間では「ネクストを見る」ことが新しい若者文化として定着しつつあった。
だが、俺は知っている。
動画共有サイトの真の面白さは、ボイパや音楽だけじゃない。「体を張ったバカバカしい実験」や「誰も思いつかない突拍子もない企画」を行う、型破りな才能たちの存在だ。
「そろそろ……現れるはずだ」
俺は「知力100」の脳内で、投稿された新着動画の巡回アルゴリズムを走らせた。
そして、一本の異彩を放つ動画を検知する。
タイトル:【実験】スーパーで買った炭酸飲料全部混ぜて風呂に入れてみたwwww
投稿者:ハジメ
「……きた!!」
俺は思わずクスリと笑った。
再生ボタンを押すと、画面に映し出されたのは、ひょろりと背が高く、無駄にスタイルの良いイケメン風の大学生だった。
『どうもー! ハジメです! 今日はですね、誰もが一度は夢見る「炭酸風呂」を自作してみたいと思います! 破産覚悟でコーラとサイダーを50本買ってきました!』
安いWebカメラの前で、バカバカしい実験に全力で挑み、案の定吹きこぼれたコーラまみれになって悶絶する青年。
編集は粗削りだが、画面から溢れ出る「無邪気な少年性」と「圧倒的テンポ感」。
史実で日本トップの登録者数を誇ることになる、あの『はじめしゃちょー』の原型がそこにあった。
再生数はたったの「120回」。
「よし、原石発掘・第二弾いくか!」
俺は速攻で『瑞樹』の公式アカウントからコメントを書き込んだ。
[動画コメント]
・瑞樹:これ絶対掃除大変なやつだ(笑)! 発想が最高にロックで面白かったです! 次の実験も楽しみにしてますね!
「カリスマ100」の瑞樹からの直接コメント。
それが持つ影響力は、もはや一国のメディアに匹敵する。
数分後、その動画のコメント欄と再生数は、地鳴りを立てて暴走を始めた。
[動画コメント欄]
・え???? 瑞樹ちゃんのコメントあるんだが!?
・瑞樹ちゃん降臨で草wwwwwwww
・瑞樹ちゃんのお気に入りから飛んできました!
・身体張りすぎててワロタwwww
・コーラ風呂はアホすぎるだろwwww(褒め言葉)
・再生数一瞬で5万いっててワロタwwww
その頃、地方の大学の狭いアパート。
「……は?????」
画面の前で、青年——ハジメは目玉が飛び出そうなほど目を見開いていた。
「な、なんだこれ……再生数が壊れた!? え、コメントに『瑞樹』……? 本物のアカウント……!?」
あの伝説のTS美少女であり、億万長者、そしてネクストの絶対神である「瑞樹」からの直接の絶賛コメント。
ハジメは頭を抱えて叫んだ。
「マジかよぉぉぉぉ! 瑞樹ちゃんに見られたぁぁぁぁ! 次はもっとヤバい実験撮らなきゃ(使命感)!!」
画面越しに新しい才能が覚醒する音を聞きながら、俺は優雅に紅茶を口に含んだ。
「ふふ……いいリアクション。さあ、ハジメくん。君の破天荒なアイデアで、ネクストに新しい風を吹かせておくれ」
ブロードバンド時代の到来とともに、エンタメの熱気はさらに加速していく。
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【瑞樹の現在のステータス・資産状況】
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名前:瑞樹
年齢:18歳
資産:115億円
割り振り可能ポイント:490 P(※全パラメータMAXのためストック中)
【パラメータ】
・容姿:100(MAX)
・知力:100(MAX)
・技術:100(MAX)
・カリスマ:100(MAX)
・運:100(MAX)
【指標】
・『NextStream』会員数:5,200,000人突破
・発見した原石:ハジメ(実験系クリエイター第1号)
【現在の目標】
ハジメの育成、ネクスト公式大型イベント『ネクストフェス』の企画、および海外展開に向けたインフラ整備。
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