第1話:1999年の残響と、青い画面
「……え?」
喉から漏れた声は、自分のものとは思えないほど高く、鈴を転がすように澄んでいた。
視界に飛び込んできたのは、見覚えのある——けれど、とうに捨て去ったはずの光景だった。
薄暗い六畳間の和室。部屋の隅で重低音を響かせているのは、奥行きが異異に分厚いブラウン管の15インチPCモニター。その横には、灰色のタワー型デスクトップPCが「ブォォォン」と鈍いファン音を立てて鎮座している。
壁のカレンダーに目をやると、太字で躍る数字。
『1999年 4月1日』
「……1999年? 平成11年……!?」
慌てて立ち上がろうとして、足元がおぼつかずに畳へ倒れ込んだ。
視界に映ったのは、やけに小さく、白い自分の手足。爪には一切の荒れがなく、肌は吸い付くようにキメ細かい。
部屋の隅にある姿見(鏡)へ這うようにして近づき、そこに映る自分を見た瞬間、俺は息をのんだ。
そこにいたのは、サラリーマンとして激務に追われていた30代の俺ではない。
肩まで伸びた艶やかな黒髪、吸い込まれそうな大きな瞳、透き通るような白肌を持った、奇跡のような美少女だった。
(……TS……転生……!? しかも、過去に!?)
頭が混乱で破裂しそうになったその時、視界の中央にフッと青い半透明のウィンドウが浮かび上がった。
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【ステータス管理画面】
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名前:瑞樹
レベル:1
割り振り可能ポイント(P):100
・容姿:85 / 100(美少女)
・知力:60 / 100(平均以上)
・技術:40 / 100(一般プログラマー級)
・カリスマ:30 / 100(一般人)
・運:50 / 100(普通)
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「ゲームの……ステータス画面……!?」
半信半疑で、指先で「技術」の項目をタップしてみる。
ポチ、と軽い電子音が鳴り、ポイントが消費され「技術:40 → 70」へと跳ね上がった。
その瞬間。
頭の中に、怒涛のようなプログラミング言語、サーバー構築の知識、映像圧縮アルゴリズムの理論が直接流れ込んできた。
(な、なんだこれ……! 頭が冴え渡る……! 1999年の技術レベルどころか、未来の最新コーディング技術まで勝手に脳内で再構築されていく……!?)
俺は理解した。
これは夢でも妄想でもない。俺は未来の知識を持ったまま1999年に遡り、さらに「ステータスを自由に振り分けられる」というチート能力を手に入れたのだ。
「待てよ……1999年ってことは……」
デスクの上のパソコンに駆け寄り、ダイヤルアップ接続の「ピー……ヒョロヒョロヒョロ……パ・ピ・プ・ペ・ポ……」という懐かしすぎる接続音を聞きながら、ブラウザを立ち上げる。
YouTube: まだ存在しない(史実では2005年設立)
ニコニコ動画: まだ存在しない(史実では2006年サービス開始)
iPhone: 当然ない(史実では2007年発売)
Amazon / Yahoo!: 創業期〜急成長の直前
ビットコイン: 影も形もない(史実では2009年)
「勝てる……!」
俺はぎゅっと小さく拳を握りしめた。
現代ではしがない社畜だった。だが、ここには誰も知らない「未来」がある。
YouTubeもニコニコ動画もないこの時代に、世界最速の動画配信プラットフォームを作り上げたらどうなる?
そこに、この「ステ振り美少女」の姿で看板配信者として君臨したら、世界はどう動く?
もちろん、そのためには圧倒的なインフラとサーバー費用——つまり「莫大な資金(金)」が必要だ。
「まずは……投資で億を稼ぐ。ドットコムバブルの波を全部かっさらってやる」
残りポイントを「知力」と「運」に惜しみなく注ぎ込む。
知力: 60 → 90(超天才)
運: 50 → 80(強運)
視界がさらにクリアになり、脳内で1999年〜2000年代の株価チャート、IT企業の成長曲線が鮮明に組み上がっていく。
「よし……始めるか。世界をバズらせるための、俺の最初の配信を作る準備を」
1999年、平成最後の大怪獣たちが蠢くネット黎明期。
一人のTS美少女による、世界を巻き込んだエンタメ革命が、静かに幕を開けた。
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【瑞樹の現在のステータス・資産状況】
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名前:瑞樹
年齢:17歳(高校2年生)
資産:15万円(高校生の貯金)
割り振り可能ポイント:0 P
【パラメータ】
・容姿:85(街を歩けば100人中100人が振り返る)
・知力:90(天才的IQ・未来予測の精度向上)
・技術:70(超一級のエンジニアレベル)
・カリスマ:30(まだ一般人レベル)
・運:80(豪運の持ち主)
【現在の目標】
初期資金15万円を株・FX投資で数千万円に増やし、サーバーと回線を確保すること。
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