僕はボクだ
ザ・エンドってね。因みに最近自分で読み返して整井と刃渡の戦闘時撃った弾の数と表記した弾数が違うことに気づきました。もう直してますがどうせ誰も読み返してないと思うので、混乱してた人居たらごめんとここで言いたかった。
「何時から気づいてたんだい?」
僕の暴風のような呼吸音だけが犇めく中、お手上げと言わんばかりに地面に座り込んだ桜走がそう問う。何についてかは語るまでもない『彼を統率者と気づいた』事だ。
「綴が白雪を探しに単独行動をとり始めたとき、情報を集めるために安いスマホを買った。そこにはこんなゲームの話どころか、僕たち瑕疵付きに関する情報もなかったんだ。」
「それから俺っちを殺さなかったのは綴くんの意向のせいか?それとも自信がなかったとか?」
「必要ないと思ったからだよ、君とは2回戦闘を共にしたけど君は本当に命をかけていたからね。」
桜走は何かボソボソとボヤいているが耳あたりの血管が酷く振動していて上手く聞き取れなかった。何か彼の中で決心がついたのか、諦めたように大きくため息をつき再度僕に問いかける。
「それで君はこれからどうするつもりなんだ?もう分かってるだろうけど、この世界もここに居る全員も僕によって作られた存在だ、桜走妄も含めてね。ここに残ることはできないよ。」
分かりきっていたことだが、やはり綴の目的を完全に達成するのは不可能なのだろう。誰か一人を…いやそもそも桜走は誰かなんてこれっぽっちも思っていない。桜走は端から綴を生き残らせるつもりだったのだろう。だが故にそれに気づいたからこそ僕は自らが何の瑕疵付きなのかを知った。
「その前に君に一つ聞きたいことがある。殺したままにしなかったのには当然理由はあるよ。」
「勿論時間と知識だけはある、何でも聞いてくれ。」
「どうして僕を…羅和千里を作ったんだ?君は僕と御手洗を殺すためにこんな事をしたんだろ?」
悔しさや虚しさの強かった桜走の表情が一変し、やがて諦めるように大きく笑った。10数秒笑い続けようやっと桜走は口と腹を開く。
「そんな事まで気付いていて君は…いや、今は質問に答えよう。君を作ったのは僕じゃなくて完全な偶然だよ。お察しの通り認目綴と羅和千里、そして御手洗足染は千里アミラを元に僕が3つの瑕疵に分解した存在だ。彼は歴史上稀に見る強力な瑕疵付きだった。『運命操作』…というより『運命捜査』とでも言うのかな?兎に角アミラは自分に限りなく起こり得る運命を選択する事が出来た。少し長い話になるけど、瑕疵付きになる前アミラは大学受験に失敗し俺の前から姿を消した。らしい。これは後から『自己探求』の瑕疵付きになった時に知ったことだ。そしてアミラは人生をやり直し、努力をしなくなった。当たり前とも言える、何もしなくても本当に少しでも起こり得る結末を選べてしまうんだからね。彼は堕落しいつの間にかアイドルを引っ掛けて逃亡した。後にアミラは捜索に成功した父親を殺害し何度やり直そうとしてもついぞ叶わなかった。彼は幾度にも自分と別世界の自分を入れ替え自分を見失ったんだ。」
漸く僕にも話が見えてきた。正直な話僕がさっき言った内容は全て推測の域を出ない。だから僕には何故僕と御手洗を殺そうとするのかまでは分からなかった。
「千里アミラにとって自分を見失った事も、父親を殺した事も黒歴史。だから君は黒歴史を消そうとした。」
桜走は無言で深く頷く。桜走が綴に入れ込んでいること、そして綴僕と御手洗とが同一人物である事は能力が干渉する『時間』の概念が同じである事から推測できたが、ここまで込み入った事情とは思わなかった。
「でも本当に偶々さ」
頭の中を整理していると桜走がそう言葉を零す。
「俺っちは交差する心象を使い過ぎたのさ、オリジナルの人格を失い自分が誰か分からなくなった。誰かさんみたいにね。瑕疵付きってのは何も一人の人間からのみ生まれるものじゃない。寧ろ本来は多くの人の未練や願望が存在になるんだ。もう分かるだろ?羅和千里は自分を見失った千里アミラであり、俺っちの主人格でもある。そしてその誰でもない。君は『自己探求』の瑕疵付きだからね。」
桜走は下から覗き込むように僕を見つめる。今度は僕の番という事だろう。
「『これからどうするのか』悪いけどそれに答えるのは僕じゃない。」
桜走の後方数分前から気づいていたが敢えて放っておいた人物が僕と目が合ったことに気づき一歩前へ出る。無論彼とは綴の事だ。
「待てよ羅和俺はまだ心の整理が──」
「悪いけど僕には時間がない。『自己探求』の瑕疵付きである羅和千里が別の人物と同一化する。つまりそれは瑕疵の矛盾だ、僕は隔多里同様存在が消えつつある。」
気づけば整井と隔多里も集まっていた。桜走が位置情報を伝えたのだろう。
「整井と隔多里はどうするんだ!?俺には到底決めきれねぇよ!」
綴が悲鳴なような声を上げようと他に誰一人として感情的な存在は居なかった。
「僕は認目さんに付いていきますよ、どうせ1人でどうこうなる問題じゃない。妄君と羅和君がそっちに着くなら僕もそうする。」
「私も同じね。漸く自分を思い出せたんだもの、ここで存在ごと消えたくはないわ。あの娘の事を忘れないためにもね。」
数分して綴は小さく吐露する。
「俺は例え偽物の存在でも皆に消えて欲しくない。だから皆の…いや俺のエゴの為に死んでくれ羅和。」
僕は自分の肩に乗っていたあまりに大きな重石を今下ろすことができた。打算に打算を重ねてここまで来ても結末を決めるのは綴な以上必ずしもこの結果にはなり得なかった。やはり僕は僕だ。僕を信じてよかった。
「桜走、綴の君の望む千里アミラの為に協力してくれ。今から僕が全員と同一化する。」
随分長い時間が経ったと思う。瞼を上げると目の前には何もなく誰かだけが居た。市松人形のようなオカッパ頭の少女…の形をした何か。それがボクに問いかける。
「まさかこんな結末になるとはなぁ。流石に後味悪過ぎるんやないか?」
「─────────────────」
「自分はもう何者でもないんやから、そないな事しても無駄じゃけえ。ん?これは別の方言だったかな?」
「─────────────────」
「しゃあないから、特別にウチが自分に名前授けたる。そのかわりと言っちゃなんだけど、ウチの生まれた世界を救ったげて欲しいんや。」
「─────────────────」
「ほな、またアッチの世界で会おうや。命名する『存在しない神』改め…『ユーリカ≠ニヤリーコール』。」
完結です。『鈴音』を読んでからこっち来たなら分かるでしょうがそういう事です。もし読んでなくて時間だけがある人が居るなら読んでみてください。面白くはないけど時間は潰せます、無駄に長いので。
もしこの作品を気に入ってくれて他の作品を読む気はないという人がいると仮定して、『鈴音』の外伝である『カテイばかりの量子力学─ラプラ・スキップ─』のスピンオフをいつか書きます。興味あれば定期的に覗いてみてください。
以下ちこここ
「進撃の巨人」を始めタイトル回収というものは作品の小ネタの花形ですよね、勿論私の作品も漏れなくそれです。でも作中には『ラプラス・スキップ』こそ出たけど『ラプラ・スキップ』なんて出てきませんでしたよね?記憶違いではなく実際に書いてません。最初は作中に出すつもりだったんですが話の都合で明記してません。所で(唐突)、認目が単独行動をとった後羅和が接触したシーンありますよね?否あります。アレが『ラプラ・スキップ』です。千里アミラよろしく羅和千里も自分が望んだビデオテープの切れ端を持ってくる事が出来ます。何せ『取って付ける』能力なので。『模倣接続』も空間を切り『取ってつける』、当然『取ってつけたような結末』を持ってこれるわけです。仮定ばかりの羅和の計画がうまく進んだのも無意識にこの能力を使ってたからですね。でも最後に認目を、自分を信じた結果決断を間違えた。何分そんな能力を自覚されたら文字通りお話にならないのでステルスタイトル回収となりました。他にも色んな伏線張ってるので改めて読み返してみて欲しくはあります。作品を読んでもらえる事ほど作者にとって嬉しいことはないですからね。
改めまして、これで『カテイばかりの量子力学─ラプラ・スキップ─』完結となります。ではまた別の作品で会いましょう。
R a bitでした。




