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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第20章 後輩とダンジョンへ

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第571話 やっと一つ目

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 ミノタウロスとの初めての戦闘を終え、美佳と沙織ちゃんの顔には疲労困憊の色が濃く出ていた。2人とも怪我こそないが、かなり危うい場面があったからな。精神的にはかなりきているだろうね。

 その証拠に二人とも気持ちを落ち着かせようと、肩を大きく上下にさせながら深呼吸をしている。


「大丈夫か?」

「う、うん。大丈夫、大分落ち着いたよ」

「私も、大丈夫です」


 呼吸を整え終えた美佳と沙織ちゃんは、少し落ち着いた表情を浮かべながら軽く頭を縦に振った。 

 まだ少し動揺している気配を感じるが、まぁ本人もこういっているので大丈夫だろう。


「そっかとりあえず一息は吐けたって感じだな。まぁそれにしても残念だったな、アレだけ苦労して戦ったのに今回はドロップ無しか……」

「うん。でもまぁ仕方が無いよ。毎回ドロップするって訳じゃないしさ?」

「そうですよ。それに今回は動揺して、剥ぎ取りナイフを使う暇もありませんでしたからね……少し惜しい事をしちゃいましたね」


 沙織ちゃんがいう様に、確かに惜しい事をしたかもね。モンスターが粒子化している最中に剥ぎ取りナイフを使うと、確定で食品系アイテムがドロップする。食品アイテムを取り扱うダンジョン系企業所属の探索者チームはコレを使い、安定した納品数を確保しているのだ。

 しかし、使用するモンスターによっては食品系アイテムでは換金額が低いので、換金率の高いアイテムを狙い個人事業主系探索者は使用しない事もある。


「ミノタウロスの肉は今でも需要が高いから、中々の額で引き取って貰えるからね」

「それに美味しいから、お土産としても使えるしね」

「はい、ほんと惜しい事をしました」


 一般的にも人気があるミノタウロスの肉は国産銘柄牛並みのお値段で買い取って貰えるので、20階層まで到達できた探索者パーティーは積極的に収集している食品系アイテムの一つだ。

 ただミノ肉は生モノなので、鮮度管理できる冷蔵設備が無いと日帰りしないといけないのが難点である。俺達がミノ肉メインでやる時は、大型保冷バッグに保冷剤を満載してたからな。まぁ必要な品ではあるが保冷剤が結構容量を圧迫するので、ある程度以上の実力があるパーティーにとってはあまり効率が良いドロップアイテムではなくなるけど。


「それじゃぁ次に戦う時は、剥ぎ取りナイフの使用を前提に戦ってみたらいい。今回は初めてミノタウロスと戦う事を考慮して、戦って怪我無く勝つ事に主眼を置いてたからね」

「そうだね。そのお陰で怪我は無かったけど、かなり危ない目にはあったけど」

「まさかミノタウロスが、あんな戦い方をしてくるなんて思ってもみませんでしたから」


 確かにな、俺もミノタウロスがあれだけ不利な状況で粘るとは思わなかった。戦い方もかなりうまかったし、思いきりも良かった。まさかミノタウロスが敵を分断した後、自分の腕を盾にしながら相手を仕留めようとしてくるなんてな。

 もしかして、これまで交戦してきた探索者達の動きを学習してる……とか?



「そうだね。じゃぁこのまま次の戦闘にっていうのは難しいだろうから、少しさっきの戦闘について反省会をしようか?」

「うん」

「はい」


 まだ少し落ち着かない雰囲気の残る美佳と沙織ちゃんの動揺が抜けきるまで、休憩を兼ねた反省会を行う事にした。

 あのミノタウロス、中々覚悟の決まった動きをしていたからな。これから出会うミノタウロスも同じような動きをしてくるとなれば、この場で出来る対策を先に考えておかないと危ない。


「まず初めに最初の奇襲については問題なかったかな。相手を挟撃し対応される前に、メインの攻撃手段を奪ったからね。強いていえば、奇襲で相手を仕留めきれなかったことくらいかな?」

「うん。首への攻撃を躱されたのには驚いたけど、それも想定内の事だから問題はなかったと思う。代わりに相手の片手を奪えたからね」

「相手のメインの武器を奪えたので、攻撃範囲も狭まりましたから次の攻撃の際に接近もしやすくなりますからね。ここまでは想定内だったんですよ……」


 そう、ここまでは想定内だった。奇襲で片が付けば良し、回避されたとしても相手の武器は奪えるという2段構えの攻撃だったからな。問題はこの後、次の攻撃に移った際に起きた。


「そして同じく挟撃を目論見て2次攻撃に出たけど、相手が動かなくなった腕を盾に各個撃破に出るという対応をしてきた」

「防がれたり躱される事は考慮してたけど、私を無視して損傷覚悟で沙織ちゃんの撃破を目指すなんて……あんな動きをしてくるモンスターにあった事なかったよ」

「一体が動きを止めてもう一体が攻撃してくるといった、連携攻撃してくる相手はこれまでにいましたけど、単体で囲んでいる相手の各個撃破を狙うようなモンスターは初めてです。これまで私達が遭遇した大抵のモンスターは、自分に攻撃を仕掛けてくる相手か自分に一番近い相手に攻撃してきましたからね。まさか人数的に不利な状況でも、自分が優位に立ち回れるように動くだなんて……」


 美佳と沙織ちゃんは何ともいえない表情を浮かべながら、ミノタウロスの取った行動を評価する。これ迄遭遇したモンスターとは、質が違った戦い方をしたからだろうな。

 モンスターなのだから、これまでに遭遇したモンスター達と同じ対応をしてくると無意識に思っていた事が足枷となり、窮地に追い込まれる事になるとはね。


「そうだね。この階層で大怪我をする探索者の多くが、ミノタウロスもこれまで遭遇したモンスターと同じ行動基準で動く、そう考えた結果だよ。前衛が相手の気を引きながら攻撃を仕掛けているのだから後衛は援護に徹していれば大丈夫、そう思っていた所に前衛を無視して後衛を先に潰しに来られ対応できずに戦線が崩壊。這う這うの体で怪我人を回収し撤退、そういった事例が多くあるんだ」

「「……」」


 美佳と沙織ちゃんの目が鋭くなり、少し非難気な表情を俺に向けて来る。

 表情を見るに、知っていたのなら先に言ってくれといいたげだな。


「言っておくけど、20階層に到達した経験者に聞いたり、ネットを調べれば耳に入る情報だからな? 何となく動きが違う、手強かった、面倒な相手だといった曖昧な表現になるだろうけど、これまでのモンスターとは何か違うといった警戒は持てたはずだぞ? 一応2人も警戒はしてたんだろ?」

「「……」」


 自分達も事前に調べてはいたが、ミノタウロスがこういった動きを取るとは思ってもみなかったといいたげな表情を浮かべている美佳と沙織ちゃん。確かに明確なイメージは出来なかっただろうが、油断ならない相手、これまでとは違う相手という認識は持てたはずだ。

 まぁ俺達が同行するタイミングで20階層に挑むことにしたのは、そういった警戒もあっての事だろうしな。少し想定が甘く、倒せたものの相手に意表を突かれた形になったんだろうが。


「……警戒はしていたよ。でもまさか、ここまで今までと違う面倒な相手とは思ってなかったから」

「一味違うぞって話は聞いてました。それもあって念の為にお兄さん達が一緒に来てくれるこのタイミングで、20階層にいこうって話だったんですけど……」

「想定を超えられたわけだ」


 美佳も沙織ちゃんも情報収集自体は怠っておらず、ちゃんと警戒もしていたらしいが、それでもどこか心に油断があったみたいだ。これまでダンジョン探索を堅実かつ順調に進めてきたからこそ、急な相手の行動基準の変化に戸惑ってしまったという感じか。

 2人の実力自体は先の戦闘で証明されたように、十分に20階層のミノタウロスが相手でも通用する。一度相手が一筋縄でいかない事を経験すれば、再び同じ不覚を取る事も無いだろう。


「まぁ幸い2人とも怪我無く初めてのミノタウロス戦を乗り越えられたんだ、次は相手がどういった行動をとるかを念頭に置いた上で戦えるよね?」

「うん、大丈夫。一度こんな事を経験してんだから、もう油断というか先入観で相手を測ったりしないよ」

「もう同じ過ちは繰り返しません、相手がどんな動きをしても冷静に対処して見せます」


 俺が尋ねると、美佳と沙織ちゃんは今度こそはといった気合の入った笑みを浮かべていた。

 そして動揺で落ち着きの無かった雰囲気も完全に払拭されており、どうやら立て直しにも成功したようだ。


「それじゃぁ2人とももう大丈夫そうだし、実際に見せて貰うとしようかな?」

「うん、任せてよ!」

「はい、期待に応えて見せます!」


 2人が調子を取り戻したので休憩と反省会はこれぐらいにして、俺達は20階層の探索を再開する事にした。







 美佳と沙織ちゃんを先頭に20階層の探索を再開、暫くすると早速名誉挽回の機会が訪れた。薄暗い通路の奥に見える大柄な影、単体で微動だにしておらず手には棍棒らしきものを持っている。

 コレが探索者ならパーティー数名分の人影や反射板の返光、ライトの明かりなどが見えるので、それがこの時点で視認できないという事はアレがミノタウロスの可能性は高い。


「……いた」

「いたね、ミノタウロスかな?」

「多分そうだと思う、こんな所に単独だしライトを使ってる形跡もないしね」

「そうだね、探索者ならあんな真似はしないもんね」


 美佳と沙織ちゃんは通路の奥に見える影をミノタウロスと判断し、早速軽い打ち合わせを行い戦闘準備に入る。


「今回はミノタウロスのお肉をドロップアイテムとして確保したいから倒した後、粒子化が終わる前に剥ぎ取りナイフをミノタウロスに突き立てる、で良いよね?」 

「うん。レアドロップ狙いも悪くないけど、今回の探索の目的としてはお肉を沢山確保する方が理に適うからね。お肉だけになるけど、積載量の限界を測るのなら確実にドロップさせられるお肉を確保する方が良いから」


 今回の探索の目的は美佳と沙織ちゃんの、戦闘に支障の出ない最大積載量を確認する事だ。どれだけドロップアイテムを拾いバックパックに仕舞ったら限界が来るのか、その限界を知る為の探索といえる。

 探索者はドロップアイテムを持ち帰り換金する事で収益を上げるが、限界以上に荷物を持ち帰ろうと思えば戦闘行動に支障が出て万が一や大怪我を負う事になるからな。


「了解、じゃぁ確実に決めようね」

「うん、今度は失敗しないよ」


 美佳と沙織ちゃんは事前確認を終え、それぞれ武器を構えながら通路の奥にいるミノタウロスとの距離を詰めていく。ゆっくりと慎重に間合いを詰めていきライトの光が通路の奥の陰、ミノタウロスを照らし出した。

 そして影を照らし出された事を合図にし、ミノタウロスが威嚇の咆吼を上げる。


「グモォォ!」

「行くよ沙織ちゃん!」

「うん、美佳ちゃん!」


 ミノタウロスの咆吼を合図に、美佳と沙織ちゃんが一気に左右に分かれ間合いを詰め始める。

 ミノタウロスも美佳と沙織ちゃんの接近に気付き、即座に迎撃態勢を整え右手に握りしめた棍棒を大きく振りかぶった。


「グモッ!」

「っと!」

「はっ!」


 一気に間合いを詰めた美佳に振るわれるミノタウロスの棍棒による上からの振り下ろし、美佳はギリギリまで軌道を見極めサイドステップで回避。振り下ろした棍棒が強かに地面を打ち付けたが、ミノタウロスは反動で跳ねあがる棍棒の向きを制御し間合いを詰めて来ていた沙織ちゃんを薙ぎ払う様に振り抜く。棍棒が横から跳んできた沙織ちゃんは慌てる事なく棍棒の軌道を見極め、軽くしゃがみ込み回避する。いやぁ、2人ともうまく回避したな。

 しかしミノタウロスがやった事はいわゆる、振り下ろしからの変則的な燕返しというやつだ、芸達者だね。だが回避された時点で勝負は決まったかな、その大振りは2人を相手にするには致命的だよ。


「エイッ!」

「ヤッ!」


 ミノタウロスの攻撃を回避した美佳と沙織ちゃんは、大振りで体勢を崩したミノタウロスとの間合いを詰め攻撃を繰り出した。棍棒の振り下ろしと無理な薙ぎ払いによって体勢の崩れたミノタウロスは迎撃に移れず無理やり地に倒れ伏す事で攻撃を回避しようとする。

 しかし、追い詰められたミノタウロスがどういった行動に出るかを経験した美佳と沙織ちゃんは、ミノタウロスの咄嗟の回避行動を見極めてから狙いすます様に急所へ攻撃を繰り出した。


「グモッ!?」


 美佳と沙織ちゃんの繰り出した攻撃は狙い違わず、ミノタウロスの背中の中心と首筋を貫いた。

 決まったな。


「「……」」


 美佳と沙織ちゃんは倒れ伏すミノタウロスを警戒し見守りながら、粒子化が始まるのを静かに待つ。

 そしてミノタウロスの体の粒子化が始まると、美佳は腰のホルスターから一本のナイフを取り出しミノタウロスに向かって投擲した。


「エイッ」


 美佳が投げたナイフがミノタウロスに刺さると一気に粒子化が加速し、ミノタウロスの倒れた跡にはナイフとブロック肉が残された。

 うん、ミノ肉の確定ドロップ成功だな。
















技巧派なミノタウロスが多いですね。


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挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
いまの主人公たちならば解体ナイフで倒せそう……最初から最後まで解体ナイフで戦って仕留めた場合は違いとかあるんだろうか?
今回も面白かった。 原典からして、食料が9年ごとに少年少女七人ずつだから我慢強さとやりくり工夫の発想は凄まじいんだよね
ダンジョンもすこしづつレベルアップしてるとか?
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