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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第13章 夏休みはダンジョン探索三昧
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第286話 中々厄介なヘビだな

お気に入り24130超、PV40020000超、ジャンル別日刊53位、応援ありがとうございます。



新年あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします。

それと新年早々ですが、祝4000万PV達成です! 朝ダンを応援してくださった皆様、いつも応援ありがとうございます! これからも頑張っていきますので、応援のほどよろしくお願いします!



朝ダン、ダッシュエックス文庫様より発売です。よろしくお願いします。






 33階層に降りた俺達は、先ず周辺警戒を行い近くにモンスターや罠が無いかを確認する。不意打ちが一番怖いからな。

 そして周辺の安全確認を終えた俺達は手早く天井の高さ測定やドローンの発進準備を整え、偵察飛行を開始する。本日3度目という事もあり、既に手慣れてきた感が出て来たな。


「じゃぁ、飛ばすぞ」

「裕二。最初は目視出来る範囲で、この近くの周辺を探ってくれ。もしかしたら、ドローンが攻撃されるかもしれないからな」

「分かってる。初めての階層だからな、その辺は慎重にするって」


 そう言うと裕二は飛行を開始、ドローンは甲高いローター音を響かせながら飛び立つ。ドローンは真っ直ぐ天井近くまで上がり、数秒間ホバリングしてから滑るように動き出し偵察飛行を開始した。

 うん、最初の頃に比べて随分と動きもスムーズになったな。


「取り敢えず……この近くには潜んでいないみたいだな。もう少し範囲を広げて、遠くまで飛ばすぞ」

「気を付けろよ」

「おう」


 裕二の操作に従い、ドローンは徐々に旋回半径を広げていく。今の所、対空罠やモンスターの襲撃は無さそうだな。

 そして暫く偵察飛行を続けていると、突然裕二が声を上げた。


「んんっ? おお、コレはコレは……」

「どうした?」

「新しいモンスターを見付けたっぽいぞ。このシルエットからすると……ヘビか?」

「ヘビ? それって、資料にあったシャープスネークのこと?」


 警戒役をしている柊さんに一言断りを入れてから、俺は飛行画面が映し出されている裕二の手元にあるタブレットを覗き込んだ。すると画面にはグラスリザードと同様に保護色を身に纏った、細長い何かがとぐろを巻いている姿が映し出されていた。……うん、このシルエットはヘビだな。多分資料にあった、シャープスネークで間違いないだろう。

 ただ……。


「……デカくないか?」

「デカいな。この感じだと……アオダイショウくらいか?」

「アオダイショウって……偶に公園とか庭先に出たってTVニュースになるアレか?」

「多分、それだ。このとぐろの感じだと、大きさは……1、2メートルくらいか? 巻き付かれたりしたら厄介だな」


 1、2メートルのヘビか……グラスリザードより厄介そうだな。何かのTVで言ってたと思うけど確か、ヘビに家畜が絞め殺されて丸呑みにされたって話を聞いたことがある。毒の有無は現時点では不明だけど、ダンジョン産のヘビだ。単純な巻き付きからの締め上げだけでも、相当危険そうだ。

 それにヘビ特有のウネウネとした動きも厄介だ、下手に接近せずに倒した方が安全だろうな。






 ヘビの発見以降、他に新種のモンスターがいないか注意深く観察を続けながら慎重に偵察飛行を続けた。結果、この階層にグラスリザードとヘビの2種が居ることが確認出来た。無論、長草の陰に別種のモンスターが隠れている可能性は残っているので、今まで以上に慎重な対応が必要である。 

 そして俺達は偵察飛行から戻ってきたドローンを回収し、撮影データの検証を始めた。


「……モンスターの潜伏分布を見ると、グラスリザードは兎も角、ヘビの方は回避出来ない事も無いかな?」

「グラスリザード並に動かないと仮定するのなら、回避は可能だな。しかし……」

「回避していたら安全に下の階には行けるでしょうけど、何時まで経ってもヘビとの戦闘経験を積むことが出来ないわね。これから先、全ての場面に於いてヘビと戦闘をせずにすむと言う保証が無い以上、最低1度は対峙して相手の力を見ておく必要があると私は思うわ」


 今回に限ってなら、ヘビとの戦闘を回避する事は可能だ。だが、これから先も回避し続けることは難しい。俺の“鑑定解析”も、相手を見ないことには使えないからな。ヘビが毒持ちか否かを確認する為にも、少なくとも1度は相対する必要はある。毒持ちなら万一の場合に備え、解毒手段を探さないといけないからな。

 俺は神妙な表情を浮かべ考える裕二と柊さんに、1つの方針を提案をする。


「俺も柊さんの意見に賛成かな? 戦うことしか選べない状況でヘビと戦うことになる前に、有利な状況を作れる今の内に1度当たっておいた方が良いと思う。さっきのドローン偵察のお陰で、この階層に潜むモンスターのだいたいの分布状況は把握してるしね。今なら離れた位置にいる、ヘビだけを相手に戦うことも出来るしさ」


 現在判明しているモンスターの分布位置を考慮すると、他のモンスターに介入されずに一匹のヘビとだけ戦うことは可能だ。相手の戦い方を知る為にも、互いにフォローしあい安全に戦える3対1の状況で戦うことは又とない好機といえる。

 それに相手はヘビだ。今まで俺達が相手にしてきたモンスターの中では、一番異質な戦闘スタイルを取るであろう相手である。上手く対処出来るかと聞かれ、出来るとは即答しにくい相手だ。不意遭遇戦になる前に、十分な心積もりをした上で挑みたい。


「確かに、そうだな。俺達は対人型や対獣型の経験はそれなりにあるけど、流石にヘビみたいな変則的な動きをする相手とは戦ったことないからな……苦戦する可能性は低くない。事と次第によっては複数のヘビを相手にする場合もある以上、相手を知る意味でも有利な状況下で一当たりしておいた方が良いだろうな」


 俺と柊さんの意見に、裕二も軽く頷きながら賛同してくれる。

 と言うわけで、戦闘経験を積む為にヘビと1度戦闘をしてみることになった。戦わないで済むのなら戦わないにこした事はないのだが、何れ戦うことになるのが分かっている相手について何も知らない状態というのは流石に拙いからな。無駄な戦いは避けた方が良いのだが、コレは必要な部類の戦いだ。

 

「じゃぁ、ココにいるヘビを相手にするのはどうかな?」

「いやいや、そこだとコッチにいるグラスリザードが戦闘中に乱入してくる可能性があるぞ。そいつより、コッチにいるコイツなんかどうだ? ポツンと離れてるから、少なくとも戦闘中に他のモンスターが介入してくる可能性は低い」

「でも広瀬君? そのヘビが居る位置だと、下の階層に降りる階段がある場所と反対方向に進むことになるから、移動時間のロスが多くならないかしら? それより、コノ位置にいるヘビを相手にするのはどうかしら? 多少遠回りには成るけど、一応階段がある方には進んでいるわ」


 ヘビと戦闘を行うことは決定事項であると言う共通認識は出来ているものの、どのヘビと戦うかで俺達の意見は三者三様に割れた。俺は戦闘後直ぐに撤収できる様に近場に居るヘビを推し、裕二は他のモンスターの介入を忌避し離れ単独潜伏しているヘビを、柊さんは出来るだけ時間のロスを廃する為に進行方向上にいるヘビを推している。

 それぞれが何故そのヘビと戦うことを推しているのか主張自体は理解出来るので、俺達は互いの顔色を見ながら、意見の擦り合わせを行う。結果……。

 

「初戦闘という事で、裕二の案を採用しよう。警戒を緩めるつもりは無いけど、乱入対策に気を割きすぎて不意打ちを喰らったら元も子も無いしな」

「そう、ね。時間のロスは惜しいけど、安全性と引き換えと言われたら……折れるしか無いわ」


 若干不本意気な表情を浮かべながら俺と柊さんが自分の出した意見を曲げ、安全第一の裕二の策にのることにした。この先の安全を確保する為に相手を知ろうと戦う以上、安全第一を念頭に考えるべきなんだろうな……。

 そしてドローンの収納などの準備を整え、俺達は目標のヘビが居る場所目指して歩き始めた。 






 長草を掻き分け進んだ先に、そいつはいた。光沢感のある新緑色の体でとぐろを巻き鎮座していたそれは、俺達の接近に気付き鎌首を上げる。口から真っ赤で長い舌を伸ばし出し、頭をユックリ左右に小さく振りながら俺達を品定めするように無機質な眼差しで見つめてきた。かなり警戒してるな……。

 俺は警戒するヘビから視線を逸らさずに、“鑑定解析”を使用する。


「大樹、鑑定結果はどうだ? コイツ、毒持ちか?」

「ちょっと待って……でた。大丈夫、コイツはどうやら毒持ちじゃ無いみたいだ」


 “鑑定解析”を使った結果、目の前に居るヘビはどうやら毒持ちでは無いようだ。

 ただし……。


「でも気を付けて。コイツ、“鋭鱗化(シャープスケール)”ってスキルを持ってる。触れたら鋭利化した鱗で切られるし、体表にある全部の鱗が対象みたいだから巻き付かれでもしたらヤスリ掛けされたみたいに削られるかもしれない」

「おいおい。毒持ちでこそ無いけど、物騒なヘビだな」

「救いとしては、“鋭鱗化”では鱗の強度自体が上がる訳じゃ無いみたい」


 全身に鋼鉄の刃物を身に纏っている……と言うわけでは無いようだ。鋭利化した鱗は言ってみると、切り立った断面を持つ紙だろうか? コピー用紙などの紙自体は然程強度は無いが、角を立てて滑らせれば指先だって切れる、みたいな感じだろう?まぁこのヘビは30階層クラスにいるモンスターだ、鱗の強度自体コピー用紙とは比べものにならないんだけどな。

 なので控え目に言っても、シャープスネークは全身に刃物を仕込んだヘビだ。これは迂闊に触れられないな。


「だけどまぁ……少なくとも徒手格闘戦はオススメ出来ないよ」

「分かってる。誰が好き好んで、剣山みたいなヤツに手を伸ばすんだって。コイツは武器か魔法で攻撃するのが無難だろう」

「場所が場所だから、使える魔法は限られるけどね。それと武器も下手な武器だと、逆に鱗に削られて武器破壊をされるかもしれないわ。それこそ武器攻撃をするなら、棍棒みたいな打撃武器による撲殺がよさそうよ」

「今度使い捨て前提で、鉄パイプとかスコップでも用意しておこうかな……」


 面倒なスキルを持っているせいで、中々に対処が厄介だ。俺達の持つ武器ならレベルアップ強化の恩恵的に大丈夫だと思うが、刃毀れを起こす可能性が無いわけでは無い。武器攻撃を試すにしても、先ずはメイン武装では無く壊れても惜しくないもので試してからにした方が良いだろう。

 なので今回は、魔法で対処した方が良いだろうな。


「……柊さん」

「何、九重君?」

「今回は柊さんに任せても良いかな? 大丈夫だとは思うけど、武器が破損する可能性がある以上、今回は魔法で対処した方が良いと思うから」

「……良いわよ。じゃぁ二人は、バックアップについて」

「「了解」」


 と言うわけで、シャープスネークとの初戦闘は、柊さんがメインを担当し、俺と裕二が周辺警戒と、戦闘支援に回ることになった。

 そしてメインを任せられた柊さんは一歩前に出て、若干緊張した面持ちを浮かべながらシャープスネークと対峙する。






 シャープスネークは前に出た柊さんを敵と認識したらしく、とぐろを解き細かく左右に揺れていた体をピタリと止め戦闘体勢をとる。全身をクネらせながら間合いを計るように柊さんに近付いてき、一触即発といった雰囲気が漂い始めた。

 そして柊さんとシャープスネークの間がある一定の距離を割った瞬間、シャープスネークは最小限の予備動作で柊さん目掛けて飛び掛かる。

 

「シャァッ!」

「!! ……!?」


 飛び掛かるシャープスネーク動きは速かったものの、軌道自体は直線的なモノで柊さんは右足を軸に体を半回転させ余裕を持って回避した。だが、シャープスネークの攻撃は終わっておらず、柊さんの脇を無様に通過すると思った尻尾がしなり鞭のように柊さんを襲う。

 柊さんはすんでの所でシャープスネークの尻尾の動きに気付き、慌ててバックステップで飛び退き攻撃を回避した。


「……」

「シャァ……」


 柊さんは目を細め、苛立たしげな眼差しでシャープスネークを睨み付ける。どうやら不意を突かれ、奇襲を許した自分が腹立たしかったらしい。 

 そして……。


「エアーカッター!!」

「シャッ!?」


 シャープスネークが再び柊さんに飛び掛かろうと体を沈めた瞬間、柊さんは切断能力を有する風魔法を放った。風魔法は一直線に飛翔し、跳躍の予備動作を取った事で硬直し回避もままならないシャープスネークを襲う。

 結果……。


「シャァッ!? シャァッ!?」


 胴体の半ばを切り裂かれ分断、傷口から己の血を撒き散らしながら苦しげにのたうち回っていた。普通のモンスターなら、体を分断されれば少し待てば動かなくなるのだが、シャープスネークは中々息絶える気配が無い。胴体を分断されてから1分ほど経っても、まだ活きよくのたうち回っていた。

 恐らく頭を潰さない限り、即死させることが出来ないのだろう。


「柊さん……」

「……言わなくて良いわよ九重君、分かってるわ」


 そう言うと、柊さんは再度風魔法を発動しシャープスネークにトドメを刺した。

 何か、微妙に後味が悪いな。
















ドローン偵察は順調、遭遇前に新しいモンスターを発見しました。



新年あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 自分が飼っているコーンスネークがだいたい1.2mぐらいなのでトカゲと比べて脅威を感じなかったかな。毒持ちで数が多い場合は小さい方が厄介だと思う。
[気になる点] アオダイショウクラスの蛇だと日本の蛇としては最大級ですがそのくらいの蛇だと補食できる獲物のサイズは大きくても両手に収まりきるくらいのネズミがやっと。それより大きな動物だとまず勝てないの…
[一言] 2020年 01月08日 07時15分 蛇の鱗は一枚だけですよ! だから蛇の抜け殻は形がそのままの状態で残るんです。 ⇒私の勘違いでした。  お騒がせしました。
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