5段階のちょっと先
哲也がふと目を覚ますと、朝の5時頃だった。冬の朝は暗く寒いが、隣にいる人のおかげで体も心も暖かかった。
スースーと寝息を立てている皐月の髪をなでながら、幸福感に包まれていると、皐月が目を覚ました。
「あ、起こしちゃった?」
「・・・哲也さん?何してるの?」
「ちょっとね。皐月さん、大丈夫だった?」
哲也の言葉の意味に気付き、先程までのことを思い出したのか、皐月は赤くなった。
「・・・大丈夫じゃない。体、あちこち痛い・・・」
「すみません、調子に乗りました。寒くない?もっとこっちおいで」
哲也にくっつくと、触れる素肌が心地よかった。
「・・・暖かい・・・」
「皐月さん、お正月は実家帰るの?」
「え、うん、そのつもり」
「じゃ、俺ついていっていい?」
「ええ!?」
いきなり言われ、皐月は驚く。ついていくとはどういうことだろう。
「だって挨拶しなくちゃ。お嬢さんを僕にくださいって」
「・・・そっか」
「そうだよ。ちゃんと言わないと」
皐月は婚姻届を哲也に渡すことまでしか考えていなかったが、実際に結婚するとなると、しなければならないことがたくさんある。哲也はそこまで考えてくれていたらしい。
「・・・うちのお父さん、バリバリの安定志向の堅物だから、哲也さんちょっと大変かも」
哲也のように収入が不安定な人が相手では、反対されるかもしれない。皐月は父の顔を思い浮かべ、心配になってきた。
「それはそれは。傾向と対策教えてね、皐月さん」
「傾向と対策って・・・人の親を期末試験のように」
「俺にとっては似たようなものだよ」
軽い調子で言う哲也を見ていると、何とかなるのではないかと思う。いや、何とかしよう。自分が決めた人と結ばれるために。
「私も行きたいな」
「ん?」
「哲也さんのご実家」
「うちは近いからね。すぐ行けるよ。皐月さん、すぐ気に入られそう」
家族のことを想像しているのか、優しい笑顔を浮かべている。
そんな哲也を見て、皐月は少し、甘えたくなった。
「・・・哲也さん」
「何?」
「皐月って呼んで」
さっきみたいに。小さい声で皐月が付け足すと、哲也の表情が固まる。
「・・・・・・あーもう!あまり可愛いこと言うと、朝から止まらないでしょうが!」
「え、ちょっと、どういう・・・」
「お望み通り、いっぱい呼んであげるよ・・・皐月」
2人の甘やかな時間は、まだまだ続くのだった。