崩れ去った日常
---佐々木さんの家の場所を聞いた僕らは
さっそく向かうことにした
佐々木さんの家は、六角池広場から
歩いて10分もかからないところにあった
「ここが、佐々木さんの家か…」
佐々木さんの家は
小さな木造の一軒家だった
築50年くらいだろうか
ところどころ傷があったり
台風が来れば
何枚か飛んでしまいそうな瓦屋根
庭が少しあるくらいで
そんなに広くない敷地
垣根に囲まれて
中の様子が見えたり見えなかったり
僕は流島くんに小さく話しかけた
「流島くん、君の"眼"で中の様子を
ちょっと伺えないかな?」
(流島くんは、"透視能力"をもっている
中の様子を少し見てもらうのにうってつけの能力だ)
流島くんがヒソヒソ声で返事する
「ああ、わかってるぜ、まかせてくれよ」
流島くんが鋭い目つきで
佐々木さんの家の様子を"見る"
「んー、誰もいないみたいだぜ」
「なあ、伊藤よ、ミケの特徴とかあるかよ?」
伊藤くんが返事する
「ああ、ミケはね、赤い鼻をしてるんだ、あとはね、灰色と黒のシマシマ模様の猫だよ」
「結構個性的な猫だから
見つけたらすぐわかると思うよ」
流島くんが頷きながら返事する
「なるほどねぇ」
「おい、おめぇらよ、残念ながら
多分ミケはここにはいねぇよ
おじいさんもいねぇみたいだぜ
おれには"わかる"」
伊藤くんが不思議そうに返事する
「えっ、まだ何もしてないのに
わかるのかい?」
「ちょっと、インターホンならして
見ようよ」
伊藤くんは流島くんの能力を
知らないので当然そうなる
僕はとりあえず返事した
「うん、そうしよう」
---ピンポーン
伊藤くんがインターホンを
しっかりと押して鳴らす
家の中の方にちゃんと
響いてる音が少し聞こえた
しかし、誰もでてこない
「やっぱりいないのかなぁ」
伊藤くんが残念そうにつぶやく
僕は提案した
「垣根の隙間から中の様子を、見てみよう
それでも、なにも見つからないなら
そこのポストに伊藤くんの番号と、ミケの事を書いて入れておくのはどうかな?」
伊藤くんが頷きながら返事した
「あ!なるほど!それがいいね!」
太一くんと流島くんも頷いて
僕の提案に賛成している様子だ
伊藤くんはメモを書いてポストに入れた
「これで、何か手がかりがあればいいけど」
太一くんが返事する
「き、きっと見つかるよ
だ、大丈夫さ、ミケは元気にどこかを
歩いているんだよ」
太一くんは"優しい"
とてもいいやつだ
伊藤くんと太一くんは帰る方向が同じなので
ここで、お別れする事にした
僕は帰り際に伊藤くんに声をかけた
「僕は時間があるとき、またこの辺りに来てみるよ、何かわかるかもしれない」
伊藤くんは、笑顔でお礼を言っている
そして、その場で僕らはお別れして解散した
僕と流島くんは帰る方向が途中まで同じだった
流島くんが話しかけてきた
「田中よ、ちょっと2人でもう一度
あの家の様子を見にいこうぜ」
僕は驚いて返事した
「え?なんだって?」
流島くんが続ける
「家の中を"見た"んだが」
「おめぇよ、食べかけの朝ご飯が置いてあって、新聞が開いて置かれたままの机
コップにはまだ飲み物が残ってた
極め付けは、"靴"だぜ」
僕は、流島くんをの目を見ながら
返事した
「靴?」
流島くんが話す
「佐々木さんは1人暮らしなんだろ?
でもよ、玄関に置いてる靴がよ
つま先が中に向かって置かれたままでよ
綺麗に並んでなかったんだぜ」
「で、玄関に真新しい2つの足跡があったんだぜ」
僕は、少し考えて返事をした
「流島くん、まさかそれって」
流島くんがはっきりと返事する
「ああ、間違いないぜ
今日の朝、来客があったんだ
で、その客人を家に招き入れたんだぜ
だから佐々木さんのものだと思う靴が
つま先が中に向かって置かれてて
足跡が2つのあったんだぜ」
「そして、その朝ご飯が置かれたまま
本人がいないんだぜ」
僕は、流島くんに恐る恐る言った
「つまり、流島くん、それって…
佐々木さんはその時に何かあったって
ことかい?」
流島くんの言いたいことがわかった
佐々木さんの靴が中を向いたまま
放置されているということは
つまり、佐々木さんは家の中にいるはず
しかし、姿がない
そして、朝ご飯が放置されたままになっていて、玄関には2つ分の足跡
これが示すものは
おそらく
佐々木さんが朝ご飯を食べていると
インターホンが鳴り
来客だと思い玄関の靴を履いて
ドアをあける
その客人招いて
2人で家の中に入る
顔見知りなのだろうか
抵抗なく中にあげだと思われる
そして、招かれた客人だけが家を出て行く
なのに、佐々木さんの姿が
家に"ない"
流島くんが大きく頷く
「ああ、これは何かあるぜ
まだ、しっかり"見れて"ないが」
「田中、おめぇとなら
何かあっても心強いぜ、少し調べてみようぜ」
僕は、頷いて
2人で佐々木さんの家に向かった
あたりは少し薄暗くなっていた
流島くんが言う
「さすがの、俺でもよ
"暗視機能"はついてねぇぜ」
「まだ明るいうちにケリをつけよう」
そして、僕と流島くんは
佐々木さんの家の前に着いた
「もう一度、覗くぜ」
流島くんが中を"見る"
「家の中は電気はついたままだな
庭は手入れされているな」
「もう少し中に入って見てみないと
わかりずらいぜ」
その時だった
「ミャー」
僕と流島くんの死角あたりから
猫の鳴き声がする
先に気づいた僕は
鳴き声のした方を見る
隣の家の塀あたりから聞こえた
流島くんも気づいた様子だ
「田中よ、猫の鳴き声がしたよな」
流島くんが声のした方を"見る"
「おい、田中よ
ビンゴだぜ」
僕は驚いた
「なんだって!?」
流島くんが冷静にこちらに言う
「隣の家の庭にミケはいるぜ
まさかな、隣の家にいるとは
ん?何か掘ってるのか?」
僕はなんとなくミケを呼んでみた
「ミケー、そこにいるのかい?」
すると、ヒョイと
塀の上に猫が現れた
「赤い鼻に、シマシマ!
間違いない!ミケだ!」
これで、僕は伊藤くんに嬉しいお知らせができる、とても嬉しい気持ちになった
ミケがこちらに早足でくる
何かをくわえているようだ
「ミケ、人懐こいのかな、こっちにおいでー
なにか、咥えているのかな?」
ミケが目の前にきて
薄暗いなか
僕は街灯に照らされた"それ"を
ハッキリと自分の眼で見たんだ
「こっ、これは!!!」
僕は自分の眼を疑った
ミケの咥えていた"それ"が地面に置かれた
「な、流島くんっ!!こ、これは!
"人間の指" だっ!!!」
流島くんが汗ばみながら返事した
「ああ、間違いないぜ
"筋肉も骨も本物だ"
見て確認したぜっ!」
流島くんが隣の家の庭の方を見て言った
「田中よ、気合いれろよ、
こいつはヤバイぜ」
僕は、この時
現実感をなくしそうになりつつも
目の前に
人間の指が
確かに置かれている事実を実感していた
つづく




