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異世界で神の化身は至極最高に楽しむ。  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫


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25/25

25 暴れる化身。




 涙が頬をつたう。私はそれを袖で拭った。


 私の命は、長くはない。


 つまり今日明日、寿命が尽きるわけではないのだろう。

 だったら行動あるのみだ。

 ルヴィンスの居場所に、見当はついている。

 王都の貴族かもしれないのだ。城に行って、偽者と勇者をぶっ飛ばしたあとに、死にものぐるいで見付け出して、全魔力を注いでも救ってやる。


「起きろ!!! 野郎ども!!!」


 私は腹の底から声を高々に轟かせた。

 イサークを始め、ダレン達が飛び起きる。


「今から王都に行く!! キリア、送ってくれない?」


 キリアがだめなら、大型のドラゴンを召喚するまでだが、同じく私の声で目覚めたキリアは頷いてくれた。


「王都か。幼い頃に行ったきりだ。行こう」


 乗り気で、私達が乗りやすいように伏せた。それでも巨大なドラゴンなのだ。きっとあっという間に王都につけるだろう。


「アイナ様」

「神出鬼没にもほどがあるな、ラティス!」


 ひょっこりと顔を出してきたラティスに、素直に驚いた。


「行く前にちょっと鑑定させてください」


 そう言って、水晶玉を差し出してきたから首を傾げる。

 透明な水晶玉だけれど、ラティスの手に収まる小ささ。


「これは?」

「冒険者の判定に使う水晶玉の、小さい版ってところです。些細なことでランクアップやレベルアップする可能性もあるので、私は持ち歩いているのですよ」

「レベルアップ……してるといいけれど」


 例の水晶玉と同じか。期待せずに、手を添えた。

 金色に光る。その水晶玉が映すのはーーーー2という数字だった。


「え、嘘。レベルアップしてる!? やった!!」

「すごいですね、アイナ様! 一度の戦闘でレベルアップしましたね!」

「勇者と一緒!! これで安心してぶん殴れる!!!」


 ラティスがキラキラした眼差しを向けてくるけれど、気にしない。

 両腕を突き上げて、大いに喜び、アメーにピースサインを送る。


「ま、待って! 同じゴールドランクのレベル2でも、きっと経験の差が大きいと思われますわ!」

「大丈夫、啖呵切って殴るだけだから!」

「アイナ様っ!」


 例えるなら、レベル2に成り立てで経験値が全く溜まっていない私に対して、レベル3に届きそうなほどの経験値が溜まっている勇者というところだろう。

 でも同じレベルなら殴った方が勝ちじゃない?

 崩れ落ちそうなアメーも、キリアの背に乗ってもらう。

 ちゃっかり、ラティスも乗った。どうせ私が何をするかを見たいだけなのだろう。

 先ずは化身の偽者。それから勇者だ。


「じゃあね、グラディさん! アリーさん! また今度会いましょう!」


 ちゃんと二人に挨拶をして、旅立つ。

 イサーク団達に風の魔法を行使してもらって、快適な空の旅にしてもらった。キリアの羽ばたき一つで、飛ばされかねないから、風の魔法で相殺。

 誰も飛ばされることなく、王都に着いた。

 王都は千年のドラゴンに騒然としているだろうけれど、城に飛び移れるように近付いてもらう。

 丘に聳えていた城に、キリアは着地。

 キリアの頭がバルコニーに突っ込んでくれたから、滑り落ちて降り立つ。

 たちまち、騎士達が取り囲んだ。


「誰に刃を向けている? アメティス様だぞ」


 剣先を突き付ける騎士達を下がらせたのは、アントンさん。


「今すぐに、神の化身と名乗る女性を呼び出してください」


 飛行中、緊張でお腹を押さえていたのに、アメーは毅然とした態度で告げた。


「……」


 バルコニーには何もない。それに城は少し白っぽい色で、夢の中とは違う形に思えた。もしかして、王都にルヴィンスがいるのは見当違い?

 不安が過ぎりつつも、アメーの後ろを歩いた。

 天井はそんなに高くない。足元の絨毯は青だった。


「私を誰だと思っているの!? 神の化身よ!!」


 やっぱり夢とは違う玉座の間に、偽者は現れる。

 いたって普通の女性だった。

 髪は茶色だけれど、豪華な赤いドレスを身に纏っている。

 十分に手厚くもてなされているようだ。


「何事だ。アントン、ラティス……そして、アメティス」


 玉座に座っているのが当たり前だけれど、王様か。

 白い髭が少しある男性は、アメティスを責める眼差しを向ける。

 家出娘を見る目は厳しい。

 俯いたアメーの前に立って、私は王様を一瞥した。


「神の化身。そう名乗る根拠はなんですか?」

「あなたに何がわかるの? 何様のつもり? 黙りなさい」


 私は偽者を見据える。先ずは偽者からだ。


「そっちこそ、黙れ!」

「……!?」


 偽者は口を縫われたように開かなくなったことに大慌てした。


「あなたはこれを飲んだ。そうでしょう? 偽者の化身さん」


 私は首からぶら下げた小瓶を見せる。


「これは私の魔力だ。バカ者が」


 そう吐き捨てるように、声を投げた。


「残念だけど時間が惜しい。省略させてもらうわ。あなたは他人の魔力を所持出来る特殊能力を持っている、そうでしょう? 白状しろ」


 ビッと指をさせば、偽者は口を開く。


「そうよ!? 神様からもらった特殊能力を持っているわ! これで最高級の魔力させ手に入れれば、あとは人生が思い通りにいく!! だから化身を名乗ったのよ!! ……はっ!?」


 白状させるのも、意のままか。神級の魔力すごい。

 感心しつつ、白状してしまった蒼白の偽者を眺めた。


「魔力を返せ」


 そう手を翳せば、金箔の光が偽者から私に移動する。

 うん、魔力だ。


「……捕らえよ」


 王様の命令で、たちまち偽者は捕縛される。


「誠に申し訳ありません。神の化身様。偽者と見破れず……」

「謝罪は結構。もてなしてもらった挙句にここで正体を暴くと決めたのは私です。それともう一つ、あるんですけど……勇者はいます?」


 王様が傅くと周囲にいる人間達も傅いた。家臣だろう。

 偽者は片付いた。次は勇者の番と呼んだ。


「えっと……ここにいます」


 意外にも、傅いた中にいた。

 挙手したのは、いたって普通の男性だ。

 村人と言われてもそう思えるほど平凡な顔立ち。黒髪と茶色の瞳。

 貴族のように、装飾のあるコートを身に纏っていた。


「そう」


 私は前に出るように、ちょいちょいっと指で招く。


「なんでしょう、化身様」


 王様と私の間に移動しては傅く勇者は、少し鼻の下が伸びている。

 私はにっこりと笑いかけてやった。

 そうすれば、頬を紅潮させる。

 あ、こいつ、チョロいな。

 そう思った。


「何故、アメティス様と結婚をしたいと言い出したのですか?」


 決めつけるには早すぎると、とりあえず尋ねた。


「それはお姫様と結婚したいからです!」


 もう殴ってもいい?

 むしろ蹴っ飛ばしていい?

 この勇者、お姫様だから結婚したいと言ったぞ。


「しかし、アメティス様はあなたを好いてもいないのですが、それでも結婚したいのですか?」

「えっ! 陛下からお許しはもらってます!」

「いやいや、アメティスの気持ちを考えろって言ってんだよ。ダメ勇者」


 ついつい吐き捨てた。

 勇者は「ダメ勇者!?」とショックを受ける。


「アメティス……これはどういうことだ?」


 王様が口を開く。アメティスに原因を問う。


「わ、わたくしは……!」

「言いなよ、アメー」

「……はいっ! わたくしは、以前にも言ったように、勇者様のことを愛していないのです! 愛のない結婚は出来ません!」

「愛する努力をしろと、私は言ったはずだ」

「っ!」


 王様らしい威圧感が、アメーを押し潰す。


「王様。悪いけれど、この勇者もアメティスを愛していません。お姫様だから望んでいるだけに思います。私は創造の神シヴァール様と美と愛の女神フレーア様の娘。愛のない結婚を認めるわけにはいきませんね」


 もう一度アメーの前に立ちはだかって、言い放つ。


「しかし、化身様。意味のある結婚なのです。王家の人間として、アメティスは国のことも考えて、結婚をせねばなりません」

「意味があるのは、国だけでしょうが! つまり、このゴールドランクのレベル2の勇者を野放しに出来ないから、アメティスという首輪をつけておきたい! そういうことでしょう!? 愛のない結婚は認めない!! 娘に愛があるなら、結婚を白紙に戻してもらいましょうか!?」


 声を張って気付く。

 そうか。だからアメーは、勇者を超える冒険者になろうとしていたのだろう。他に出来ることが見付からなかったから、勇者を超える冒険者になることを決意した。


「女の子一人の気持ちを考えないで、何が国の王だ! 何が勇者だ! 神の化身である私がその結婚を許さない!!」


 王様は考え込むように額を押さえて俯く。娘に愛がないとは言わせない。

 それこそ、王様をぶん殴る。


「じゃあ!!」


 そこで口を開いたのは、ダメ勇者だった。


「化身様がオレと結婚をしてください!!」

「……はっ?」


 頬を紅潮させて、ダメ勇者は結婚を申し込んだ。

 冷めた目に、気付かない。

 そもそも魔王を倒したほどの実力を持つ自分を、国が姫を犠牲にしてまで繋ぎ止めようとしたことを理解していない様子だ。

 頭の方はだめのか。だからダメ勇者なのだ。


「たった今、愛のない結婚は許さないと」

「あなたを愛します!! 愛せる気がする!! オレはゴールドランクのレベル2の勇者です!! 魔王ルヴィンスを倒して封印し、この国を救った英雄なんですよ!?」

「だからーーーー」


 自分の自慢をするダメ勇者の胸ぐらを掴み、私は頭突きを額に食らわせてやった。もちろん、魔力で自分の頭を守ったから、魔力付きの頭突き。


「愛のない結婚は許さない!!! てか今なんて言った!?」


 よろける勇者を見て、誰もが驚愕とした様子だ。

 ゴールドランクのレベル2の勇者に大ダメージを食らわせたのだから、驚くのも無理ないだろう。


「えっ。オレはゴールドランクのレベル2……」

「私もゴールドランクのレベル2だ、ボケ!!!」


 もう一度頭突きをすれば、ダメ勇者はひっくり返った。

 そんな勇者の胸ぐらを掴み、揺さぶる。


「封印した魔王の名前はなんだ!!?」

「いたっ! えっ! ルヴィンス、魔王ルヴィンス」

「っ!!」


 やっぱり聞き間違いじゃなかった。


「ルヴィンスの命が尽きるのはどういうことだ!?」

「えっ!?」


 ダメ勇者は、意味がわからないと瞠目している。

 封印した。つまり封印の中で、弱まっているのだろうか。

 そりゃそうだ。封印されたのは三年も前のこと。今まで生きながらえたことが驚きだ。


「王様! アメーは愛する人と結婚をする。政略結婚なんてさせてみなさい。この国は魔王に代わって、私が滅ぼしてやる!」

「っ!」


 ダメ勇者をほっぽって、私は王様に強く釘を刺しておいた。


「そんなっ! 化身様とあろうお方が、国を滅ぼすなんて!」


 家臣の誰かが言う。

 私はにやりと不敵に笑ったーーーー。




 ◆◇◆




 キリアで天空を飛ぶ。

 同じく乗るのは、イサーク団。そしてダレン、アメー、アントンさんだ。

 ついてこなくてもいいと言ったのに、おともすると言ってキリアに飛び乗った。

 シンメトリーの灰色の城は、不気味だ。夢で見た時より、古びていた。

 魔物が飛び、徘徊していたから、討伐をイサーク団に任せておく。

 私は夢で立った花壇のあるバルコニーに降り立つ。

 花はとうに枯れている。

 そこからバカみたいに高い天井の廊下を歩く。

 記憶を頼りに、玉座の間を探した。

 外ではキリアが暴れる音が響く。爆音も聞こえた。

 そして、私は辿り着く。


 ーーーールヴィンスを見付けた。


 玉座に凭れたルヴィンスは、鎖に囚われている。

 いつもスカーフで隠されていた首元が露わになっていた。首輪のような模様がしっかり刻まれていた。そこから鎖が伸びて、四方の壁に磔にされている。

 こんなにも騒がしいのに、ルヴィンスは起きない。

 白金の髪は、結ばれていない。サファイアブルーの瞳は開かない。

 ツノがあった。頭を包み込む形の羊ような黒いツノ。唇は黒い口紅を塗っているようだ。これが彼の見られたくない姿だったのだろう。

 私に知られたくなかった姿。

 そっと触れてみた。魔力がほんの僅かしか感じない。


「起きる時間よ」


 私は小瓶の魔力をぐびっと口に含み、それからルヴィンスと唇を重ね、こじ開けては注いだ。

 封印の魔法もほどく。鎖はパリーンとガラスが砕けるようにして消えた。

 サファイアブルーの瞳が、膝の上に乗った私を映す。


「おはよう、ルヴィンス」

「アイナ……? 何故……!」

「何故? 愛する人を救わない選択なんてするかしら?」


 私は笑った。


「私は人間の敵の魔王なんですよ!? これではあなたが悪い神の化身になってしまいます!」

「あなたはただ、親の言う通りに魔王になっただけなんでしょう? 本当は外に憧れている籠の中の魔王様。そんなあなたを連れ出してあげるわ!」


 膝の上から降りて、よろめくルヴィンスの手を引く。


「一緒にこの世界を旅しましょう! もっと美しい景色を見付けましょう?」

「あなたという人は……なんて化身だ」


 ルヴィンスが涙ぐむ。

 私はにやりと不敵に笑って見せた。


「私は自分らしく素直に堂々と自由に傍若無人に、至極最高に楽しむために降臨した化身よ。さぁ! 楽しみましょう!」


 これでいいのでしょう?

 お父様、お母様。




end

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