スキンシップ
それから空間を出た俺達は教室に戻っていた。
『用事があるので、今回は自分の部屋で寝てください』
サラはそう言い残して教室から出ていった。
「リュウキと遊びたいなあ……」
スカーが横目で俺を見ている。
歩み寄ってくると。
「指ちょうだい」
妙な事を注文してきた。
「指?」
人差し指を差し出すと咥えてちゅぱちゅぱ舐める。
「な、なにして」
「スキンシップはダメ?」
口をすぼめて上目遣いで見てくるスカー。
俺はそのスキンシップを認めた。
「リュウキ……」
「なんだ?」
「なんでもない」
しばらく指を含んだスカーの口が離れる。
唾液まみれでベトベトになった指の腹はシワシワで。
「新しい友達と遊ばなきゃいけないから……」
女の子と一緒にスカーは出ていく。
ちょっとだけ寂しそうに俺を見ていた。
『まあ、俺様と遊ぶしかねえな?』
ガロードの手が肩に乗る。
悪くはない。
「そうするよ」
ガロードについていきながら学園を出て歩く。
「酒と女を揃えてきた」
知ってる、観察した時に気づいたからな。
「女は大変でな」
ガロードの女の子情報を聞きながら、小さな階段を降りる。
石階段の先に木の扉。
そこをくぐると色んな人がいた。
女、男、様々な服の人が同じことに興じている。
大きな卓を囲んでカードゲームをしているようだった。
「すまね、遅れたわ」
ガロードに連れられて女の子が居る卓に向かう。
「この子はミナ、こっちはオミだ」
ガロードの紹介に俺は頷く。
「こいつはリュウキな」
「よろしくー」
適当に会釈して席に座った俺は聞き手に回った。
「とりあえずカードゲーム、負けた奴が酒を流し込むんだ」
ミナとオミは文句ないらしい。
「俺もそれでいい」
それからカードを切るようにシャッフル。
真ん中にカードの束を置いたガロードが五枚取ると。
二人の女の子も取り始めて、最後に俺も五枚。
『ルール説明する、基本ルールは一緒』
詳しい説明を聞いてみると完全にポーカーだった。
やっぱり共通のゲームは生まれるわけだな。
このトランプも一緒だ。
「一度だけカードの交換をして、競う。使ったカードは横に置いてくれ」
つまりジョーカーは一度しか誰かの手に渡らない訳か。
話しながら何戦かしてみた。
最初は三のワンペアに負けた。
四と六のツーペアにも負けた。
二と五のツーペア。スリーカードで何とか勝利。
一度の交換でフルハウスなんて簡単にできねえ。
役なしを連発した俺は既に結構な酒を飲まされていた。
「……やくなし」
ぼーっとする。
「三のフォーカード」
ミナが奇跡のような役を組み上げた。
いや、既に二枚の三を使ってるんじゃ……飲みすぎておかしくなっちまったか。
「リュウキ、飲め」
「まじかよ」
大して勝ててない俺は飲んだ経験が少ないというのに飲まされた。
それからしばらくしてみんなに酔いが回る。
クラスが違うオミから対抗戦について聞かれた。
「俺とガロードだよ」
「へえー」
「何とかやってくつもりさ」
「こっちも情報共有持ちが居るからねー、出ないけど勝てるよ」
言葉を流して数時間。耐えきれなかった俺は席を立った。
「もう帰る、飲めない」
「ああ? あぁ」
「おつー」
「かれー」
歪む視界。
ドアを開けて、おぼつかない足で階段を上がる。
つまずきそう。
フラフラ外を歩いて学園に入って部屋に戻ってきて。
鍵をカチャカチャ開けて。
中に入るとスカーが居たんだ。
「リュウキー」
いつもより馴れ馴れしい?
カロンは居ないみたいだが、居たら酒臭いと言う気がする。
「飲んできたの?」
ぐにゃぐにゃでスカーの表情が分からない。
「そうだ」
「早く寝た方がいいよ」
スカーは二人三脚するように肩を持ってくれた。
おかげでしっかり安定して歩ける。
俺は成されるがままにベッドへ寝転がった。
もう辛い。
仰向けで伸びているとスカーが乗ってきて。
「口開けて」
言われて開けるとスカーの唇から大粒の水滴が入る。
不思議な舌触りの液体。
「酔いが覚めそうなジュースだよ」
「……」
「おねだりして?」
「欲しい」
口移しで処方してもらって目を閉じる。
「おやすみ」
目を閉じるとズボンのベルトが外れ、するする下ろされた。
酒をズボンにこぼしてしまって、臭いが鼻につく。
着替えさせてくれるのは助かるかも。
『はあ、はあ……』