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心に吹く風  作者: イレ
11/14

[おはようございます。」


良かった。今日もちゃんと意識がある。


アイツがスイッチを入れるのを忘れて、


そのまま死の状態で葬り去られるのではないかと時々、


「おやすみなさい」


の後が怖い。ちょっとアイツの顔が昨日より老けて見えるのは気のせいだだろう。


「ちょっと出かけてくる。」


どうやら草原の記憶は消えていないらしい。


頭であの躍動感溢れる木々がインプットされている。


「行ってらっしゃい。今日は、早く帰ってきて下さい。」


ゆっくりと歩いていく俺にアイツは、大きな声で言った。


道のりがしっかり刻まれている。目的は無いがあの場所へ向かう。


だって秘密基地的存在なのだから。無意識にも行きたくなるものだ。


草木が包み込んで、暖かく緑がとても優しい。この場所が大好きだ。


「よいしょっ。」


また言ってしまった。草に座る。


「どうしてそんなに笑っているの?」


突然の声に驚く。そこには一匹の兎がいた。そして隣にきてちょこんと座てきた。


とてもなつっこい奴だと思った。


「どうしてって、何か嬉しいから。君もよくこの場所に?」


この場所を知ってる奴がいるなんて親近感があって嬉しい。


「フフフ。変な人。」


兎は無表情だったが少し悲しんでいる様にも見えた。


それにしても草原がとても似合っている。


「君の名前は?」


太陽の光を反射するのではなく吸収して溜込みその光を外に放出する様な、


白く美しい毛をまとっている兎に質問した。


「私の名前はアミン。」


「アミンか。初めまして。」


二秒くらいの間を開けて、アミンはまた口を開いく。


「そう言えばあなたの名前もまだ知らなかっわ。教えて。」


その口調の優しさは、まるでこの辺り一面の木々の様だ。


「名前…。名前…。」


いくら考えても答えがでない。それは、どんな難問よりもずっとずっと難しかった。


「無いんだ。俺には名前が…。」


初めっから無いものだから答えが有るはずもない。アミンが少し軽蔑したのではないかと


思った。恐る恐る顔を見るが、その表情はとても穏やかなものだったので安心した。


名前が無いことは当たり前な事だと思っていた。名前がなくったて困ることも全くなく、


その意味さえも気付かないでいた。 それから30分後、家に帰った。


「お帰りなさい。お誕生日おめでとうございます。」


ちょうど1年前と同じように、飾りもご馳走も並んでいる。


1年はこんなにも速いものだとは思いもよらなかった。


それまでの記憶が全くないからだ。そんなことどうでもよかった。


どうせ考えても答えが出せない問題だったから。


「2才の誕生日おめでとうございます。今年は急だったのでプレゼントを


準備出来ませんでした。ごめんなさい。何か欲しいものはありますか。


今度買ってあげますよ。」


昨日までの俺はいや、さっきまでの俺は欲しいものなんてなかった。だが今は、ある。


「う〜ん。……名前が欲しい。」


どんな高価な宝石よりも、玩具よりも、お金よりも今一番欲しがった。


「名前ですか…。」


彼は、床を見つめて溜め息を吐くように呟いた。


それから、しばらく沈黙の2文字が2人を包んだ。


「お前の名前無かったですね。そうですね。……ライ。お前の名前。今日からライです。


 そう読んでもいいかですか?」


彼は、プレゼントを恐る恐る俺に差し出した。


「ライ…?。ライ。うん。俺、今日からライ。」


嬉しかった。心の底から、名前をつけてもらったことが。端から見れば、


たいしたことじゃないだろうけど。そして彼は、「星を見てきます。」と


家の外の暗闇へと行ってしまった。名前…。そう言えば俺も知らなかったや、アイツの名前。


彼にはとても感謝している。俺を造ってくれたり世話してくれたり。


でも、彼との生活はとても居心地が悪かった。どこか引っかかるモヤモヤしたものがあった。


友達でも、親子でも、兄弟でもない。他人と紙一重な家族。 彼の部屋へ入った。


ノートにのnameの所にでも、書いてかるかもしれない。


重大な任務の様に思えるが、俺を動かしているのはただ彼の名前を知りたいという、


一握りの興味だった。


彼の部屋は、別の空間で初めてみるものばかりだった。茶褐色の椅子に近づき机の上の、


ノートはなかったので本を手に取る。ぶ厚いボロボロの本。何度めくられて、きたのだろう。


だが名前なか有るはずもなく、本そのものだった。


本を戻したその隣り側に写真立てが伏せられている。


写真立てをもとの様に立て直してその中の写真を見る……。




俺を動かしているのは、一握りの興味…。



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