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心に吹く風  作者: イレ
12/14

11月12日

「カチッ。」


私の人差し指がライのスイッチをONにした。目がゆっくりと開く。私と同じ瞳の色が現れた。


「おはようございます。」


私は、今日までライをずっと目覚めさる事が出来ないでいた。


ライの記憶を消してしまったあの日から…。


起きて1時間もたたないうちに、ライは家を飛び出して行った。


「行ってらっしゃい。今日は早く帰ってきて下さい。」


ゆっくりと歩いて行くライを見て安心してわりと冷静に言葉を発することが出来た。


このままずっと永眠させておこうとも思ったが今日は特別な日だったから意を


決してスイッチを押したのだ。家を出て庭へ向かう。私はいつも街へ出てそこで、


花を売って生活費を補っている。ユリの花が主だ。


15年前に亡くなた妻がとても好きな花だった。


他にもパンジーなど色々売っている。しかし、今日は休みにしようと思う。


今日は、ライの2回目の誕生日。そして、ライの命日でもあったからだ。


花を摘んで石碑に備え手を合わせる。今日で8回目のになる。私の息子ライのお墓だった。


それは、ライが死んだのだという事実を象徴している様で、あまり好きじゃない石。


だが、この石碑がなければ天国にいるライとの繋がりが


消えてしまいそうな気がしてならなかった。だから、大事なものでもあった。


そして、妻との繋がりもそこにはあると、心に馳せたメッセージも届けてくれるだろうと、


信じていた。花に囲まれた石碑から私をいつまでも見守っていてくれればいいと願った。


いや、あっちで2人幸せであることを何より願った。 妻は子供を生んですぐに他界した。


悲しかった。だけど、その子がいれば頑張れた。それが、ライだった。


居てくれるだけで、ただそれだけで幸せだった。


しかし、その幸せにも終わりがきてしまった。火事によってライの命は絶たれてしまった。


何者かによる放火が原因だったらしい。それから、街から森の中へ引っ越した。


涙も枯れ果てて、生きる意味さえも、奪われてしまった。悲しみも、悔しさも、


後悔の気持ちも生まれ出てきた。だけど、1番に思ったことは心なんてなければ良った、


ということだった。こんな気持ちを映し出してしまう心、


感情が初めっからなければ良かった。悲しむこともないのに…。


そして、忘れもしないあの玩具が完成した日。その日も11月12日だった。


その前日、天国にいるライに誕生日プレゼントを買ってやろうと、


街へ出て行ったのを覚えている。出来上がったそのロボットが、幼い頃の私に似ていた。


いや、ライにそっくりだったのだ 。生き返ったのかとも、


これは夢なんじゃないかとも思った…。枯れ果てた涙も、生きる意味も溢れてきた。




そろそろ家へ戻って、今日の準備をすることにする。家中を「誕生日」で飾る。


それから、何時間かが経った後、ギギギギとドアが合図した。


思ったよりも早くライが帰ってきた。ライの顔を見た途端、パーティー会場設営で


すっかり準備するのを忘れていたプレゼントのことを思い出し、すまなく思った。


「お帰りなさい。お誕生日おめでとうございます。」


それから、プレゼントに何が欲しいのかと尋ねた。ライの答えは、


思いもよらない以外なものだった。…名前。彼はライなのだが、ライではいのだ。


容姿はライそのものなのだが…。私は果たして彼を言葉としてライと呼んでいいのだろうか


と疑問に思った。


「…ライ。お前の名前は今日からライです。そう呼んでもいいですか?」


ライは、嬉しそう笑った。久しぶりに笑顔を見た気がする。この部屋にいる人間より、


ずっと動く柔軟で素直な表情だと思った。不安一杯で渡したプレゼントをこうも喜んで


くれるのなそれは、喜びに変わった。そして、星空の向こう側にいる2人にこのことを


報告しなければ、と思い星空の下の石碑へと向かった。


外は少し肌寒く、早くも冬を思わせた。


"今日あのライにそっくりなアイツにお前と同じ名前をプレゼントしましたよ"


心の中で響いた声は2人の元へ届いているのだろうか。


11月の秋の星空にどうか、幸せがずっと続きますようにと願った。



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