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短めですが、どうぞよろしくお願いします
「ふぅ、遅くなっちゃったなぁ」
林一檎は紺色が侵略してきた空を眺めながら言った。
高校に入学して1年近く経つがなかなか慣れない。
肩にかけてあるカバンもずっしりと重い。
沈みかけている太陽は空も木の葉も桜の花の絨毯もオレンジに染めてしまう。
それは確かに美しいけれど、一檎はその後の闇の時間帯が好きだ。
眩しすぎる存在で隠れていた宝石たちが少しずつ姿を現すからだ。一檎は太陽よりも月になりたいと思っている。他の存在がくすんで見えなくなるほどの存在ではなく、他を引き立てながら自らも輝くような存在。
月は太陽の反射で輝いているけれど、スポットライトを当てられてそれを輝きに変えられるほどの力がある。そんなところも一檎は大好きだ。
坂道をゆったりと歩いていると、後ろから声をかけられた。
「すみません、お嬢さん」
「は、はい」
一檎が警戒しながら振り返ると、白黒の服と林檎のような形のピンを胸元につけた男がいた。40代くらいだろうか。
ふんわりとした、でも弱くない独特な空気感と優しそうな顔立ちの人だ。
彼は一檎の生徒手帳を持っていた。
「あ、私の生徒手帳!落としてたなんて…ありがとうございます!」
「ふふ、届けられてよかったです」
いい人そうだ。
さよならを言おうとしたら、呼び止められた。
「ちょっと待って」
「はい…?」
「林檎はお好きですか?」
急に何だと思ったけれど、知られても困ることではないので答えておく。
「好きですよ」
「ありがとうございます。では」
そう言って彼は去って行った。
何だったのだろう。
そして一檎は家へ帰った。
今日もう一話投稿します




