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第一夜:お似合いの嘘をくれ/不香の花/平和のために
【お似合いの噓をくれ】
世の中は幸福な嘘を求めている。
たとえそれが量産型のハッピーエンドでもいいのだ。
その嘘で、自分が幸せになれればそれでいい。
その嘘で、自分の不幸から逃れられればそれでいい。
何物にもなれない自分に耐えられない。「特別な何か」になりたい輩が多すぎる。
僕はそんな世界に、耐えられない。
不幸な僕にお似合いの不幸な嘘をくれ。陰惨で凄惨な最低の物語を。
平凡で低俗な僕でも存在していいんだって証明してくれよ。
ーーー
【不香の花】
好きになった相手には、花の名前を一つ教えるといい。
だからわたしはあなたに雪の異名を教えた。
「あれは不香の花というんだよ」と。
いつか別れたその後で、雪がひとひら舞う度に、あなたはきっとわたしを思い出す。
あなたは無邪気に空を見上げる。わたしはあなたに愛を囁く。
「ああ、今年も不香の花だね」
ーーー
【平和のために】
魔王を倒したら世界が平和になるって聞いたからさ、俺魔王を倒したんだよ。
だけど世界はそう単純じゃなくて、次から次へ敵は生まれるんだ。
だから片っ端から倒したんだよ。
そうしていたらだんだん分かってきた。
世界は敵を必要としているんだって。
絶対悪がいない世界で平和って成り立たないんだって。皮肉な話だよな。
だから今、俺は勇者と戦っている。
団結した世界は、今日も平和だ。




