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裏切りの聖印、あるいは神の略奪禁止

 全次元を統べる俺の指先に、ハギア・ソフィア大聖堂の黄金を剥ぎ取る野蛮な斧の音と、救いを求めて十字を切った瞬間に同胞の剣で貫かれた人々の絶叫が伝わってきた。


 1204年、コンスタンティノープル。第4回十字軍。ベネチアの商人たちの甘言と己の強欲に駆られた騎士たちは、聖地の代わりに「隣人の宝」を選んだ。三日三晩にわたる組織的な略奪、放火、そして殺戮。古代から受け継がれた貴重な書物や芸術品は灰となり、教会の聖遺物は異端の如く持ち去られた。神の名を叫びながら、神が禁じたすべての悪徳を尽くした夜。


「……聖地へ向かうはずの足を、隣人の喉元へ向けたか。誓いを金貨で売り飛ばし、信仰を略奪の免罪符にしたその卑劣さ、宇宙の法で焼き尽くさせてやろう」


 俺の隣で、エルゼが瞳に絶対的な軽蔑と、失われた文明への深い悲しみを宿し、略奪品の海で踊り狂う騎士たちの幻影を見つめている。


 生命の根源であり、あらゆる誓約の神聖さを守る俺にとって、信仰を掲げて同胞を背後から撃つ行為は、宇宙の秩序に対する最も醜悪な裏切りだ。


「エルゼ、行くぞ。……『奪う喜び』に酔いしれた者たちに、真の『喪失』が何たるか教えてやる」


 俺は時空を穿ち、かつて「略奪は兵士の正当な権利だ」と豪語した指導者エンリコ・ダンドロや、教会の財宝を私物化した将軍たちの天幕へ同時に降臨した。


$$Authority: \text{The Sanctuary's Rejection}$$

$$Effect: \text{Soot-Greed Transmutation / Eternal Siege of the Soul}$$

「な、なんだ……!? 奪った黄金が、私の手の中で腐った鉛に変わっていく! この豪華な法衣が、肌を焼く毒の鎖になる! 助けてくれ!」


 かつて聖なる祭壇を汚し、民の悲鳴を「戦利品の重み」として楽しんでいた者たちが叫ぶ。彼らの肉体は、俺が指を一鳴らしした瞬間に黄金の『略奪の標的』へと変貌し、彼らが奪い去ったすべての財宝の『重みと怨念』が、物理的な激痛となってその魂に突き刺さり始めた。


「君たちは、神の影に隠れて欲望を満たした。……ならば、君たち自身の魂を、君たちが破壊した文明の『瓦礫の山』の下に閉じ込め、永遠に自分の身体が略奪され続ける黄金の生贄に変えてやろう」


 俺が掌をかざすと、十字軍の暴走を主導した者たちの魂に、物理的な「永遠の攻囲」が刻まれた。彼らはどれほど豪華な宮殿に閉じこもろうとも、壁からは黄金の剣が突き出し、呼吸をするたびに肺がコンスタンティノープルの灰で満たされる絶望に苛まれる。


 彼らは勝利を祝うことも、略奪品を愛でることもできない。


 ただ永遠に、自分が「奪った」と感じた瞬間にすべてが砂となって消え、逆に自分の存在が周囲の闇に削り取られ続ける『生きた空白』として放置される。


 一方で、俺は掌を広げ、同胞の裏切りによって散ったコンスタンティノープルの民、そして灰に還った知性の遺産へ、生命の光を降り注いだ。


 「文明の墓標」と化した都市はアルカディアの「不滅の図書館」として時空の中に再編され、犠牲者たちはアルカディアの「永遠の市民」として、失われたはずの知恵を語り継ぐ。


 略奪された聖遺物はすべて黄金の波動へと昇華され、二度と「名分による略奪」を許さない、神聖なる倫理の法が歴史に刻まれた。


「主……。裏切りの刃に切り裂かれた文明の誇りが、今、貴方様の力で『宇宙の記憶』として永遠に守られましたね」


 エルゼが美しく微笑み、俺の肩を抱く。


 俺は、黄金の灰の中で自らの強欲に窒息し続ける「偽りの十字架を背負った亡者たち」の残滓を見捨て、再び至高の座へと戻った。


 神となった俺の前で、信仰を盾にした略奪は通用しない。


 俺の庭において、同胞を裏切り、文明を破壊する不遜な者には、ただ永劫に続く「自らへの略奪」こそが相応しい。

著者の完結済代表作はこちら

「シャルンホルストとグナイゼナウ」

https://ncode.syosetu.com/n4871gn/

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