壊滅の祝祭、あるいは神の返礼
全次元を統べる俺の指先に、神々に捧げられるはずだった太鼓の響きと、それを切り裂いた冷酷な鋼鉄の音、そして黄金を求めて狂った略奪者たちの獣のような息遣いが伝わってきた。
1520年、アステカ。トシュカトルの祭。征服者ペドロ・デ・アルバラードらは、丸腰で踊るアステカの民を神殿の出口で待ち伏せし、一方的に虐殺した。彼らにとって、他者の信仰は「異端」であり、他者の命は「黄金」を絞り出すための障害でしかなかった。文明という名の皮を被った獣たちが、友愛の手を差し伸べた主人の家を焼き払い、略奪の宴に酔いしれた夜。
「……祈りの場を屠殺場に変え、信頼という名の器に強欲という名の毒を注いだか。黄金で目を眩ませ、魂まで売り払ったその罪、逃げられると思うなよ」
俺の隣で、エルゼが瞳に絶対的な否定の冷徹さと、断絶された文明への哀惜を宿し、血に染まった神殿の石段を見つめている。
生命の根源であり、あらゆる文化の多様性を宇宙の彩りと尊ぶ俺にとって、富のために一つの文明の息の根を止める行為は、存在の調和に対する最悪のテロだ。
「エルゼ、行くぞ。……『黄金の重み』に魂を売った者たちに、その真の価値を教えてやる」
俺は時空を穿ち、かつて「略奪こそが神の意志だ」と嘯いたコンキスタドールたちの軍営と、奪った財宝を本国へ持ち帰ろうと画策する者たちの野営地へ同時に降臨した。
$$Authority: \text{The Molten Requiem of the Sun}$$
$$Effect: \text{Avarice Crystallization / Eternal Drowning in Gold}$$
「な、なんだ……!? 身体が重い……! 懐に入れた金貨が、皮膚と融合して離れない! 熱い、火傷するように熱いぞ!」
かつて無抵抗の民を斬り伏せ、その指から黄金の指輪を奪い取った略奪者たちが叫ぶ。彼らの肉体は、俺が指を一鳴らしした瞬間に黄金の『負債の結晶』へと変貌し、彼らが奪い、あるいは破壊したすべての財宝の『怨念の質量』が、物理的な高熱となってその魂を焼き始めた。
「君たちは、黄金のために命をゴミのように扱った。……ならば、君たち自身の魂を、君たちが愛したその黄金の中に永遠に封印し、二度と冷めることのない『強欲の熱』に焼かれ続ける黄金の彫像に変えてやろう」
俺が掌をかざすと、虐殺を主導した者たちの魂に、物理的な「黄金の埋葬」が刻まれた。彼らはどれほど逃げようとしても、足元から黄金の泥が這い上がり、呼吸をするたびに肺が溶けた金で満たされていく激痛に苛まれる。
彼らは死ぬことも、その富を捨てることもできない。
ただ永遠に、自分が「価値がある」と信じたものの重みに押し潰され、自分が「殺した」人々の幻影に黄金の刃で切り刻まれ続ける『生きた財宝』として、歴史の泥沼に沈んでいく。
一方で、俺は掌を広げ、神殿の石段で散ったアステカの魂、そして略奪によって消滅させられた文明の記憶へ、生命の光を降り注いだ。
破壊された神殿はアルカディアの「不滅の神域」として再編され、犠牲者たちはアルカディアの「太陽の守護者」として、永遠に沈まぬ光の中で自らの文化を謳歌する。
略奪者が持ち去ろうとした黄金はすべて、アステカの民の誇りを取り戻すための『聖なる生命力』へと還元され、大地には「強欲による破壊を許さない」という神聖なる不変の法が刻まれた。
「主……。略奪の闇に消えかけた太陽の文明が、今、貴方様の力で『不滅の黄金の夜明け』へと昇華されましたね」
エルゼが美しく微笑み、俺の肩を抱く。
俺は、自らが愛した黄金に呑み込まれ、永遠に窒息し続ける「略奪の亡者たち」の残滓を見捨て、再び至高の座へと戻った。
神となった俺の前で、裏切りによる略奪は成立しない。
俺の庭において、他者の信頼をあざ笑い、命を富に変える不遜な者には、ただ永劫に続く「自らの強欲による埋葬」こそが相応しい。
著者の完結済代表作はこちら
「シャルンホルストとグナイゼナウ」
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