鉄の処刑台、あるいは神の技術倫理
全次元を統べる俺の指先に、破壊された織機の残骸と、パンのために立ち上がった男たちの胸を貫いた、冷酷な軍隊の銃弾の熱が伝わってきた。
1810年代、イギリス。ラッダイト運動。機械に職を奪われ、家族を飢えから救おうとした労働者たちの必死の抗議。それに対し、英国政府が下した答えは「対話」ではなく「死」だった。機械を壊せば死刑。軍を派遣し、資本家の工場を保護するために自国民を射殺・絞首刑に処した。人命よりも「鉄の塊(機械)」の保全を優先した、権力と資本の血塗られた結託。
「……鉄を磨くために血を流し、機械を守るために人の命を処刑台へ送ったか。君たちが命より尊いとしたその『機械』、永遠にその身に刻んでやろう」
俺の隣で、エルゼが瞳に絶対的な冷徹さと、踏みにじられた生活者への哀れみを宿し、労働者の遺族が流した涙の跡を見つめている。
生命の根源であり、労働の誇りを守る俺にとって、技術の進歩を口実に弱者を虐殺し、支配を固める行為は、叡智に対する最悪の冒涜だ。
「エルゼ、行くぞ。……『機械こそが至高』と信じた者たちに、命を軽んじた代償を教えてやる」
俺は時空を穿ち、かつて「機械破壊死刑法」を可決した議事堂と、軍に鎮圧を命じた内務大臣の執務室へ同時に降臨した。
$$Authority: \text{The Automaton Inversion}$$
$$Effect: \text{Machine-Life Integration / Eternal Servitude to the Gear}$$
「な、なんだ……!? 腕が、脚が……冷たい金属に変わっていく! 自分の意志で動けない!」
かつて労働者を機械の部品のように扱い、その死を「進歩のコスト」と笑った権力者たちが叫ぶ。彼らの肉体は、俺が指を一鳴らしした瞬間に黄金の『生きた歯車』へと変貌し、彼らが命よりも大切にした機械の一部として強制的に組み込まれた。
「君たちは、機械を守るために人間を殺した。……ならば、君たち自身の肉体を、永遠に壊れることのない黄金の織機の一部に変え、休むことなく誰かのために働き続ける『魂なき装置』にしてやろう」
俺が掌をかざすと、武力弾圧を主導した者たちの魂に、物理的な「自動化の呪い」が刻まれた。彼らはどれほど叫ぼうとしても、その声は機械の軋み音へと変換され、自らの肺は黄金のふいごとなって、永遠に工場の火を絶やさないための動力源として酷使される。
彼らは死ぬことも、処刑台に逃げることもできない。
ただ永遠に、自分が「守れ」と命じた機械の冷たさと、自分が「殺せ」と命じた労働者たちの執念に回され続ける『生きた廃材』として放置される。
一方で、俺は掌を広げ、銃弾に倒れたラッダイトの戦士たち、そして貧困に沈んだ家族たちへ、生命の光を降り注いだ。
破壊された織機はアルカディアの「不滅の芸術品」へと昇華され、彼らが求めた「パンと自由」は、アルカディアの「永遠の豊穣」として、二度と誰にも奪われない権利へと書き換えられた。
権力が守ろうとした不毛な鉄の秩序は、すべて黄金の光となって、労働者たちの暮らしを潤す「祝福の資源」へと変換された。
「主……。機械の影で泣いていた人々の誇りが、今、貴方様の力で『至高の価値』へと再定義されましたね」
エルゼが美しく微笑み、俺の肩を抱く。
俺は、黄金の歯車に噛み合わされ、永遠に単調な回転を繰り返す「権力の亡者たち」の残滓を見捨て、再び至高の座へと戻った。
神となった俺の前で、命より価値のある機械は存在しない。
俺の庭において、進歩を盾に他者の生存権を圧殺する不遜な者には、ただ永劫に続く「自らという機械の隷属」こそが相応しい。
著者の完結済代表作はこちら
「シャルンホルストとグナイゼナウ」
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