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明白なる天罰、あるいは神の領土保全

 全次元を統べる俺の視界に、意図的に境界線を越えさせられた兵士たちと、それを口実に「自衛」を叫ぶホワイトハウスの謀略が映り込んだ。


 1846年、米墨戦争。アメリカ合衆国は、カリフォルニアやニューメキシコという巨大な領土を欲し、紛争地帯へ軍を派遣してメキシコ側を挑発した。「米国の血が米国の地で流された」という歪んだ大義名分。結果、圧倒的な武力でメキシコの国土の3分の1を奪い取った。彼らはそれを『明白なる天命マニフェスト・デスティニー』と呼び、略奪を神聖化したが、そこにいたのは神ではなく、底なしの強欲だけだった。


「……領土のために嘘を撒き、隣人の家を焼き払って『神の意志』を騙ったか。君たちのいう天命が、どれほど安っぽい血の色をしているか、その魂に刻んでやろう」


 俺の隣で、エルゼが瞳に絶対的な凍土の如き怒りを宿し、その略奪された広大な地図を見つめている。


 生命の根源であり、あらゆる土地に宿る魂を等しく愛する俺にとって、国家の肥大のために嘘の紛争を仕掛ける行為は、歴史に対する最も醜悪な偽証だ。


「エルゼ、行くぞ。……『境界を動かす』楽しさを知る者たちに、逃げ場のない真の境界を教えてやる」


 俺は時空を穿ち、侵略戦争に喝采を送ったワシントンの政治家たちと、強奪した土地で利権を貪る入植者たちの意識へ同時に降臨した。


$$Authority: \text{The Reciprocal Encroachment}$$

$$Effect: \text{Spatial Compression / Eternal Siege of the Self}$$

「な、なんだこの黄金の壁は……!? 私の部屋が、私の領地が、刻一刻と狭まっていく!」


 かつて「西へ、さらなる西へ」と領土拡大を叫んでいた者たちが、自らの生活圏が物理的に圧縮されていく恐怖に叫ぶ。彼らの周囲には、俺が指を一鳴らしした瞬間に黄金の『因果の境界線』が走り、彼らが奪った面積に比例して、彼ら自身の生存空間が削り取られ始めた。


「君たちは、他人の土地を自分のものだと主張した。……ならば、世界中のあらゆる空間が『君のものではない』と拒絶する絶望を味わうがいい」


 俺が掌をかざすと、戦争を誘発した者たちの肉体に、物理的な「追放」が刻まれた。彼らはどれほど広い邸宅にいようとも、一歩踏み出すごとに大地から黄金の火花で拒絶され、常に「自分の居場所がない」という極限の圧迫感に苛まれる。


 彼らはどこへ行くことも、大地に安らぐこともできない。


 ただ永遠に、自分が奪った広大な荒野の幻影の中で、一寸の足場も許されない『生きた漂流者』として、空間の狭間に閉じ込められる。


 一方で、俺は掌を広げ、不当な戦争で命を落とし、故郷を奪われたメキシコの人々へ、生命の光を降り注いだ。


 奪い取られた大地はアルカディアの「不滅の主権」により、侵略者のインクを黄金の炎で焼き払い、本来の持ち主たちの魂と再び結びつく。


 偽りの「天命」はアルカディアの「真なる審判」へと上書きされ、略奪によって築かれた繁栄は、すべて犠牲者たちへの永遠の賠償として、黄金の豊穣へと変換された。


「主……。強欲な拡張主義に汚された北米の大地が、今、貴方様の力で『正当なる帰結』へと戻されましたね」


 エルゼが美しく微笑み、俺の肩を抱く。


 俺は、自らの居場所が原子レベルまで圧縮され、虚空で喘ぐ「侵略の主導者たち」を見捨て、再び至高の座へと戻った。


 神となった俺の前で、嘘の紛争は通用しない。


 俺の庭において、隣人の地を欲して謀略を巡らす不遜な者には、ただ永劫に続く「自らの居場所の喪失」こそが相応しい。

著者の完結済代表作はこちら

「シャルンホルストとグナイゼナウ」

https://ncode.syosetu.com/n4871gn/

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