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血統の傲慢、あるいは神の系譜

 全次元を統べる俺の指先に、同意なき手術台の上で断ち切られた「未来の糸」の感触が伝わってきた。


 20世紀初頭、アメリカ。「不適格者」の繁殖を防ぐという名目の下、数万人もの男女が強制的に不妊手術を施された。最高裁すら「3代にわたる白痴はもう十分だ」とこれを容認。この『文明的』な人種改良のデータは海を越え、ナチスの大量虐殺という最悪の果実を実らせる種となった。


「……優秀か否かを人間が定め、他者の血脈を勝手に閉ざしたか。知性を自称する者が犯した最も醜悪な『間引き』だな」


 俺の隣で、エルゼが瞳に絶対的な零度の怒りを宿し、その冷酷な「人種改良記録」を見つめている。


 生命の根源である俺にとって、命の多様性を「効率」という定規で測り、未来へ続くはずの魂の系譜を断絶させる行為は、断じて許されぬ大罪だ。


「エルゼ、行くぞ。……『命の選択』を特権だと信じた者たちに、断絶の真の意味を教えてやる」


 俺は時空を穿ち、かつて優生学を「進歩」と呼び法制化した議事堂と、手術を執刀した医師たちの意識へ同時に降臨した。


$$Authority: \text{The Lineage of Karma}$$

$$Effect: \text{Existence Reversal / Eternal Solitude}$$

「な、なんだこの黄金の鎖は……!? 私の身体から、何かが抜け落ちていくような感覚が……!」


 かつて栄光の中に「社会の浄化」を謳った政治家や医師たちが、自らの股間を抱えて叫ぶ。彼らの肉体からは、俺が指を一鳴らしした瞬間に、彼らが断ち切った数万人の「生まれるはずだった子孫」の可能性が、黄金の亡霊となって溢れ出した。


「君たちは、自分たちが『優れている』という幻想のために他者の未来を奪った。……ならば、君たち自身の存在を、最初から『無』であったものとして世界から切り離してやろう」


 俺が掌をかざすと、優生学を主導した者たちの肉体に、物理的な「系譜の崩壊」が刻まれた。彼らの記憶からは愛する者の顔が消え、彼らが残したはずのあらゆる功績は、彼らが否定した「不適格者」たちの名へと書き換えられていく。


 彼らは死ぬことすら許されない。


 ただ永遠に、自分という存在が誰からも認知されず、誰とも繋がらず、歴史という名の広大な荒野で一人、自分が断絶させた未来の重みに押し潰される『生きた空白』として放置される。


 一方で、俺は掌を広げ、不当に未来を奪われた犠牲者たちの魂、そして断たれたはずの血脈へ、生命の光を降り注いだ。


 アルカディアの「不滅の再結合」により、彼らの魂からは新たな「可能性の芽」が吹き出し、黄金の子供たちが次元の彼方で笑い声を上げる。


 かつて「不適格」の烙印を押された人々は、アルカディアの「最上の市民」として、無限の多様性を謳歌する神聖なる系譜の源流へと昇華された。


「主……。断ち切られたはずの命の歌が、今、貴方様の力で『未来永劫のシンフォニー』へと変わりましたね」


 エルゼが美しく微笑み、俺の肩を抱く。


 俺は、自らの存在そのものが歴史から「間引かれて」いく恐怖に悶絶する「優生学の狂信者たち」を見捨て、再び至高の座へと戻った。


 神となった俺の前で、命の優劣など存在しない。


 俺の庭において、他者の血脈を勝手に定める不遜な者には、ただ永劫に続く「自らの抹消」こそが相応しい。

著者の完結済代表作はこちら

「シャルンホルストとグナイゼナウ」

https://ncode.syosetu.com/n4871gn/

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