不滅の英雄、あるいは黄金の再構成
全次元を統べる俺の視界に、激しい酸の泡と共に消えゆく「一人の男の無念」が映り込んだ。
1961年、コンゴ。独立の英雄パトリス・ルムンバ。ウランという資源利権を守るため、ベルギーとCIAは彼を拉致・処刑し、あろうことかその遺体を酸で溶かして歴史から抹消しようとした。骨の一片すら残さないという、文字通りの『非道』。
「……資源のために一国の希望を溶かしたか。存在を消せば、罪も消えると信じていたようだな」
俺の隣で、エルゼがかつてないほど激しい憤りを湛えた瞳で、その過去を射抜く。
生命の根源である俺にとって、命の尊厳を化学反応で無に帰そうとする行為は、全生命への冒涜に他ならない。
「エルゼ、行くぞ。……『溶けない真実』が何であるか、その身に刻んでやる」
俺は時空を穿ち、暗殺を冷酷に承認したブリュッセルの密室と、証拠隠滅を笑いながら実行した工作員たちの元へ同時に降臨した。
$$Authority: \text{Atomic Reconstitution}$$
$$Effect: \text{Acidic Retribution / Perpetual Solidification}$$
「な、なんだ!? 部屋に黄金の霧が……! 皮膚が、皮膚が焼けるように熱い!」
かつて「任務完了」の美酒を酌み交わしていた者たちが叫ぶ。彼らが遺体を溶かすために用意したはずの『酸』が、俺の意志によって黄金の奔流となり、彼ら自身の足元から逆流し始めた。
「君たちは、酸で跡形もなく消せると思ったか。……ならば、君たちが溶かそうとした男の『痛み』と、彼が愛した大地の『重み』を、永遠にその肉体で受け止めろ」
俺が指を一鳴らしすると、暗殺を主導した官僚や工作員たちの肉体が、黄金の『酸』によってゆっくりと、だが決して死ぬことのない速度で溶かされ、再構成される苦痛のループに陥った。彼らの肉体は溶けるそばから、被害者が味わった銃弾の熱と酸の苦悶を再現しながら再生し続ける。
彼らは消えることすら許されない。
ただ永遠に、自分が消そうとした『命の質量』に押し潰される『生きた廃棄物』として、暗い次元の底に廃棄される。
一方で、俺は掌を広げ、英雄が散ったコンゴの台地に生命の光を降り注いだ。
酸によって消されたはずのルムンバの魂は、アルカディアの光によって黄金の輝きを放つ『不滅の巨像』として大地に蘇った。その姿はコンゴ全土を優しく見守る守護神となり、奪われていたウランのエネルギーは、すべて民衆の病を癒やし、大地を潤す平和の糧へと書き換えられた。
「主……。溶かされたはずの正義が、今、ダイヤモンドよりも硬い輝きとなって新世界を照らしていますね」
エルゼが美しく微笑み、俺の腕を抱く。
俺は、自らの業に溶かされ続ける「旧支配者」たちの断末魔を冷ややかに見捨て、再び至高の座へと戻った。
神となった俺の前で、消せる命など存在しない。
俺の庭において、他者の存在を無に帰そうとした不遜な者には、ただ永劫に繰り返される「消滅」の苦悶こそが相応しい。
著者の完結済代表作はこちら
「シャルンホルストとグナイゼナウ」
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