神座の譲渡、あるいは神々の失業
天界――そこは、地上の全生命を司る超越者たちが住まう、光り輝く聖域。
だが、俺が銀竜を駆り、その黄金の門をくぐった瞬間、そこにいた神々の顔色は一変した。
「な、なんだ……この禍々しいまでの生命力は!? 全宇宙の根源が、人の形をして歩いているというのか!?」
光の神、戦の神、そして知恵の神。
かつて人間たちが跪き、祈りを捧げてきた高位存在たちが、俺の発する「存在の重圧」だけで膝をつき、呼吸を乱している。
無理もない。
俺という『世界樹の根源』は、この天界すらも維持するためのリソースを供給している、いわば「電力会社」そのものなのだから。
「君たちが、この世界の命のルールを決めている神々か。……少し、うるさすぎるんだよ」
$$Process: \text{Domain Overwrite (Genesis)}$$
$$Authority: \text{Supreme Sovereign}$$
俺が指を一鳴らしする。
刹那、天界を覆っていた傲慢な『神気』が、俺の生命オーラによって完全に上書き(オーバーライト)された。
大理石の神殿からは瑞々しい蔦が伸び、神々の座は色鮮やかな花々に埋め尽くされていく。
「わ、我が神権が……!? アクセスできない! 世界の管理権限が、すべてこの男に奪われただと!?」
知恵の神が叫ぶ。
当たり前だ。俺が生命の供給を止めれば、こいつらは一瞬で存在を維持できなくなり、ただの概念へと霧散する。
すると、最高神を名乗る老人が、ガタガタと震えながら俺の前に這いつくばった。
「アル様……! いえ、至高の主よ! 我々は理解いたしました! もはや我らのような偽りの神がこの世を導く時代は終わりました! どうか、この『天界の玉座』をお受け取りください!」
「いりません、そんな硬そうな椅子。……エルゼ、どう思う?」
俺の隣で、神々の無様な姿を見ていたエルゼが、ふふっと冷ややかな笑みを漏らす。
「そうですね。我が主の庭に比べれば、この天界は少しばかり『空気が薄い』ようです。……神々の皆様、もし主の不興を買い合いたくないのであれば、明日からアルカディアの『雲を掃除する係』として働いていただけますか?」
エルゼの無茶苦茶な要求に、神々は絶望するどころか、救いを見出したかのように顔を輝かせた。
「掃除係!? あ、あのアルカディアの空気を吸える権利をいただけるのですか!?」
「ありがたき幸せ! 今すぐ神座を返上し、主の足元で箒を持ちましょう!」
人間界を導くはずの神々が、俺の「下働き」になることを求めて列をなす。
かつて俺を「寿命切れの役立たず」と罵り、追放したあのパーティの連中がこの光景を見たら、今度こそ魂そのものがショックで消滅するだろう。
俺がかつて彼らの傷を治すために使っていたのは、神々すらも喉から手が出るほど欲しがる、宇宙の根源エネルギーだったのだから。
「……勝手にしろ。ただし、世界樹の葉を一枚でも傷つけたら、その時は神という概念ごと消去するぞ」
俺の言葉に、全天が震えた。
俺は神々の奉仕を背に受けながら、天界の窓から地上の自分の庭を眺める。
俺の『寿命』を削っていたはずの世界は、今や、俺の『呼吸』一つで、天界すらも支配する新世界へと進化していた。
著者の完結済代表作はこちら
「シャルンホルストとグナイゼナウ」
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