42.かなりやられた、と思う-大尉!-
全47話です
日曜~木曜は1話(18:00)ずつ、金曜と土曜は2話(18:00と19:00)をアップ予定です(例外あり)
かなりやられた、と思う。
事実、盾をつけていた左腕を除く四肢が吹き飛んだ。そして、その爆風はセンサー類の大半を機能不全にしたのだ。頭部も吹き飛んでいるのでカメラも使えない。
――このダメージだとここでの戦線復帰は難しいよね。一度エルミダス基地まで戻らないとダメだろうなぁ。さて、どうしたものか。
カズの機体はその多くが機密レベルが他の機体より高い。ヤマニですら知らない事、触れてはいけない部分があるくらいだ。その中には[サブプロセッサーの意識の有無]というのも含まれている。
そう、ゼロゼロは生体コンピューターと認識されていて意識はない、と思われているのだ。こちらの意思は示さず、ありのままのデータを開示する。演算を求められれば行う。ただ、それだけのシステムだと。
少なくとも研究所の人間以外には。
そんな中、ヤマニ達に話しかけてもいいものかどうか。ワンワンのサブプロセッサーは意識があるのは周知のとおりだが、あの機体は第二世代なのだ。カズの機体は第一世代である。他のどの機体をとってもサブプロセッサーに意識はない。
そんな事を思案しながら後方の野営地まで戻ってきた。
だが、ゼロゼロはまだ決断できずにいた。
――こんな時にカズ君がいれば。
刻一刻とコックピットのパイロット、そしてコアユニットにアクセスする為にバラシが行われている。
すると、
「見えたで」
「大尉!」
ほぼ条件反射でカズを抱きかかえようとするクリスを医療班の主任がすかさず止める。
「まずは手当からです」
主任はそう言うと、基本的な診察を始めた。脈、呼吸、脳波、それからハンドスキャナーによる体の中の損傷個所の確認。
それがひととおり終わると、
「取り敢えずは大丈夫のようです。が」
「意識が戻らない、と?」
――そうだよね、脳波が明らかに変だもん。これは意識のない人の脳波とも違う。損傷まではいってないと思うけど、今は。
「ええ、かと言って無理に起こすのは逆に危険です。脳波は一見すると正常に見えますが、一部乱れているところがあります。ここまでして、ここまで来て起きない、意識が戻らないという事は[起きられない]という事です。ですが、ここではこれ以上の事は出来ません。ので、大尉はそのままエルミダス基地まで搬送します。手を貸してください」
そこでようやくクリスはカズに触れる事が出来た。レイドライバーとリンク状態になっていのを解除し、頭部と腹部のケーブルを抜く。
クリスが指示を出し、いちど幕から出てカズを基地まで輸送するよう指示を出し、また幕の中に入る。
「よし、いよいよコアユニットやな」
ヤマニは手慣れた様子でボルトを外していく。
「よし、外れたで」
ボルトをすべて外して操縦席の後ろの板を外す。
そこにはコアユニットが、[チトセ]がいた。
クリスが見ても小柄の、黙っていれば[まだ子供です]と言っても信じてもらえそうなその体に触れようとした時、
「ちょいまち」
ヤマニが声をかける。
その声にビクッとしながら、
「い、いけませんでしたか?」
クリスが恐る恐るそう返すと、
「すまん、このコアユニットについては出来る限り接触は禁止されているんや」
驚かせた、と思ったのだろう。ヤマニが謝りながらそう言う。
「接触というのは?」
「文字通り[触る]事を意味してる。医療班の主任はんが主にケアをしとるんだが、わしらは基本、コアユニット本体に触ってはいけないっちゅう事になっとる。ですよね?」
ヤマニは主任に確認を取る。
「はい、基本的には私以外は触れてはいけない事になっています」
「それにな……」
ヤマニが口ごもる。
「それに?」
クリスが促すと、
「このコアユニットはな、このコアユニットは……」
「このコアユニットは?」
思わず耳に入った言葉への疑問が口を衝く。
――そう、このコアユニットはカズ君の大切な人なの。もちろん、私にとっても。
「すまん、口に出しておいて何なんだが、これ以上はクリスとはいえ言う事はでけん。カズとの約束なんや」
元々、嘘や隠し事が苦手なヤマニだ、本当はこの場でクリスに全部言ってしまいたいのだろう。
「分かりました、それ以上は聞きません、でもコアユニットの人物は、サブプロセッサーは生きているんですよね?」
「ああ、生命活動はしとる、よな?」
ヤマニが主任に聞くと、
「ええ、大尉を含めて今は意識を失っている状態ですが、生命活動としては問題ありません。ですが、先程お話しした通りここではこれ以上の処置は出来ないので、詳しくはエルミダス基地に戻ってから精密検査をしないといけません」
全47話です




