38.千歳ちゃんに私の体を使って欲しいの-きみたちの傍にいさせてくれないかな?-
全47話予定です
日曜~木曜は1話(18:00)ずつ、金曜と土曜は2話(18:00と19:00)をアップ予定です(例外あり)
だが、
「千歳ちゃんに私の体を使って欲しいの。もちろん他人の体に脳を移植するんだから拒絶反応は当然起こると思う。そこで、例のクスリを使って反応を抑えてもらえれば、多分そこからの数年ならば」
「生きられる、と。でもそうしたらきみは……」
「私はそのまま自我を持ったサブプロセッサーとして前線に行くよ。私がみんなを、いえ、カズくんや千歳ちゃんを守って見せる」
その眼は一片の迷いがないくらい透き通っていた。
恵美は自分の体を千歳に差し出すというのだ。たとえそれが短い命であっても自分の体を使って欲しい、そう願い出たのだ。
「どうしてそこまでしてくれるの?」
――確かに今まで大切な友達だと思ってきたけど。
今日のカズは少しだけ言葉が先に出るようだ。いつもは仕舞っておくべきものも口を衝いて出て来る。
「どうして、かな。自分でも[これっ]っていうのはないんだけど。しいて言えば私のわがまま、かな。体だけでもカズくん、きみと一緒にいたいの。たとえ脳は千歳ちゃんになっても、きみが[好き]って言ってくれるのは私の躰なんだ。それに、いくら必要だといっても、形は違うけど、カズくんと私の[子供]をもてるなんて……」
純粋な視線に耐えられず目をそらしていたカズが改めて恵美を見ると、
恵美は笑みを浮かべたままボロボロ泣いていた。
――襟坂さん……。
「ご、ゴメンね、こんな事言って。それこそ千歳ちゃんもカズくんも汚しちゃうよね」
そう言って涙を拭うが、なかなか収まってはくれない。それだけ心に秘めたものが大きいのだろう。
だが、それもしばらくすると止まってくれたようだ。
「でも千歳ちゃんはコアユニットになったんだし、戦闘は避けられないのは分かっている事だと思うんだ。なら、私にも一緒に手を汚させてほしいの。そして、きみの……きみたちの傍にいさせてくれないかな?」
恵美はあの時の、大学にいて進路を決める時のあの言葉を再び使ったのだ。
「この話は一度走り出したら後戻りはきかないけど、それでもいい?」
カズは念を押す。が、その目線の先には、既に決意を決めたであろう恵美がいた。
「お願いします、所長」
そう言って頭を下げる。
「襟坂さんの気持ちは分かった。ペアリングテストも適合と出たんだ、きみとの[子供]を作って体に埋め込むよ。それから」
カズはそう言って恵美を見る。
「国には俺、つまりパイロットときみ、そうサブプロセッサーとの会話を認めさせるつもりでいる。チトセとの、コアユニットとの会話は禁止だそうだけど、サブプロセッサーの、第二世代からは認められている。それを盾に、研究者として搭乗する事を提案するつもりだ」
「それじゃあ……」
恵美の顔色が明るくなる。
「ああ、俺からもお願いしたいんだけど、一緒にいてくれるかな?」
「こちらこそ、お願いします!」
「決まりだね。それじゃあその方向で話を進めるよ」
そして、恵美は数日後に脳を摘出されて生体コンピューターと融合し、カズとチトセが搭乗するレイドライバーのサブプロセッサーとなる。
全47話予定です




