31.それから二年が過ぎた-世界はこの三つの勢力にほぼ統合された-
全47話予定です
日曜~木曜は1話(18:00)ずつ、金曜と土曜は2話(18:00と19:00)をアップ予定です(例外あり)
それから二年が過ぎた。
この二年での成果は、今までの集大成だともいえるだろう。ロボットの、のちのレイドライバーの試作機が完成したのだから。
初めは[チトセ]が搭載された。
もちろんカズはパイロットとして、また研究者として、さらには所長としてこの実験の主導をしたのだ。彼は[チトセ]の事を最優先に、彼女の体調を最優先に考えて行動していた。その甲斐もあって、彼女は二年間生き延びる事が出来たのだ。
そんな、サンプルデータがある程度取れたところで、次に実用機の製作にとりかかる事になる。
パイロットに女性が適しているという事が分かった時点で、既に政府は孤児院を建設していた。それは、次期パイロットを育成するための孤児院である。そこに集められた子供たちは、皆もともとは両親や姉妹がいたのだが、拉致もしくは隠ぺいといった工作で[孤児]にされられて施設に送られたのだ。
子供の頃から[調律]すれば、こちらにとって有利なパイロットが出来上がる、という仕組みだ。
パイロットとサブプロセッサー、それにコアユニットはそれぞれパイロットとコアユニットの子宮の基本シグナルをベースに独自の通信を行う。その子宮の回路はシグナルを直結する為にお互いの同調が重要視された。
そこで、孤児院の子供たちには週に一度から二度の[身体検査]を実施したのだ。それはコアユニットになる女性にも同様である。
独自に開発した装置を使い、毎週の数値を照らし合わせて、ペアリングが正常なのか、それとも使い物にならないのかを判断していったのだ。
もちろん[調律]の経過もそうだが[使い物にならない]と判断された個体は実験に回された。そこで[生体実験]の被験者として数々の実験に供されたのだ。
この、パイロットとサブプロセッサー、コアユニットの候補は何も女の子がいる両親の家庭に限らない。女性が二人以上いる姉妹、兄弟でもいいのだから。その優位性を見るために何人かは姉妹を拉致して来てある、とカズは聞いている。
カズは研究所の職員と定期的にその孤児院に顔を出していた。
――――――――
この頃には[帝国]を名乗る[大陸の国々]と、主にNATO諸国などを統合した[同盟連合]、それに中東諸国と一部アフリカの大陸の国が元になっている[共和国]、世界はこの三つの勢力にほぼ統合された。
そして、あたらこちらで小競り合いの戦闘が起きるようになる。だが、どの国も、核兵器のボタンは押さないでいた。それは、いざ占領しても使い物にならなかったり、世論の矛先が自分たちに及ばないようにする、そんな狙いもあったのだろう。
もちろん、核のボタンを押せば世界が終わる、それはどの国にも共通していた認識なのだ。その代わり、小型の戦術核は何例か使用された。でも、それはあくまで限定的な、本当の小型核であり、威力も広島型の数十分の一という弱いものであった。
その代わり、と言っては何だが小規模な戦闘は、まるで体のアナフィラキシー反応のように各地で起きていた。
当然。そんな散発的な戦闘が世界各地で行われていたので、国力もそれに削がれるというものだ。
現にこのご時世、通常の孤児院と言えば、平屋のトタン屋根を敷いただけという、貧民街のそれとほとんど変わりがない外観に、ぎっちり詰まった人数、さらには満足な分の食事が供給できない為の餓死者というのが普通なのだ。体力のない者から順に消えていく、それはどこの国でも同じであった。
中産階級から上流階級は自分たちの暮らしを守る事に全精力を注ぎ、孤児たちに構っている余裕はどの国にもない、というのが実情なのだ。
そんな中でも、パイロットを育成するこの孤児院は別格である。
鉄筋コンクリート製の総二階建てという、台風が来てもびくともしない作りに加えてペンキの匂いがまだ残る新造したての建物に、その日の残飯をあさって回る毎日と違い、質素だが考えられた食事、安眠かどうかは別として、外敵の心配なく眠る事の出来る部屋。
そんな中で各地から集められてきたまだ子供と言える女の子たちが暮らしていた。
――――――――
全47話予定です




