32.検査結果はどうですか?-そんな自分が不愉快で仕方ない-
全47話予定です
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「第一次試験群のここでの検査結果はどうですか?」
カズが孤児院の責任者に話を聞くと、
「ええ、今のところ適応率は三十三名中、十二名が適正がありで、残りの二十一名は適正がないか、厳しいと出ました。いかがされますか?」
ここでの立場はカズのほうが上だ。
それはそうだ、あの研究所の所長なのだから。今日もこうして自ら足を運んでいる。
「もう一か月様子を見よう。それで適正値が五十を下回った個体から生体実験に回す事にします」
生体実験に回す、それは無事では済まされない事を意味している。
[解放する]ではなく[実験体]にするなのだ。それは適正値を出せなかった、拉致してある近親者にしても同様である。確かに適正値は低いが、なに、実験には十分使える。
それにまだ[生体]を使った実験のフェーズはたくさん残っている。耐久試験もそうだが、コアユニットとパイロット、サブプロセッサーにした時の連携テストや負荷試験等々、挙げればキリがないほどだ。
「そう言えば、ここにはクリスチャンさんの子供たちもいるよね?」
「はい、適正値は良好です」
クリスチャンは、もともとこの研究所に勤めていた、あまり成果の出せないでいた女性の研究員と結婚をし、その女性が子供を身ごもった際、遺伝子操作を施して一卵性双生児が、両方とも女の子が生まれるように、母子との適正値がよくなるように細工をして、子供たちがちょうど十歳前後のあたりで母子ともに研究材料にしたのだ。
「クリスチャンさんのご家族は……」
カズは以前にそう、本人にうっかり聞いてしまったことがあった。
――しまった、事前に予備知識は少しはあったのに。
だが、その時のクリスチャンの答えは、
「私にとってはこの研究はとても魅力的だ。それが、自分の妻子を使う事になっても。いやカズ、貴方にはちゃんと伝えよう。私は妻、子供などはどうでもいいのですよ。それは女性、子供に興味がない、と言ってもいい。それがたとえ自分に関係する人物でもね。ただ研究が上手く行けば」
クリスチャンはカズから目を離さず熱く語る。
「その為に、好きでもないヒトと結婚し、その当時の持てる技術を総動員して一卵性双生児を作り出した。そして母子との適正値が高くなるように、二人とも女の子になるように細工したのだから。この研究が上手く行けば……。私は、その先を見てみたいのですよ。そして、貴方にはそれが出来ると信じています、カズ!」
その時のカズは[そんな事を平気で出来るなんて]と思ったものだが、千歳が被検体になって[チトセ]になってしまった現在、彼は心の変化を感じ取っていた。
カズの、千歳への気持ちは変わらない、はずだ。
現に、彼女の身を第一に考えて行動している。
だが、心のどこかで[チトセの事を、チトセの心も躰ももっといじってみたい。自分の好きなようにいじりましてみたい]と思う彼がいるのも事実だ。
それは、子供が好きな人型のおもちゃを与えられた感情に似ている。いじって、いじって、いじくりまわして、好きなポーズ、好きなシチュエーション、時には手足をもいだり、また付けてみたり、針を刺したり、穴をあけたり、そしていろんないたずらをしたり。
そんな感情に初めて気が付いたのは、コアユニットとしてレイドライバーにチトセが搭載された時だ。
真っ黒のスーツに手足を切り落とされて末端に器具かつけられた姿。顔はマスクで覆われていて、ちょうど目のあたりに四角いディスプレーがセットされた姿。
涙腺は摘出されてしまっていて涙を流すこともなく、そんなチトセは、自分から眠る事も、息をする事も、物を見る事も、音を聞く事も、更には食事も排泄も、そのすべてをコントロールされているのだ。
カズはその姿を見て、激しく興奮していた。
これから[チトセ]の事をいじる事が出来る、好きに出来る。その衝動が、いじっていじっていじくりまわしたいという衝動が抑えられないでいたのだ。
そんな風に感じてしまうのは、人間を人間と思わないこの長年の研究のせいなのか、それとも元からカズの心の中にある[サディズム]なのか。
今、カズがチトセに抱いているのは[愛情]なのか、それとも[玩具愛]なのか。
あんなに愛していた、いや、いるはずなのに、今のカズにはそれは区別が明確に付けられないでいる。
だが明確なのは、確実に[チトセ]の事をそんな風に想う[彼]が確かに心の中にいる、という事だ。
だが、カズにしてみれば、そんな自分が不愉快で仕方ない。他の被検体は百歩譲ってそういう目で見てしまうとしても、千歳の事はそんな風には思いたくないのだ。
全47話予定です




