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私の名前は神崎 唯 二十四歳。
独身です……っと誰にでもなく自己紹介させていただきましたが……そうです! 最近気になる人が出来ました!
名前は斎藤 宗田さんです。
そうですねー。
馴れ初めを話しますと――出会いは突然でした。
元々同じ会社で、見かければ挨拶をするくらいの関係。
――それが私達でした。
「お疲れ様です」
「あ……お疲れ様です」
おや? 元気がないですね? 何かあったのでしょうか?
仕事の休憩室で偶然出会うと、彼は項垂れるように座っていました。スマホの画面を操作するでもなくどこか一点を見つめ、ぼーっとしているだけです。
「あの……体調悪そうですけど、大丈夫ですか」
普段の私なら絶対に声をかけることはしないのですがどうしてか、その時ばかりは彼が気になってしかたなかったんです。
思わず口からポロリと言葉が漏れてしまいました。
「あ……そんな酷い顔してたかな? でも大丈夫だよ」
そう言って乾いた笑みを浮かべて、私を見るとすっと立ち上がっていなくなってしまいました。
でも、これが始まり――運命です。
去っていく彼の姿をなんとなく眺めるていると、胸の奥がぞわぞわと熱くなり、心臓の鼓動が耳に聞こえるくらい高まっていました。
それからは偶然が続き、
「お疲れ様です」
「あ、お疲れ様です」
「今日は顔色が良さそうですね。えっと、私は神崎 唯っていいます」
「神崎……あぁ、君がそうなんだ。俺は斎藤宗田だよ。この前はありがとう」
少しだけ軽くなった笑顔にすっと胸が軽くなり、今回は軽く談笑してお別れしました。
「お疲れ様です」
「お疲れ様ー」
「これ、良かったらどうぞ」
「ありがとう。イチゴミルクか。んっ、美味しい」
また、談笑してお別れ。
それを何度か繰り返すと、だいぶ心を開いてくれたのか、彼から話してくれるようになりました。
「それがさこの前、彼女にふられちゃって、今もなんかなーって」
「えっ!? でも、どうして? あっ、話したくなかったら大丈夫ですよ」
「今は少し落ち着いたから大丈夫だよ。ゲームばっかりやっててかまってくれないからだってさ。他に好きな人ができて、別れましょうって」
この前落ち込んでたのはそれのせいだったんでしょう。
でも、こうして自分から話してくれたのが凄く嬉しくて、宗田さんには申し訳ないけど少しだけテンションが上っちゃいました。
「それは……なんと言うか……」
「答えにくいことを言ってごめんね。でも、あの時声をかけてくれて、驚いたけど一人じゃないんだって思えてさ。その、ありがとう」
宗田さんに真っ直ぐ目を見つめられそんな事を言われたら。あぁ、耳が熱い。絶対に顔が赤くなってるの気づいてますよね。
次の日はゲームの話。
どんどん距離が縮まっていい感じです。
「ところでどんなゲームするんです? 実は私もゲーム大好きで、休日はほとんど家でゲームを」
「神崎さんもゲーム好きなんだ。俺は、んー、そうだな。RPGが多いけど、アクションもFPSもやるね。今度発売するドラゴンズ・レガシー10がめちゃくちゃ楽しみでさ」
ゲームの話しをする彼は饒舌でとても、楽しそう。
その笑顔に私も楽しくなってきました。
「ドラゴンズ・レガシー10! 私も予約しました。実は限定版予約出来たんですよね!」
「えっ、マジ! 俺も限定版予約できたんだ。良かったよー」
「いいですねー。どっちが先にクリアできるか勝負しましょう。あっ、差し支えなかったら連絡先教えてください。先にクリアして自慢しますから!」
そして、会社だけの繋がりから、外の世界でも私達は繋がることになりました。
要するに、一目惚れに近いと思います。
なんだか気になって話してたら、もっと彼を知りたくて、傍にいたくて。
確か、以前の彼女は「真奈」っていいましたかね。
宗田さんには申し訳ありませんが、感謝してます。
――ありがとう。
これが、私と宗田さんの馴れ初めです。
ただ――二つ嘘をつきました。
一つは、一目惚れの瞬間。
本当は、ずっとあなたを――見ていました。
帰る時も、会社に来るときも。あなたは気づいてましたか、よくすれ違うなと。
そして二つ目は、そんな偶然が何度も続くと思いますか?
何度も同じとこで出会ったら、それは偶然じゃなく必然ですよ。
凄い気分いいですね。でも、なんでなんでしょう。
分からないけどずっと彼に惹かれて――狂おしいほど愛しい。
――欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい。
彼は私だけの、そのためなら――
――なんで、こんなに愛しいんでしょう。
……ねぇ、どうしてこんなに愛しく感じるの。
あなたは――私の世界。
今度は離さない。
――あはっ。ははは
起きたらまた、たくさん話しましょうね。




