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新しい仲間?

 「えっと、僕はアリス! よろしくね! そして、このおっきいのは(つよし)だよ」

 アリスの活気のある声が夜の空に吸い込まれていく。

 当初は唯に相当怯えていたが、唯が傷を治してくれたことから、自分達に敵意がないと言うことが伝わったらしく、今は人懐っこそうな目をこちらに預けていた。


 「俺は、宗田。んで、唯と、ちっこいのがベリル」

 「ちっこいとはなんじゃい!」

 互いに自己紹介を済ませると、宗田は二人を一瞥をくれた。

 剛は筋肉マンと言う感じで、顔もそれに合わせたように強面な面構えをしている。

 アリスはと言うとスラッとしてるのに、メリハリのある身体つき。

 日本人特有の柔らかさに、西洋人特有の彫りの深さ、特徴的なのは青い瞳。


 「およ? そんなに見つめてどうしたのかな〜? もしかして、僕に見惚れてた?」

 悪戯な笑みを浮かべたアリスが、胸元を強調するようなポーズを取る。

 真っ白で綺麗な肌が胸元を余計に強調し、スタイルの良さが余計に色っぽく見え、宗田がアリスの胸に思わず視線が吸い寄せられそうになる。

 だが、視界の端に映った唯の顔に、慌てて視線を逸らして弁明した。


 「ち、違う! 違う! アリスさんはハーフなのかなって思ったんだ」

 唯の様子をうかがうと、わずかに殺気が滲んでいたが、すぐに消えていく。

 宗田が安堵するように長く息を吐き出して、アリスに視線を戻す。

 

 「およっ! 分かる? 僕はイギリス人とのハーフだよ。後、アリスで良いからね」

 ウィンクしながら親指を立てたアリスは、一回転して見せた。

 「可愛いでしょ? 僕」

 「……否定はしない」

 宗田は苦笑い交じりにそう返すと、隣から静かな圧を感じる。

 怖くてそっちを向けない。


 「そ、そう言えばさ、二人はさっきの声をなんか知ってるの? 神の声って言ってたっけ?」

 唯から放たれる冷気から逃れるように、強引に話題を変えることにした。

 

 「知ってると言うか、僕達のコミュニティでも最近話題になってるんだよ。ね? 剛も知ってるよね?」

 アリスが振り向くと、剛が顎を引く。

 「あぁ、そんなに詳しくないけど、最近良くその話を聞くな。報酬……この世界で貴重なアイテムを貰えるから、神様じゃないかってことで、"神の声"なんて呼んでるが……」

 恩恵をもたらす声を崇拝するように、そんな名前を付けたのだと思うが、剛は浮かない顔をしていた。


 眉間にシワを寄せ、何かを考えるように視線を落とす。 

 そして、咳払いをするように喉を鳴らし真剣な表情でこっちを見ると、低い声で話し出した。

 

 「……なんかさ、そんな都合よく報酬が貰えるとか薄気味悪くてよ……。 魔王の呪いとか、それを使ったら取り憑かれるとか……あるかもしれないぞ」

 剛の瞳には恐怖が浮かんでいるように思えた。

 白い目に血走るように毛細血管が浮き出ると、強面の顔がさらに強調され、宗田は思わず唾を飲み込んだ。


 宗田達の周囲から音が消えると、剛の荒い息遣いが不安を掻き立てるように、頭蓋の内側に響いてくる。

 剛が大きく息を吸い込み、口を開こうとするが、割って入るようにアリスが一歩前に出た。

 

 そのせいで、行き場を失った空気に逃げ場が無くなったようで、鼻から少しずつ漏れ始める。

 甲高く情けない音が鼻の穴から鳴り、それがひとしきり鳴き終わると、アリスがニヤつき剛に振り返った。


 「あ、気にしなくていいよ。こいつさー……図体でかい割に、幽霊とかそう言うの苦手なんだよね」

 アリスの告げ口に、気まずそうに剛の視線が横に逃げて行く。

 

 「この顔に、このでかさ。ありえん。てか、幽霊怖くてソンビ大丈夫って、馬鹿なの?」

 辛辣に剛をアリスが咎めると、唯と向き合ってる時のように体が縮んでしまう。


 「うんうん! 剛くん大丈夫だよ。僕も幽霊嫌いだもん。仲間だね」

 ベリルがにこやかに剛に伝える。

 「でも、流石にその顔で、これは引くけど……んんっ!」

 言い切る前にベリルの口元を押さえたが、剛は大きく項垂れてしまい、時すでに遅かったようだ。


 「こら! ベリル! ちゃんと剛さんに謝って!」

 「えー! やだよっ! だってお兄さんもそう思うでしょ?」

 「あ、謝らなくていいよっ! 本当のことだし。宗君気にしすぎ」

 「……宗君、ですって」

 全員が一気に話し出すと空気が一気に賑わいを見せる。

 ベリルとアリスはハイタッチを交わし、唯はアリスを感情のない目で見つめる。

 宗田は剛に近寄って手を肩に乗せ、何度も頷いた。


 「まっ、そう言うのもあるよな。気にしなくていいと思うよ。"神"って名前が……」

 そう言えば、ベリルは異様にこの世界に詳しかった。

 ならば、さっきの現象について知っているかもしれない。

「なぁ、ベリル。さっきの声……"神の声"について知ってることある?」

 宗田が問いかけると、アリスと戯れるように抱き合っていたベリルの顔だけが振り向いた。


 「アリスちゃん、柔らけ〜……。ごほんっ! いや〜僕も良く分からないんだよね。だぶん、魔王が独自に作ったルールだと思うよ」

 下心丸出しのベリルはおっさんのようだった。

 わざとらしく咳払いをした後に続いた言葉は、ベリルでも分からないと言うこと。

 少しだけ期待したが、予想とは違う回答に肩を落としてしまう。


 「そう言えば、宗田君。この子は外国の子? めっちゃ可愛い! 欲しいんだけど!」

 「また……宗君だと?」

 唯から放たれる禍々しいオーラが範囲を広げるようにアリスへと伸びるが、気づいてないのか気にした様子もない。


 「あ、いや、違うと思うよ? なんか拾ったから俺もよく分からん」

 外国と言えばそうなのかもしれない。

 でも、自称精霊のベリルは何処に属すると言っていいのだろうか。

 一応否定して、そっと唯に近寄って手を握っておいた。

 すると、唯の体が硬直し、宗田にぎごちなく顔を向ける。


 「え、あ……どうしたん……ですか? 突然、手なんて」

 今にも破裂しそうなくらい顔を赤らめた彼女から、負のオーラが消え去っていく。

 なんとなく、唯の扱い方を理解できた気がするが、それとは関係なく手を握っていたくて離さなかった。

 すると、何も言わない宗田に、唯は嫌な反応もせず、そっと握り返してくる。

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