【四十一話 アクマの森の仔〜暁〜⑰】
別タイ:橙色への“罰”
「っ!」
「そう身構えないでください、メルリヌスくん」
「今から“罰”を下すって言ってる奴が何言ってるの!?」
そう言いながらメルリヌスはいつでも攻撃出来るように、赤い魔術陣を展開して構えた。
対するウーサーは指をパキパキ鳴らしながら悠然と構えていた。
「罰は“罰”でもメルリヌスくんが想像しているような胸クソ悪い悪趣味なモノではありません。
内容を言ってしまいますと、ちょっと現実を見てもらうのが貴方への“罰”です」
「?現実を見る?」
「はい、貴方の“食事”の現実を、です。なにせ貴方の“食事”の仕方は───
見ていられない位虫以下レベルの超ド下手クソでしてから」
「──────────!!!!」
ウーサーが言い終わるのとほぼ同時、メルリヌスの魔術陣から大きな火球が出現。
轟音を立てながウーサーの方へと飛んでいく巨大な火球.....だったが、
「...」
ウーサーが左手を前に出した。
そして、左手に火球の炎が触れる寸前───轟々と燃えていた火球がフッと跡形もなく消えてしまったのだ。
「っ!!?)」
「メルリヌスくん。まずは外に出ましょう。ここは兄さんの部屋ですから、兄さんの物が壊れてしまいますから、ね?」
と、巨大な火球を消した当の本人は、とても攻撃を受けたとは思えない程の余裕な態度で場所を移そうとメルリヌスに言っていた。
それ様子を見たメルリヌスは更に激昂し、
「うるさいうるさいうるさいっっ!!
お前はっ!【アクマ】であるボクをっ!夢魔にとって最大で最悪の侮辱を口にしたっ!!しかも二度もだっ!!───絶対に、絶対にっ!許さないっっっ!!!」
「はい。二回言いましたね」
「〜〜〜〜〜〜!!!」
あの日あの夜、ウーサーとメルリヌスが初めて出会った時と同じ、一言一句間違えず、ウーサーはメルリヌスの“食事”に非常に辛めの評価を下した。
唯少し違うのは、あの夜の時は哀れみの籠った目で言い、今回は普通(?)の笑顔で言ったことだろうか。
「表情に温度差がありすぎてマジ怖い」
と二人のやり取りを見てた【ナマモノ】はそう言った。
ウーサーの緊張感が無い笑顔が、メルリヌスの怒りで燃える炎に油を過剰に注ぎ込む。油を注がれ爆発したメルリヌス。
ウーサーと兄のいるベッドを囲うように殺意の籠もった幾つもの魔術陣を出現させ、逃れられないように、ゼロ距離でいつでも一斉射撃出来るようにした。
「...さっきの言葉、撤回するなら■なない程度に加減してあげるよ。しないなら.....」
怯えが一切消え、怒りと憎悪が混じり合う橙色がウーサーを射抜く。
「もう罰は始まっているのです。撤回などありません」
その視線に全面的に受けるウーサーの姿勢は変わらない。
「───そう...」
ウーサーの回答を聞いたメルリヌスの怒りの表情がごっそりと抜け落ち無になった。
「じゃあ■んで」
魔術陣が一斉に輝き起動する───
「「じゃあ」はありません」
パンッ!
乾いた音がウーサーの両手から発せされた。
すると、音に合わせてウーサー達を囲っていた魔術陣がパッと全て消え去ってしまった。
「またっ!?」
全力全霊そこに更に殺意を込めた魔術が二度も呆気なく消し去られた。
その事に驚愕しつつもウーサーに対しての怒りが勝っていたメルリヌスは、また新たな魔術陣を展開させようとした───が、
「もう、それはおしまいです」
ウーサーの声がとても近い所で聞こえ、
「!!?」
メルリヌスの目の前にウーサーが立っていた。
そしていつの間にだったのか、片手でメルリヌスの両手を拘束していた。
慌てて拘束を解こうと、両腕を激しく振ったがウーサーの手はびくともしなかった。
しかも何かしているのか、メルリヌスは魔力を集め、形にする事が出来なくなっていた。
「っく!このぉ!!」
メルリヌスは必死で藻掻くが、ウーサーは拘束の手を一切緩めようとしない。
「覚悟はいいですか、メルリヌスくん。解きますよ」
トン.....
と言って、ウーサーは開いていたもう片方の手、人差し指でメルリヌスの額を軽く小突く。
─────カチャリ/ガチャリ
メルリヌスの頭の中で、鍵が解錠された音か二つ響いた次の瞬間───
「─────!!!」
明け放たれた二つの扉から、濁流の様にメルリヌスの封じていた記憶が一気に頭の中に流れ込んできた。
◆◇◆ ◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
流れてきたのはメルリヌスが目覚めて、初めて“食事”をした時の記憶の映像だった...。
夜、とある一室に音も立てずに侵入したメルリヌス。彼が見る先には、一つのベッドがあった。
そこには一人の若い騎士らしき男が眠っている。
メルリヌスは眠っている男の方へ手をかざし、桃色の魔術陣を発現させ、男に向かって陣を放った。
男に放ったのは勿論、魅了の魔術。男の身体と夢に術をかけ、発情させ喰べやすいようにする───ここまでは普通だった。
しかし、問題はここから。
術にかけ発情させた男の方にゆっくりと近づくメルリヌスだったが、枕元まで来た途端、その場に立ったまま、熱で苦しそうに喘いでいる男を無下ろすだけで手を出そうとしない。....なんかのプレイか??
三十分以上そうしていたが、漸くメルリヌスは動き出した。
甘く燃えるような未知の熱に苛まれ、熱を逃そうと己の胸を掻き毟る男の腕へと手を伸ばし.....
チョン、バッッ!!
擬音だけじゃ分からないだろうと思うから解説しよう。
簡単に説明すると、メルリヌスは人差し指で男の薄皮一枚にも満たない程度にチョンと触って、バッッと目にも留まらぬ速さで指を引っ込めた。以上。
そしてそのまま何もせず、発情したままの男を放置して、部屋からでで行ってしまい、二度と戻ってくることはなかったのだった.....。
その後も何度かさっき言った事と同やつを、他のターゲットらしき男にして放置するのを、日が昇るまで続けた夜なのであった.....。
この奇妙な行動は、ウーサー達が捕縛作戦を決行するまで続いたのだった.....。
◆◇◆ ◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
「....................」
全てを思い出し、ワナワナと身体を震わせ、羞恥で顔が真っ赤になったメルリヌス。
目には涙が今にも溢れんばかりにたくさん溜まっていた。
「思い出しましたか。思い出しましたね。
もう分かっていると思いますが、私が解いたのはメルリヌスくんが身と心を守る為無意識にかけた、保護暗示と記憶の改竄による封印です。
暗示により本来の“食事”をしようとすればそこで暗示が発動して、あの様な“食事”とも言えない“食事”の仕方になってしまうのです。
あれでは空腹が満たされない、それどころか飢餓状態になってしまうのも当たり前なのですよ」
ウーサーの同情、呆れを含んだ言葉がトドメとなった。
「...う.....う、うぅ〜〜〜〜〜っゔ.....。
うえぇえーーーーーーーーーえぇええん!!!!!」
恥ずかしさのあまり、その場にへたり込んで盛大にギャン泣きしだした。
ウーサーはそんな泣きじゃくるメルリヌスの頭をあやすように良し良しと撫で続け慰めるのだった...。
いつまでつづくか分からないおまけ
〜Q&Aと没話〜
Q:今更ながらウーサーとイグレインの関係って?
A:主従契約の関係&協力者(案内人)でそれ以外なにもない。
だがビジネスライクの様なスーパードライな関係でもない。
互いに過去を含めある程度事情を知っている者同士、気軽に会話できる関係。友人、戦友、みたいな感じ。
ただ恋や愛などの感情が彼等には一欠片も無いだけ。
それは今後一切ウーサーが物語に退場するまで発生する事はない。
因みにウーサーはイグレインの趣味本作成のお手伝い、主に挿絵の担当をしています。(ただし、未成年なのでR指定の物はやらない)
Q:何で王はともかく王妃とウーサーが暮らす城に夢魔が住んでいるのか?
A:国を守ってもらう事・民に危害を加えるような“食事”をしない事を条件に、彼等は安心安全に“食事”を出来る環境と住める居場所を提供してもらった。
国の方も彼等に危害は加えない・魔術等による強制行為もしないようにとも約束している。
どっちかが条件を破れば、例の怖い王族二人のどちらかに処されます。
ボツ話(中途半端)
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城内に住む者たちに危害(性的など)を加える悪魔を見つけたら即“ブラックモード”になって口にすることさえ恐ろしい粛清を下す二人が、ソッチ方面で有名な夢魔だけは何もせずに、しかも普通に城内に住み着かせているのだ。
これは何も知らない者なら誰だって目玉が飛び出るほど驚くだろうさ。
何故彼等が最凶の二人(又は黒くてヤベェ存在)のいる城に普通に暮らしていられるのかは、人間にとってはよくある困った事情を解消してくれるからだ。
その困った事情というのが言わずもがな生理現象の事だ。
ちょっとお恥ずかしい話だが、妻又は夫や恋人がいない大人と思春期真っ盛りの人間達は全てではないが欲が幻想種より(悪魔は除く)溜まりやすい。
それを発散するにも一人でするのも限界があり、相手もいない、娼館に行くにしったってお金が掛かる。
だからといって誰かを無理矢理襲うのは以ての外(多分そうなる前にどちらかの性が強制終了する(闇に葬られる))。
と、言うことで対処にかなり困るのだった。
そこで白羽の矢が立ったのは夢魔達だ。
彼等は特に人間の精を好み糧にしている幻想種。
彼等も幻想種の中では珍しく、食欲があり性欲も人間並み又はそれ以上にある者もいる。
その彼等に生理現象問題を解決して貰ったのだ。
“食事”の幾つかの条件を守っていれば、了承してくれた相手を夢魔の作った空間にお誘いして、食べられるので彼等は直ぐOKした。




