9 再出発
「こんばんはっ! 星夜ユニです!」
「望月セナだよー」
「メインチャンネルから来てくれた人たちはありがとう。新しく来てくれた人たちもありがとう。今日はふたりで、Dead End Journeyの実況をやっていこうと思います!」
モニターの中で見目麗しいふたりの少女のアバターが、仲良さそうにおしゃべりを続ける。画面にはいかにもホラーですというような暗い雰囲気のイラストが表示され、端のコメント欄は次々と書き込まれる文字が高速で上へと流れて行く。
きつい選択をしたな、と鈴華はモニターを見ながら心の中で呟いた。
アンダーストリーマーは常に配信者生命を失いかねないリスクを抱えているため、活動がある程度軌道に乗ると、ゲーム実況など別ジャンルに手を出すことも多い。写し身の回復にかかる待ち時間で配信頻度に制約があるから、というのもある。モデルを作るのにかかる時間を考えると、以前から考えてはいたのだろう。その意味で星夜ユニと望月セナがサブチャンネルを作ってゲーム実況を始めたのは、予定通りのことなのかもしれない。
けれど視聴者がついてくるかは別の話だ。そもそもジャンルが別ものでは視聴者層も変わってくる。ファンの一部はとりあえず配信を見ようとするかもしれないが、面白くなければ継続視聴はしないし、新規視聴者の獲得も同様だ。配信をするのは同じでも、ジャンルという意味では畑違いの仕事である。
そしてユニ自身は今後もアンダーストリーマーとしての活動も続けていくと宣言しているが、セナとの繋がりを保つ選択をしたことは、今後他のダイバーと組むハードルを上げてしまう。
セナは二度とダイバーとして活動できない。この事実は変わらない。そんなセナと組んでいるユニと行動すればスケジュール調整などでの制約が増えるし、将来的に火種となるリスクも抱えている。うまくメンバーを見つけられたところで、今後ユニはセナと新メンバーとの間で板挟みになるはずだ。
ユニもそれはわかっているだろうが、それでもあえて厳しい道を選んだ。見捨てる選択ができなかっただけかもしれないし、炎上が怖かったからかもしれない。しかしそれも含めて、星夜ユニの選択だ。
良き人たちの未来に幸あれ
画面の中でふたりの少女は楽しそうに笑い合う。鈴華は彼女たちの成功を祈願し、少しばかりの心付けを送ると、モニターを消してアンダーギアを頭に取り付けた。
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これにて1章は終了です。続きに関しましては、現時点では未定となっておりますのでご了承ください。
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