プロローグ〜君のことは一生忘れない〜
私は家へ帰ることも出来なかった。
ユイナの病室にいた。
ユイナの心臓に手を当てる。
音も動きも何も無い。シンとした空気だけが流れる。
急いでナースコールをした。看護師や医者が来た。
「……この子は……亡くなっています。」
私はただ立ち尽くしていた。
さっき、ユイナからもらった封筒を開ける。
そう、さっき貰ったんだ。
さっきまで、喋っていた。
笑顔でいた。
ここで、息をしていた。
ここで生きていた。
つい1分前まで話をしていた。
そんな彼女が……
死んでいるなんて……
頭が追いつかなかった。
とにかく、封筒を開ける。
中に入っていたのは一枚の紙。
手紙だった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ピアへ
私は、自分の最後の時にこれを渡そうと決めていました。ピアに、私のことを全てここで書こうと思います。
私の人生は、あなたのおかげで変わりました。
転校してすぐ、君は私に話しかけてくれたよね。
そんなこと、1度もなかった。
私の初めてをあなたにあげることが出来て良かった。
私の病気は今まで聞いたことないもので、かかったのは私が初めて、ということでした。なので、病名はありません。治し方も分からない。余命は、もうない。
私はいつ死んでもおかしくなかったんです。
そんな時、あなたがいた。
ピアの優しい声を聞くと、安心できた。
ピアの優しすぎる性格に、私は助けられてきました。
でも、私はあなたに何かあげることは出来なかった。
ずっとずっと、一緒にいたかった。
色んなことをしたかった。
学校にちゃんと通って、同じ高校に行って、
もしかしたら大学も通って、
一緒に大人になりたかった。
いっぱい後悔はあります。
まだ生きていたかった。
でも、その夢は叶わなかった。
神様がいるのなら、
私達を引き離さないでと
何度願ったらいいのだろう。
ピアのこと、大好きだよ。
私のこと、忘れないでね。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ただ私は立っていた。
泣いて、泣きながら、繰り返し読んだ。
ふと、気づいた。
下に、QRコードがついていた。
スマホでそれを読み取る。
なんと、読み取ると、ユイナのSNSのサイトに飛ばされた。
そこに、「ピアへ、最後の言葉」と書かれた動画を見つけた。
「もう……ユイナは、さ、これ以上私を泣かすつもり……?」
私は独り言を話す。
動画をスタートさせる。
「ピアへ、あのね、私が、死んじゃうことは神様から送られた人生なんだよね。早くから死んじゃうことは、生まれた時から決定事項だったの。」
懐かしい、ユイナの声。
まだ、少ししか経ってないのに
懐かしく思える。
その一言一言に、感動した。
「ずっと私が探していた、生きる意味。なんでみんな死ぬのに、わざわざ生きてるんだろうって思ってた。」
画面のユイナも、少し涙が出ていた。
「でも、でもね、人って幸せになるために生まれてたんだ。私にも、幸せはありました。ピアと出会い、一緒に家に行って、一緒に過ごして、一緒に部活へ行って、その時間が、私の人生で1番の幸せだった。」
……なら、もっと生きて、もっと1番の幸せをつくりたかった。
もっと他に幸せはあったかもしれないのに。
私は生まれてからずっと幸せが続いてた。
途中苦労も乗り越えたけど。
なのに、なんで君だけ、幸せの数が少ないの。
神様。もっとこの子にたくさんの幸せをあげてください。
十分過ぎるほどに。
私はもう、大丈夫です。
だから、ユイナに……もっと幸せをください。
「だから、ありがとう、ピア。もう、お別れだね。生きていたいと思っても生きていけなかった。だから、私の分の幸せは、あなたに託します。だから、この幸せで、私みたいな人を、助けてあげてください。私のこと、忘れないでね。ずっと大好き。ユイナ。」
……うん。ありがとう、ユイナ。
あなたの分まで、ずっと私は生き続ける。
あなたの分の幸せを、他の人にあげるために。
あなたのことは、一生忘れない。
だから、安心してね。
永遠に眠るあなたの、その時間が、少しでも安らかでありますように
この話はこれで完結です。
また、他の作品で会いましょう。
みらいろ美羽で検索すると他の作品が出てくると思うので、そちらも、是非チェックしてみて下さい。
応援、ありがとうございました