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第3章ー13

 なお、この八代近辺の戦いから肥後の一揆勢力と皇軍の講和の動きは、おおよそだが1月後半から2月一杯に掛けて行われたものであり、それによって、第18師団の主力は肥後を制圧し、更に豊後、筑後、肥前へ進撃する威勢を示した。

(講和が一段落しないと、後方の不安があり、幾ら猛将の牟田口廉也中将とはいえ、更なる進撃は見送らざるを得なかった)

 では、この間の第18師団の残りの一部、いわゆる川口支隊の行動はどうだったか、というと。


「よろしく願います」

「ははっ、大隅、日向を回復することこそ、島津家の年来の宿願。それに協力していただけて有難い」

 川口支隊を率いる川口清健少将と、島津貴久の弟の忠将は、そんな会話を1月後半に交わしていた。


 第18師団の主力が肥後に向かったのは、肥後の一揆軍の行動に対して、怒りに駆られた、というのが最大の原因だが、もう一つ、大隅、日向方面への侵攻に関しては、島津家の歴史的経緯から島津家も協力的であった、という側面がある。


 そもそも、島津家の代々の悲願が、(一時的ではあったが)かつて保有していた薩摩、大隅、日向の三州の守護職を回復するというものである。

 島津家が、薩摩、大隅、日向の守護職になるのに、皇軍が協力してくれるのなら、これに反対する理由はないどころか、むしろ協力してほしい、というのが、島津家の本音だった。

 そして。


 大隅国内の勢力は、川口支隊と島津軍の進撃の前に、特に抗戦することはなく、いわゆる白旗を基本的に掲げて通行を黙認し、服属する態度を示した。

 何故なら、大隅国内で最大の勢力である肝付氏の当主、肝付兼続の妻は、島津貴久の姉妹であり、また、肝付兼続の妹は、島津貴久に嫁いでいるという二重の関係で島津家とは結ばれている仲だった。

 こうした関係から、川口支隊と島津軍の進軍を半ば黙認し、服属するという態度を肝付氏は示した。

(もっとも、島津家の裏の意向から、川口支隊に対しては面従腹背という態度を肝付氏は実は執っていた)

 だから、これを見た大隅国内の諸勢力は風向きを読んで、大隅国内を川口支隊は容易に通過することが出来たという次第だった。


 だが、日向国内に入ると情勢は変わった。

 何故なら、日向国内の最大勢力、伊東氏は島津家と(少し大げさな表現になるが)不倶戴天の仇敵関係に長年にわたってあり、飫肥にいる島津(豊州)家と日向南部の覇権を争っていたからだ。

 だから、川口支隊と島津軍の進軍に対しても、当然、抗戦するという態度を伊東氏は示した。

 更に厄介なことに、川口支隊等が大隅を通過する間に、八代近辺の戦いは起きており、それについて(噂レベルだが)伊東氏は情報を掴んでいた。

 こうしたことから。


「伊東氏は各地の城砦に兵を籠城させ、それで最大限の抗戦を図るようです」

 島津忠将は、そう川口支隊長に伝えることになった。

「厄介なことになったな」

 川口支隊長は、頭を痛める羽目になった。

 本音を言えば、野戦でケリを付けたいのに、伊東氏は籠城戦術を取ったのだ。

 とはいえ、八代近辺の戦いを知った伊東氏が、そう易々と野戦に応じる筈もない。


「仕方ない。後方が怖いが、味方を信じよう」

 そう川口少将は決断した。

 島津家の軍勢、更に恭順を表明した大隅国内の諸勢力に軍勢の供出を、島津家を介して川口少将は依頼する羽目になった。

 そして、


 伊東氏の当主、伊東義祐が籠る都於郡城を川口支隊は目指した。

 それ以外の伊東氏の城砦は、島津家及びそれに味方する諸将の看視下に置いた。

 この時、島津家の一部では、千載一遇の好機として、皇軍を討とうとする動きが生じたが、それを察したかのように、山下中将は第16師団の主力を薩摩に援軍として向けたのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] うま、これは伊東と島津がひどい目に合う未来しか見えない。 大友・大内は足利の手先と思われてるだろうから最初から良い待遇は得られそうにないですしね。
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