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第3章ー3

 そんな会話を交わした後、1月早々に上里松一少尉は、シャム王国の首都へと張敬修と共に米を大量に買い付けてマニラに輸送する大任務に向かったのだが。


 その一方では、皇軍の主力は、日本本土に急行し、天皇陛下を救うための一大作戦を実行するための計画立案に奮迅していた。

 なお、この計画の立案等には、事実上は第25軍司令部が当たっている。

 新たに軍司令部を作る手間が無かったのと、本間雅晴中将を軍司令官とする第14軍司令部は、ブルネイ制圧後、態勢が整い次第、マラッカ方面制圧を主任務とする南方経略に当たることが決まったからだった。

 つまり、日本本土方面は第25軍が、南方方面は第14軍が当たるという役割分担となったのだ。


 これはそれぞれが元々所属する師団等の思惑、より細かく言えば、師団長の思惑が働いた結果だった。

 近衛師団長の武藤章中将と第18師団長の牟田口廉也中将は、共に声を大にして、日本本土への急行、天皇陛下救出任務を自分が行うことを主張しており、本来なら上官である山下奉文中将にしても、どうにもその主張を迎えかねる有様だったのだ。

 そして、近衛師団と第18師団は共に第25軍の隷下にあった。

 こうしたことから、第25軍が日本本土方面を担当することになった。

 更に、琉球王国上層部からの情報提供を得た結果。


「やはり、南九州に上陸し、そこを足場にして第18師団は九州を制圧、近衛師団は海上機動により、大阪湾に上陸して京都に向かうのが至当であると考えます」

 辻政信中佐は、第25軍司令部において、近衛師団司令部と第18師団司令部の面々を集めた席上で、懸命に訴えていた。


「琉球王国からの情報提供によれば、九州は史実通りの小勢力が抗争しているとのこと、最大の勢力が、中国、北九州双方に勢力を広げている大内氏ですが、そこに赴くまでに大敵はいません。精強なる第18師団をもってすれば、九州制圧は容易に成し遂げられるでしょう。念のために、航空偵察を事前に行い、地形に大きな変更がないことを確認できれば、なお十分かと」

 実際、その情報は誤ってはいなかった。


 例えば、琉球王国の日本の窓口と言えるのは、薩摩の島津氏だったが、誰が新たな島津家宗家の当主になるかで、先年まで大規模な一族間の紛争を続けており、島津忠良、貴久父子がようやく勝利を収めて、何とか薩摩をまとめている有様だった。

 九州に存在する諸勢力で、いわゆる1国以上に勢威を張る大勢力と言えるのは、筑前、豊前に勢力を持つ大内氏くらいで、それに次ぐといえる大友氏にしても2国を抑えているとはとても言えない。


 装備の格差を考えれば、九州制圧は第18師団をもってすれば十分、と辻中佐が吠え、第18師団長の牟田口中将が、その言葉を満足げに聞くのも無理はない話だった。

 とはいえ、問題はもう一つある。

 第18師団は、どこに上陸すべきか、ということだった。


 南九州で上陸作戦を展開するとなると、適地は3か所ある、と第25軍司令部は考えていた。

 薩摩の吹上浜、大隅の志布志湾、更に日向の宮崎海岸の3か所である。

 この3か所の適否を考えた末、第25軍司令部が検討した末に、選んだ上陸適地は吹上浜だった。


 吹上浜に上陸した場合、この当時の日本の三大港の一つである坊津港が指呼の間にあり、そこを速やかに第18師団が抑えることが可能になる。

 また、この当時、南九州で勢力があるというと島津氏、肝付氏、伊東氏といったところであったが、そうした中で、いわゆる筋目が最も良いのが島津氏だった。

 島津氏は薩摩、大隅、日向の守護を占める立場にあり、島津荘の下司でもあった。

 更には島津荘は近衛家の荘園ということから、摂関家ともつながる。

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― 新着の感想 ―
[一言] さすがの鬼島津もWW2の軍隊相手だと涙目になりそうw
[一言] 辻政信、コイツが出てくる度にどうもねぇ、ノモンハンで負傷した兵士を置き去りにして退却する友軍を叱咤して、自ら最前線に進み負傷した兵士を背負って戻ってきたらしいけどね、美談ではあるけど参謀の仕…
[一言] 戦国当時一番国を荒らした元凶の内患の一つ僧兵・一向一揆はとらえて一罰百戒で即座に炭鉱送りにし近代化の要石炭採掘と製鉄の元高炉の製造と近代産業化に使うべきで悪質な敵や裏切りを行った大名の兵や武…
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