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第26話 人と狼

 大きな聖脈だまりには今回の狼のようなマナに愛された生物がいること、パレス族はそういった聖脈からマナのエネルギーを得るためにそういった生物を利用すること、つまり、今回は偶然この近くにあった巣の主を退治したことになる。やったね!


 大量に流れる文字の洪水の中から重要な情報を抜き出すとこういうことであった。


【大いなる父のお言葉を久しぶりにお聞きできた……なんという行幸……】


 ハヤテは心の中で今見たメッセージのことは話してはいけないと理解した。


「なんにせよ、君を助けることは俺の目的にも合っていたから気にしなくていい。

 あとはまた奴らが来ないことを祈るしかないな、どうやらこの周囲にはしばらく奴らは手を出してこないようだ」


【ハヤテには世話になった。私が協力できることなら何でも言ってくれ】


「そういえば、この地に人間が来ると帰ってこないってのは君たちの仕業なの?」


【いや、我々は巣にでも近づかなければ無意味に人間を襲ったりはしなかった。

 しかし、奴らに乗っ取られてからは……すまない。ぼんやりと記憶があるようだ……】


「……まぁ、こっちではうまく話を合わせておく。君たちの巣の邪魔にならないように資源は利用させてもらってもいいかな?」


【もちろんだ、大いなる父の使いであるハヤテにはこの大地を利用する権利があるだろう。

 その邪魔はしない】


「……もしよければ、巣を谷の上に移動しないか?

 谷底はさっきみたいな奇襲に対応できないし、巣を作るのに協力するぞ?」


【申し出はありがたいが……良いのか?】


「ああ、犬は大好きだからな!」


 最後には本音が駄々洩れになった。

 実際ハヤテは巨大な狼にモフモフしたくてうずうずしていた。

 その後、許可を得て好きなだけモフモフさせてもらったことは言うまでもなかった。


「しまった、これ登らないといけないのか……」


 治療した狼達もとりあえず落ち着いてくれた様子だった。その後ハヤテは残念ながら亡くなった狼達を弔い、パラス族の死体の処理などをして崖から上がることにした。


【ハヤテよ我が背に乗るがいい】


「いいの!?」


 喜んで狼の背にしがみつく。巨大な狼の背中に乗る。夢のような出来事であった。

 軽々と巨体が空を飛ぶ、小さな突起を利用してみるみる崖を駆けあがっていく、背に乗っているハヤテは驚くほど衝撃を感じなかった。まるで猫のように衝撃なく崖を登っていく狼に感動を覚えるのだった。


「あっという間だな!」


【あれは……ふむ、仲間たちがアレが来て大層驚いたがなんなんだ? と聞いている】


「ああ、俺が空からやって来た時に荷物を入れて降ろしたんだ。

 騒がせて済まないと伝えておいてくれ」


 そういいながらも救助艇を操作して改めてゆっくりと荷物を確認する。

 狼は大きな体でチラチラと覗こうとしている。


「そういえば君の名前は何というんだ?」


【我か? 大いなる父からはポチと呼ばれている】


「ぶーーーーっ……、あいつ……もっとましな名前を……ギャップで可愛いけども……

 俺がポチと呼んでも構わないのか?」


【ああ、ハヤテになら問題ない】


「それじゃあポチ、これから俺の仲間が君たちの家を作っていく。

 なのでこの地に来る人間は襲わないでほしい」


【わかった】


 それからハヤテは救助艇を立ち上げカフェルたちの待つ場所まで移動する。

 マイア、カフェルたちは無事に帰ってきたハヤテの姿に安堵し、同時に緊張から解放されてほっとしていた。


「アニキ、手に入ったんですね」


「狼はいなかったの?」


「いや、話せる狼たちのリーダーと仲良くなったよ。

 今までの人間が襲われていたのはパルス族の性だった……

 そのパルス族の頭も潰しておいたから、この周囲からはしばらく撤退するはずだ」


「な、なんてこと……。パルス族の巨大な奴を倒したってことですよね?

 ど、どうやって? 王国の軍隊でも追い返せるかどうか……」


「訓練次第で皆も倒せるようになるよ、というか、なってもらう。

 それにこの場でやることもいろいろできたし、忙しくなるぞー」


「そういえばアニキ、またこの車が手に入ったってことはこの間の工場みたいな凄い物が……」


「おお、そうだそうだ。俺の得物のもう片方のこの腕輪と、そして工作機が手に入ったよ。

 プラントと合わせて建築や形成にも使えるし、大規模採掘でもかなり使える。

 いいタイミングで戻ってきてくれた」


 ハヤテはポンポンと救助艇を叩く。

 それからハヤテ達一行は一旦村へ戻る。

 今回のことの顛末を説明して丘の開発拠点と狼達の住居を作る人材を呼んでこなければならない。


「もちろん我が町からも人を回しますので、()()()()()()()()()()()


 シーラーはしっかりしていた。

 

 初めて見る狼たちのリーダーポチの威風堂々とした姿にはじめは村人たちは驚いたが、ポチの命令で人間と仲良くしてくれる狼たちの愛らしさに少しずつ溝は埋まっていった。


 巨大なドックパーク、もといウルフパークは驚くべき速さで完成する。

 雨風を避けられる犬舎にハヤテが掘り出してかけ流している水源。周囲を守る高い壁は彼らの安全を守るだろう。壁に備え付けられた高台からは周囲に接近するパレス族を容易に発見できる。

 ポチが建材であれば奇襲を受けないこの地は十分に安全であると言えた。


【素晴らしい場所だ。ここでなら我ら安寧な暮らしが送れる】


「気に入ってもらって良かったよ。人間が出入りすることもあるだろうけど、仲良くやってくれ」


 狼の住む町、後に人とのパートナーシップを結ぶ彼らの大切な故郷となる。


 そこから少し離れた谷では急ピッチで採掘工場が作られていく。

 パレス族たちが開けてきた穴の奥から聖脈のすぐ側まで移動することが出来、非常に希少な鉱石が手に入ることになる。

 こうして、ハヤテ達は重要な生産拠点を手に入れることが出来るのであった。


 


 

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