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一日でどっと疲れた。
ミュラー公爵邸に帰ってまず最初に豪華なドレスを脱いで、着なれたドレスに着替えた。
しかし、女の争いは実に恐ろしいということが改めてわかってしまった。
女子学校に通っていたらさぞかし大変な目にあっていたのではないかと思うと今の学校を選んで良かったとしみじみ感じる。
このあと、夫人とお茶を飲み直そうという話になっていて、早く行かなくてはならない。
メイドさんに案内されて庭のテラスに行くと既にミュラー夫人は座って待っていた。
「今日はお疲れ様。」
待たせてしまって大丈夫かと思っていたが、笑顔で私を労う言葉をかけてくれた。
「こちらこそ、お付きあい頂きありがとうございます。お母様と一緒にお茶会に出たのは何年も前のことですから、ご一緒してくださって本当に嬉しかったです!」
「あら、それなら良かったわ。」
話が弾んで、思ったよりも時間が経ってしまった。
そろそろ帰ろうかと思っていたとき、レイがテラスに顔を出した。
「アイリーンはもう帰るのか?」
「うん、そのつもり。今日はレイのお母様を貸してくれてありがとう。」
レイとは朝会ったのに、久しぶりに会った気がするのは一日が大変だったからだろうか。
「アイリーンがさっきいったことは本心なんだよな?期待してもいいんだよな!」
さっき?何のことだろう。
そもそもレイと何話したっけ?
「忘れたとは言わせないぞ!俺のこと好きか……」
「あーーわー!忘れてないです!覚えてます!!」
それ以上聞いていられなくて、レイの口を塞いだ。
見なくても今のジブンノ顔が赤いことくらいわかる。
そんな私たちの様子を見ていたミュラー夫人が突然笑い出した。
「レイは結構いや、かなり強引だからアイリーンちゃんが強引に付き合わされているのかと思っていたけど、心配無さそうね。この調子で結婚して早く孫を見せてほしいわ!」
ま、孫ーー?!
いきなりそんなのハードルが高すぎますよお母様!
「ああ。任せておけ。すぐにアイリーン似の可愛い女の子の子供を見せてやる!」
「ちょっとレイ!いくらなんでもそれは急ぎすぎじゃ……。」
「そんなことない。俺はアイリーンが好きすぎてこれ以上待てないくらいなんだぞ?」
恥ずかしい!
でも正直に気持ちを伝えてもらえて喜んでいる私も同じようなものなんだろうな……。
この日、私は公爵家の人たちから生暖かい視線で送り出されたのだった。
次回からまた、舞台が学園に戻ります!




