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姉が結婚するので家を出ます。  作者: 如月雨水
Latus ad latus 《隣り合わせ》
25/41

2

恋愛、恋愛と考えながらしないと恋愛っぽい話が書けないのが辛い。文才ないのがもっと辛い。甘さが良く解らなくて辛い。手っ取り早く、恋愛ゲームでもしてこようかな・・・。

オルフさんが語るのはまだ、人界と魔界の区別もなく過ごしていた時代――つまりは一億年前の話だった。

どんだけ昔だよ!とか、そんな時代のことをよく覚えて・・・。とか、色々と言いたいけど静かに話を聞く。だって下手にツッコんだら話が逸れそうだし、脱線して長くなるのは遠慮したい。でも心の中で叫ぶ。――歴史が今ここに語られる!

・・・声に出さなかったのは、図書館の主である司書さんが無言で見る眼がきついからです。特にライさんに向けて「仕事はどうした」と言いたげな眼が・・・・・・ライさん、仕事から逃げるために私を利用しましたね。じろりとライさんを睨み、足を踏んだ。その後にデコピンされたけど、仕事から逃げたライさんが悪いから謝りませんよ!

ああ・・・声に出して叫びたかった。

「――――我とシビルが出逢ったのは、人界の今は神殿となっている場所だ」

出会った、ではなく出逢ったなのか。

なんて言わない。

「あそこはもともとシビルが住んでいた小屋があって」

空の聖女が小屋暮らしってどう言うこと?とは口を挟まない。

「国の人間に迫害され、魔女と畏怖され、嫌われながら生活していた」

「ぇ、じょ・・・冗談?」

「悲しいことに事実。我はたまたま、そこを訪れて若い男4、5人に暴行されてるシビルを見つけた。殴る蹴る、だけじゃ飽き足らず犯そうとまでしてたから流石にね、見て見ぬふりを知るのは可哀そうかな、と思って助けたんだ。それが我とシビルの最初の邂逅」

苦笑したオルフさんは、さらに言う。

「もっとも、最初の言葉は感謝ではなく、相手を半殺しにしたことに対する怒りの言葉だったが」

・・・ん?

「シビルはあれだけの眼に遭っていながら、誰も嫌わず、誰も憎まず、誰も恨まない。変わった女だった」

それは、ただの変人なんじゃないでしょうか・・・?

「それにだ、猫の獣人だということを魔法で隠し、人間に擬態して生活していることも我には理解できなかった。魔族ならば我らの元へ来ればいい。なのにそれをしなかった。何故か。問うた我にシビルは言った。――――『人として生きてみたい』と。まったく、変な女だった」

最初の印象はそうだと語るオルフさんの眼は、優しく温かい色を宿していた。

「それが面白くて何度もシビルの元に通い、そのたびに害されているシビルを助けた。そこから普通に知り合いになり、友人になり、親友となっていったんだが・・・ある日、とてつもなく気に障る、不愉快な男が現れた。そいつはシビルの幼馴染だと言い、シビルに求婚をしていた。シビル曰く、16になってからずっとされているらしい」

物凄く、嫌そうな顔でオルフさんが吐き捨てた。

「そいつは初代勇者で」

まさかの初代同士の邂逅・・・!と、すれば勇者の容姿は美男子ですね、判りました。

「他に数人の女を囲ってるくせに、シビルに手を出そうとする不誠実な男だった」

「・・・お、おぉ」

最低だ、その勇者。

そこから始まる、オルフさんの愚痴とシビルとの結婚までの経緯をまとめると――――こうだ!


七聖女と言う名がまだないため、空の聖女の力が魔女のモノだと思われていたシビルを助けるため、初代勇者はシビルに何度も結婚を申し込んでいた。けれどシビルは初代勇者を幼馴染以上の存在に見れず、また、女にだらしない部分を知っているため色んな面倒ごとを避けるために首を横に振り続けていた。初代勇者も時間をかけてシビルを落とすつもりだったが、シビルと仲のいいオルフさんの登場で焦り、暴力をふるいだしたという。――最低だ。

で、初代勇者にまで蔑ろにされるシビルに追い打ちをかけるよう、当時の王を操って・・・は言い過ぎかもしれないけど、国を動かしていた当時唯一の聖女、と言われた森の聖女がシビルは魔族から国を護るために必要な生贄だと告げたらしい。まぁ、空の聖女の力を使えば結界ぐらい簡単に張れる。森の聖女には出来ないことですからねぇ・・・!と、結界を使えないし、出来ると知らなかった私が威張ることじゃなかった。

当時の王は初代勇者や騎士に、シビルを捕らえることを命じた。

民が不安がるために魔女狩りを行う、と理由をつけて。それに素直に従った騎士達はシビルを恐れていたから仕方がない、のかもしれないが・・・初代勇者はなにやってんだ。と思った。シビルが魔女ではないことを知っているはずなのに。と不快に思った私にオルフさんはさらりと爆弾を投下した。

――初代勇者はシビルに選択を迫った。自分と結婚するか、死ぬか。

結婚するなら命を助け、自分の監視下の元、不自由ではない程度の自由を与えると。死を選ぶならば殺す、と告げたらしい。頭が痛くなりました、私。と言うよりも、どうしてそれをオルフさんが知ってるの?と思ったら、シビルの傍に入れない時用の護衛から話を聞いたそうだ。その護衛は影の、がつくけど・・・結局、連れて行かれるのを止めない辺り仕事を放棄してるよね。それもオルフさんの指示?白い眼を向けてしまった。

・・・が、どうやら違うようで。何でも白銀の乙女の指示でシビルをただ監視しているだけにしておけ、と言ったそうだ。ここで何故、白銀の乙女?と思ったがどうやらシビルが処刑される場所に運命を見るノルニルならぬ、時の三神が現れるらしい。その当時から捕まえてフルボッコ、あるいは殺す気満々だったんですね。恐ろしい。

白銀の乙女の命に従ったけど、モヤモヤイライラなオルフさんは我慢が出来ず・・・・・・。

生贄として処刑される当日、その場所に突如として登場したそうです。そこにはシビルだけじゃなく当然ながら初代勇者もいて、当時の王も森の聖女もいる。そして目的の時の三神は・・・いなかったそうだ。白銀の乙女の舌打ちが聞こえた気がする。

首輪や枷をはめられた上に、鎖で四肢を雁字搦めにされたシビルを見てオルフさん、冷ややかに森の聖女を見て嗤ったそうです。そして告げたのは「くだらない」と言う冷ややかな台詞一つ。シビルの拘束を解き、その場から連れ去ろうとするオルフさんに初代勇者が剣を突き付け――激しい戦闘になる前に護衛の影が初代勇者の右腕を切断、流れるように胴を蹴り、元いた場所に返したそうで・・・。

あ、ちなみにその護衛の子孫がルシルフルらしい。・・・信じられない。

初代魔王陛下の登場に驚いたのか、慌てたのか不明だが、シビルは魔女だ、悪魔だと騒ぎ、殺さなければ世界に害が及ぶとうるさく喚く森の聖女にオルフさんが何か言う前に白銀の乙女が降臨。「時の三神に良いように使われ、望みのために王を誑し込み、国を自分勝手に動かした愚か者が、まさか七聖女の1人――森の聖女だとは嘆かわしい」的なことを言ったそうで、それから白銀の乙女は七聖女のことをその場にいる者に教え、時の三神の甘言かんげんに乗った森の聖女に呪いをかけたようで・・・。その呪いは魂が壊れない限り、何度も森の聖女として生まれる、と言うものらしく、現在に至るまで森の聖女は死んでは生まれ変わり、生まれては死に、の繰り返しらしい。それも一度、体験した死では死ねない、と言うおまけつつきで。えげつない。

で、話を戻すと無事にシビルを魔界に連れ帰ったオルフさんは、シビルに対する感情に気づいて猛アタック!・・・する前に、シビルの傷が治るまで辛抱強く待ち、親友として接し――悪友と呼ばれるまでになったそうです。

仲が深まったのはいいけれど、それはオルフさんが望んだ仲ではなく・・・焦れ焦れとしていると他の魔族がシビルの魅力に気づいたようでアタックをし始め、とうとうオルフさんがキレたそうな。雰囲気も何もない、勢い任せの告白にあっけにとられる周りを無視し、シビルを連れて例の場所、永久氷雪になる前のあの場所に連れて行って再度、告白。

間があったが了承を得られ、2人は結婚することになりました――めでたし、めでたし。


うん、解り辛いけどこんな感じかな!

そして愛を育んだ2人に子供が出来ました。と言う話に繋がり、シビルが死ぬ原因とか私のことにも関係するんですよね。・・・はぁ。

「しっかし、リィンが普通に生まれてたら俺より年上だったのかと思うと・・・なんとも微妙だな」

「・・・は?」

「あれ、理解してなかった?」

いえ、考えないようにしてたんですよ。

「でもそうしたらリィン、今、しわくちゃのおばあちゃんだよな」

「言わないでくださいよ!」

「そう考えると、この状況は俺にとってありがたいな」

ぽそりと何か呟いたらしいけど、生憎と小さすぎて私の耳には届かなかった。何かいいました?首を傾げて問うても、何でもないと笑われて流される。うぅぅん、その笑みが妙に怪しい。

「話は終わりだが・・・・・・おい、今代の魔王陛下。愛し子と距離が近すぎやしないかい?何故、そんなに密着する必要がある。広いソファにどうして、愛し子を膝に乗せている!」

あ、漸くツッコんでくれた。

そうなんです。私、普通にソファに座ったはずなのに気が付けばライさんの膝の上にいて、突然のことと密着度に硬直して今の今までいたんです。・・・脳内でオルフさんの話にツッコんではいたけど。

わたわたと動かしていた両手は指を絡めるようにライさんと繋がり、背中に持たれるように私に寄りかかっている。・・・重くはないけど、恥ずかしさが天元突破しそうです。

司書さんの厳しい眼つきが生暖かいモノに変わり、ライさんにぐっと親指を見せているのがとても気になる。何その行動。さっきまで仕事しろ~!な不機嫌オーラだったのが一変して、応援モードになってるの?

「婚約者を愛でて何が悪い」

「こん・・・っ!」

「ヘイズの実を食べたから、俺とリィンは婚約・・・いや、結婚して夫婦になったんだよ」

「なってませんよ!?」

何を言い出すんだこの男は!!

確かに食べたよ。無理矢理だけど食べましたよ?!でもね、了承した覚えはないんですけど・・・!!

「ヘイズの実を・・・食べたのか、愛し子。こ、今代の魔王陛下と・・・?」

愕然とした表情のオルフさんに、渋々とだが頷く。

「なんて、ことを・・・っ」

血涙を流すオルフさんに引きつつ、どう言うことだと首を傾げた。・・・っは!そう言えばなかったことに出来ないって、ユフィーリアが言っていたような気がする。ど、どう言うこと?!

オルフさんの血涙と関係が・・・?


「ヘイズの実が神聖の果実と言われるのは、神への誓いと契約をすることが出来るからだ」

は?

「幸せな未来、幸福な家庭、祝福を意味するのは神がそれを約束するため。伴侶となる者を裏切らず、不誠実にならないことを誓うことでそれが現実になる・・・っ!」


えっと・・・つまり、神に「この人と共に健やかなる時も、病める時も」なうんたらを誓うことで、神から絶対の幸せな未来と幸福な家庭が祝福される・・・と?

この場合、神と言うのは白銀の乙女なんだろうか。

それとも別の・・・・・・?

いや、そんなことを考えてる場合じゃなくて!

「誓いを破り、契約を破棄すると言うことは神を裏切るということ。・・・だからなかったことには出来ないんだ、愛し子」

それをしたら不幸で不運な人生を送ることになる、と言うことですか。

絶望した・・・!

私は、絶望しました!

まさかそんなことだとは知らず、飲み込むのが嫌だからと頑なに食べようとしなかった過去の自分を殴りたい。殴って今すぐに飲め!食べろ!と襟首を掴んで叫びたい・・・。ああ、なんてことだ!

すりすりと頭に頬を寄せるライさんの腹部に肘鉄を食らわせ、きっと睨みつける。

「そう言うことは私の口に押し込める前に言いません、普通!」

「リィンが大人しく食べてたら問題なかったんだよ」

「・・・っく」

「今はそれでよかった、とリィンの行動に感謝してるけどな」

「・・・オルフさん、ヘイズの実って魅了系の効果があるんですか?ライさんの反応が変」

「そんな効果はない。悲しいことに、そんな効果はない」

力一杯の否定ですね。

じゃ、じゃあこの行動は一体・・・・・・?まさか私に惚れた?好きになった?愛してる?だからこんなスキンシップが多いのですか?いやいやいやいやいやいやいやいやまさかそんな。引く手数多のライさんが、私に惚れた?私を好きになった?私を愛してる?――――っは、ありえない。

鼻で笑って即否定。

ないわ、ないない。

思い出してごらん、私。ライさんと旅した日々を・・・!

そんな素振り、まったく、これっぽっちも、欠片もなかったでしょう!!あったら一緒に寝た時に何かあったはずだしね!・・・いや、あっても困るわ。

「あ、ペットに向けるような愛情か」

「違う」

笑顔で即答・・・だと!

「最初は空の聖女の可能性が高いから旅に同行して、空の聖女だから傍にいてみようと思った。けど、リィンがあまりにも面白くて空の聖女とか関係なく興味を持った」

「あの、それ・・・嬉しくないんですけど」

「リィンといると退屈しないし、何より相性がいんだろうな。普通、俺の魔力に長時間耐えられる者は魔族の中でも少ない。魔王と呼ばれる奴だって、俺と半日いるのがやっとだ。なのにリィンは一日一緒にいても問題ないし・・・。これは俺の魔力とリィンの力の相性がいんだろうな。空の聖女、ってことを抜きにして」

言われてみれば、ライさんの傍に魔族の誰かが3時間以上いた記憶がないような。城下町に行った時も、旅をしていた時も長くて1時間しか外をぶらついてない。露店だって1、2分見てすぐに別の場所に行ってたっけ。

あれは、ライさんの魔力が関係してたのか。ほへー・・・。

「そこの初代魔王陛下は別だけど」

嫌そうな顔でオルフさんを見たライさんが、溜息を吐き出した。

「初代魔王陛下だって、空の聖女を伴侶と決めた決定打は同じだろう」

沈黙は肯定と言うことか、オルフさんは何も言わずそっぽを向いた。


「だから俺がリィンに想いを抱いたって、何も言えねぇよな?」

むしろ言わせない口調ですけど。


「――――と、言う訳でリィン。今日から俺と一緒の部屋だから」

「どう言うわけ?!え・・・う、嘘ですよね?嘘ですよね!」

「折角、自覚したんだから一緒にいたいって思うのは当然のことだろう?俺、誰かを愛するのって初めてだからどうやっていいのか解んねぇけど、リィンのことは傷つけないから安心しろ」

・・・チュ、チュッてひ、額にく、くくくくくくくくく口づけがっ!!

顔が赤くなって耳元で爆発音が聞こえた。絶対、頭から湯気が出てる。うわ、うわぁぁぁ、な、何を恥ずかしいことをさらりとやっちゃいますかこの魔王陛下はっ!

え、ちょっ・・・司書さんが泣きながら歓喜の声を出していらっしゃる!?

って、今気づいたけどユフィーリアさんやルシルフルまでいたよ!無表情で拍手をするユフィーリアさんは「御子の世話はこの肉奴隷にお任せください」とか何を言っているんですか?!複雑な表情で滂沱の涙を流すルシルフルなんて「喜ばしい、喜ばしいけれど・・・っ」とライさん曰く、初めて好きになった相手が私なことが不満なのが良く解ります。

「・・・ヘイムの実を食べるなと禁じていればこんな、こん・・・な」

ふらり、幽鬼のように立ち上がったオルフさんが虚ろな眼でライさんを見た。

こ、怖い。

「今代の魔王陛下」

低く、温度のない声でオルフさんは言う。

「愛し子を・・・我が子を、頼む」

頼まないで!

「だが結婚は許さないから手は出すなよ!!」

ま、待っておいてかないで!この状況で私を置いていかないで、オルフさん!!

凄まじい、としか掲揚できない速度で図書室から去って行ったオルフさんの姿はもう見えなくて、ゴロゴロと猫のように喉を鳴らしてすり寄ってくるライさんに困惑した。どんな展開だ、これは・・・っ。

頭が痛くて仕方がない。

ライさんが私を・・・?え、冗談抜きで?・・・いやいやいやいやいやいや、そんな馬鹿な。どんな超展開ですか。誰得のご都合主義?誰が望んだことですか、ちょっと。

「俺がリィンに向ける想いが信じられない」

「はい」

あ・・・即答してしまった。

「まぁ、当然と言えば当然だろうけど結構、ショックだな。うん、地味に傷つく」

とてもそうは見えない顔で、悲しそうに言われた。

「初代魔王陛下もこんな想いをしたのか、と思うと笑えるけどな」

私の髪を弄りながら、耳に触らないでください。

ぞわぞわする。

「まぁ、時間はあるから焦る必要もねぇんだけど」

「いや本当、恋とか愛とかそう言うのライさんの勘違いですよ。錯覚ですって、気のせいですってば」

「だったら俺、早々にリィンのこと見捨ててたけど。興味がないことには梃でも動かないから」

「怠惰の魔王だから?」

「怠惰の魔王だから」

「わ、良い笑顔」

キラキラとしたエフェクトが見えて、眼に痛いです。これって実は攻撃魔法だったりしますか?なんて馬鹿なことを真剣に考える程、眼に痛い。

眼が、眼が瞑れるぅぅ・・・。


「――では、限がよさそうなので仕事に戻りましょう」

機械的な声で告げたのは、ユフィーリアさんだった。

「そういう約束でしたよね、魔王陛下」

昨日見た姿が嘘のように、仕事が出来る女になっている・・・!


「仕事なんてバルバゼスにやれせればいいだろうが。あんな、ハンコを押すだけの仕事、誰だって出来るだろうーが」

ケッと唾を吐き出さんばかりに告げたライさんに、表情一つ変えることなくユフィーリアさんが首を傾げた。こてん、ではない。ごきり、と。

・・・なんか、不吉。

「生憎、魔王陛下でなければ決済できない仕事が山とありますので。あ、ちなみに逃げた際は老害が嬉々として魔王陛下狩りを行うそうです。そして駄犬も泣く泣く、協力する手はずとなっておりますのであしからず」

「・・・おい、ルシルフル」

「書類が書類でのすので、申し訳ありません」

明後日の方を向き、だらだらと滝のように汗を流すルシルフルの声が小さくなっていく。うん、殺気と威圧が半端ないですもんね。

余波を食らって私も脂汗がだらだらですよ。傍迷惑な。

「それに問題はないかと思われますよ」

何が、何を?首を傾げた。

「恋愛感情かはさておいて、リィン様は魔王陛下のことを一番に信用し、信頼していますから」

「は・・・はぁ!?」

何を言い出すんですかこのメイドは!!

ちょ・・・ちょっとライさん。期待がこもった眼で私を見ないで。

「よく、思い出してください」

何を!

「死にそうになった時、誰に助けを求めましたか?1人になった時、誰を思いましたか?」

「・・・」

「それが答えだと、わたくしは思います」

いや、まぁ、確かにその場にいないライさんに助けを求めたことや、ライさんに逢えるかな、とか思いましたよ。思いましたとも。でもさ、だからってそれが恋愛感情ってやつになるとは限らないじゃないですか。ほら、子供が親に向けるような感情・・・・・・は、ないな。

と言うか、アレ。

私、最初に死にかけた時に元恋人(グレン)に助けを求めたっけ?――してない、な。

むしろ誰かに助けを求めたこと、ライさんと行動するまで一度もない・・・よう、な。いやいやいやいやいやいやいや、え・・・え゛。

私、付き合っていた相手(グレンシード)に助けを求めたこと・・・そう言えば、ない。

と、言うことは・・・つま、り?

「無意識ではありますが、魔王陛下に惹かれていたのでしょうね」

心を読んだかのように告げるユフィーリアさんに、言葉がでない。

いや・・・そんな、まさか。ぅえー―――――――――!!!

「けれど、無意識だからこそ認識しておらず、抱く感情が何か気づかずにいるようですね。つまり――――リィン様が魔王陛下に対するお気持ちを気づかせ、認めさせることが魔王陛下の恋の成就へと繋がります」

「ふぅん、成程ね」

いや・・・いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやちょっと待って!

「無意識とは言え、恋情、あるいは恋慕を抱いている可能性は大です。ゆっくり、焦らず、けれど時間をかけずに落とすことが重要かと」

「じゃ、そうするか」

しないで!

あ、あわわわわ・・・。何やら私攻略法を話し出した2人からそっと顔を背け、助けを求めるようにルシルフルを見た。彼なら・・・ライさん大好きわんこならばこの状況をどうにかしてくれるはず!むしろしろ!

期待を込めてルシルフルを見た。


「正妃にするための教育をしないと」

「お前もか!!」

味方が、いない!

なにこの状況、辛い。辛すぎるっ!


「さて、それじゃあ何から始めようか」

「ひぃ」

頬杖をつき、私に微笑んだライさんが恐ろしい・・・っ。

「逃がすつもりはないから、早々に諦めてくれよ?」


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