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探偵の日常

 怪盗が宝物を盗むと予告を出してきたら、警察は、厳重な警備を敷くだろうし、宝物の所有者は、不安であり、その不安から、用心をするだろう。


 物事と日常は、安定的で、わかりきっている事で溢れかえり、埋れている。

 いや、埋れていく事こそ日常だと言えるのかもしれない。



 当たり前であるが故に、想像がつき、ここ最近に出会ったとはいえ、それを言ったら、確実に僕は痛い目にあうだろう。


 勿論、不快な思いをさせてしまう僕自身が、一番の原因であることは、疑いようもないし、対して親しくもない寧ろ嫌っているような、男性に呼び出されて、親友との楽しい時間を台無しにするような状況も、僕が痛い目にあう要因の一つである。


 しかし、それでも聞いてみようと思っていたのは、何かをもとめていたからだろう。




「親友の私が、あいつに最有力の容疑者扱いされていると思ったんだよ」

「誤解です誤解です、僕はただ、和歌子お嬢様のつまらない常識が殺すというのが気になったんで、親友の緑川さんなら何かご存知かなぁと」

「つまらない男なら知っているが、そしてそいつは今私を不愉快にさせている」


 多少の覚悟をしていて、たずねたものの、返ってきた返事は、不機嫌な返答であった。


 今までの付き合いで朗らかに答えてくれるような質問でない、いやそもそもこちらのする事に、苛立ちの欠片も無いような返答をしてくれたことなんて、稀である。

 それなのに、殴られてもしかたのない質問をしてしまった。


「ですよねぇ」


 愛想笑いを浮かべながら、殴られないようにジリジリと後ろにさがりながら、何故この質問を緑川さんにぶつけてしまったのだろうか、これまでの反省を生かせないとは、よほど切羽詰っていたのだろう。


 僕の痛みに対する覚悟もむなしく、きちんと頭にコブができそうなぐらいの威力の拳骨が、頭に衝撃を与えた。

 悶絶と言う言葉が妥当なぐらいに痛かった。


「和歌子は、突拍子の無い事をノリとか雰囲気でやるし、一々気にすることもないだろうが」

「そうですか」


 結局骨折り損のくたびれもうけというか、覚悟してまで聞いても、何も分らないという結果である。


 しかし、これもまた日常であるのかもしれない。

 埋れていく常識を思い、訪れるかもしれない非日常を考える事が、探偵なのかもしれない。


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