後輩を巻き込む先輩の図
ニュクスが我が家に来て、二日目。土曜日。両親は仕事に行ったので、今日も私とニュクスの二人だ。今はリビングのテーブルで朝ご飯のトーストをかじってる。
今日の予定は、もちろん決まってる。
「ダンジョンを、作ります」
「うん」
そう。ダンジョン作り。どうやって作るのかは分からない!
「どうやって作るの?」
「もらった山に入口を作って、亜空間を作ろうかなって。どんなダンジョンがいいかな? 洞窟みたいな感じ?」
「あー……」
どうしよう。私もゲームはそれなりにやるけど、だからといってダンジョンはこう、みたいなイメージはない。
ちょっと前なら洞窟とか迷宮とか思い浮かんだだろうけど、最近はそもそも別の世界みたいな扱いになってたりもするから……。難しいところだね。
「うーん……」
「ゆっくり考えてね」
「うん……。いや待って。もしかして私が決めるの!?」
「うん」
「マジで!?」
「マジです」
いや、え……。責任重大過ぎませんかこれ!? 嫌だよ怖いよまた絶対何か言われるじゃないか! ど、どうしよう本当にどうしよう。できれば誰かを巻き込んで……。
あ。
「ちょっと……。友だちに相談とか……しても、いいですか?」
「いいよ?」
「よし!」
こういう時は頼れる友だちだってね。もちろん巻き込むのは友だちだけじゃない。
みんな、だ。
スマホを取り出して、友だちに電話をかける。たっぷり十秒着信音が鳴ってから、電話に出てくれた。
『はーい……。先輩ですかー?』
「先輩です! 助けて!」
『え……。昨日から何かありました? どうかしましたか?』
「うん! とりあえず……。今から言う機材を持ってきて! 私の家まで!」
『あ、はい……?』
友だちに使いたい機材を伝える。かなり怪訝そうにされてしまったけど、一時間ほどで持ってきてくれることになった。
「ニュクス! 一時間ぐらい待ってね!」
「いいよー」
バターたっぷりのトーストをもぐもぐしながらのお返事。あらやだかわいい。いやそうじゃなくて。
とりあえず、友だちを待とう。頼りになる子だからね。とりあえずは、安心だ。多分。
だいたい一時間ぐらいして。待望の友だちがやってきた。チャイムが鳴らされて、軽い音が聞こえてくる。
「せんぱーい。来ましたよー」
「はーい!」
すぐに玄関に向かって、ドアを開ける。門の前にいたのは、大きなリュックを背負った女の子。私よりも一つ年下、中学二年の子で、ショートヘアにくりくりとした目が印象的だ。
パソコンとかゲームとか大好きな子だけど、第一印象はとても快活そうに見える。赤いパーカーに同じ色のプリーツスカートという格好。ちなみにいつもこんな服装だ。
名前は、朝比奈文。文ちゃんだ。
「おはようございます! 先輩が呼び出してくるなんて珍しいですね。何かありました?」
「うん。とりあえず入って。ほら、ほら」
「え? あ、はい……?」
家の中に文ちゃんを招き入れる。文ちゃんは怪訝そうにしながら家の中に入ってきて。
そして、リビングでくつろぐニュクスを見て、絶句した。
「え」
「む……」
ニュクスは文ちゃんを見て目を瞬かせてる。そして、すぐに我に返って立ち上がった。
「初めまして。私はニュクス。侵略者である」
「あ、え、あの……」
「あなたは彩花の友人だろうか。そうであるなら……」
「あ、ニュクス、オレンジジュースなくなってるね。お代わりいる?」
「いるー!」
「え」
「あ」
いや、あの……。ごめん。わざとじゃないの。別にそんな、狙ったわけじゃなくてですね……。だから、あの……。ニュクスさん? 涙目で睨んでくるのはやめよう? かわいいだけだよ?
そそくさとキッチンに向かって、オレンジジュースを用意する。文ちゃんのものも一緒に持っていこう。
リビングに戻ると、ニュクスと文ちゃんがちょっと気まずそうに、向かい合って椅子に座っていた。不思議な空気になってる……。ちゃんと紹介しないとだめだよね。
オレンジジュースをそれぞれの目の前に置いて、と。
「改めて……。文ちゃん。まずは来てくれてありがとう」
「いえ。先輩が呼んでくれるのは珍しいですし、いつでも来ますよ!」
「うん。じゃあ、紹介するね。この子は、ニュクス。侵略者さんです」
ニュクスを手のひらで示しながらそう言う。ニュクスはこほんと小さく咳払いして、言った。
「私はニュクス。侵略者である」
「うん。キャラ付けは今更だからやめようか」
「今更にしたのはどこの誰?」
「ごめんね!?」
わざとじゃないから! 本当に! たまたまだから!




