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神機妙算  作者: Vleuingu
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運命の建築家

運命を操る「建築家」マルクールヴィストと、謎の力を持つ青年テヒモシンの物語。

神より力を与えられた者たちが織りなす、冷酷で残酷な人間ドラマ。 裏切り、盗作、嫉妬、貧富の格差、偽りの愛……腐敗しきった現代社会を、冷徹な視点で切り裂く。

寿命を金に変える「死神の手」を持つマルクールヴィストは、悪人を罰し、弱者を救う。

しかし彼が消えた時、人々が失うのは「奇跡」ではなく、自分たちの欲望だった——。人間の本質をえぐるダークでシニカルな異能サスペンス。

「正義とは何か」「善とは何か」を問う、容赦ない物語。

第1章:滅亡の設計図

2023年1月1日、日曜日。

新年の陽光が木々の葉を優しく通り抜け、テヒモシンと12人の特別な仲間たちが暮らすシェアハウスを温かく照らしていた。グラスが触れ合う軽やかな音と、楽しげな笑い声が混ざり合う。

「おめでとう! 新年おめでとう! そしてネベルセル、ギギューム、セイントリーシュ、ユーセインダーの誕生日おめでとう!」

テヒモシンは微笑みながらグラスを掲げた。これ以上ないほどの完璧なスタートだった。12人の人間、12の孤独な魂。彼らは喧騒から離れ、互いに寄り添って幸せに暮らすことを選んだ。

しかしその平穏には代償があった。過去の傷により、仲間たちは人間そのものに深い憎悪を抱いていた。だから外界との唯一の橋渡し役は、常にテヒモシンの肩にのしかかっていた。彼は「大使」として、ネベルセルの精巧な衣装を売り、ファゼシンの庭から新鮮な農産物を届け、ディーススワノの魅惑的な音楽の著作権を交渉し、ギギュームが作る時代を超えた技術機器を流通させる——。

2023年2月1日、水曜日。

いつものように荷物を売りに行ったその日、テヒモシンは異様な現象に遭遇した。

重複死。

わずかな期間で5億人もの死者が出た。事故でも、犯人でも、疫病でもない。すべてが謎めいた突然死だった。そして最も恐ろしいのは、彼らが死んだ日が、ちょうど彼らの生まれた日だったということだ。残酷な運命の輪廻。

テヒモシンは人気のない通りで立ち尽くし、死の冷気を肌で感じた。最初はすぐに家へ戻り、12人の仲間を集めて一緒に調べようと思った。

しかし、彼は仲間たちのことを思い出した。ある者は人間を恐れ、ある者は嫌い、ある者は深く憎んでいる……。

「彼らは協力してくれるだろうか? 彼らにとって人類の滅亡など、ただの見世物かもしれない。」

「俺が一人でやるしかない。」

テヒモシンは小さく呟き、独りで調査することを決意した。

1ヶ月後——2023年3月1日、水曜日。

膨大なデータと断片的な手がかりに没頭した末、テヒモシンはその5億人以上の死が、たった一人の人物に関連していることを突き止めた。

その名はマルクールヴィスト。

上流社会から裏社会まで、彼は「運命の建築家」と呼ばれ、神のように崇められていた。

マルクールヴィストに関する噂は、すべての論理を超えていた。

彼は人の人生を変えることができる——背の低い者を高く、醜い者を美しく、太った者を痩せさせ、貧しい者を富ませる……。特に恐るべきは「未来透視」の能力だ。彼の助言により、宝くじやカジノの大企業が次々と破産に追い込まれた。警察さえも彼の前では頭を下げた。彼が介入すれば、24時間以内に解決できない事件など存在しなかった。

テヒモシンは資料を強く握りしめた。

これほどまでに完璧に運命を変えられる人間が、なぜ5億人もの人々を誕生日に死なせたのか?

もしかすると、その死すらも彼の壮大な設計図の一部なのだろうか?


第2章:神に選ばれし者たち

翌日、2023年3月2日、木曜日。

大学正門前にある千年樹の太い幹の下、奇妙な光景が広がっていた。簡素な机と椅子、そして傲慢な一文が書かれた看板——

「運命の建築家」

そこに座っていたのは、底知れぬ湖のような静けさを湛えた青年、マルクールヴィストだった。

テヒモシンが近づくと、マルクールヴィストは顔を上げず、落ち着いた声で言った。

「僕に何を求めに来たのかな?」

テヒモシンは意味深な笑みを浮かべ、相手の目を見つめ返した。

「君は未来を予知できるんだろ? じゃあ、俺がここに来た本当の目的を当ててみてくれよ。」

「いいよ。」

マルクールヴィストは軽く手を伸ばし、指先でテヒモシンに触れた。「思考読取」の能力を発動させようとしたその瞬間——

彼の瞳孔が大きく収縮した。

真っ白な光。太陽の中心を直視したかのような、灼熱の白光が意識を埋め尽くした。情報も、映像も、何もない。ただ圧倒的な輝きだけがあった。

「運命の建築家」の自信は一瞬で崩れ、顔に明らかな動揺が浮かんだ。

(こいつは何だ……? なぜ、見通せない……?)

マルクールヴィストは慌てて手を引っ込め、声がわずかに震えた。

「すまない……もう帰ってくれ。僕には君を助けられない。」

しかしテヒモシンは、最初とは打って変わった真剣な声で言った。

「いや、君なら助けられるよ。実は俺、今失業中でさ。君を師匠にしたいんだ。」

マルクールヴィストは乾いた笑いを漏らした。

「無理だよ。これは特別な力で、教えられるものじゃない。」

「それは神の力、だろ?」

その言葉に空間が凍りついた。マルクールヴィストは目を細めた。

「……君も、神から力を与えられたのか? いつから?」

「4年以上前だ。」

「僕もだよ」とマルクールヴィストは呟いた。「正確にはちょうど4年前。でも君とは会ったことがない。」

テヒモシンは平然と答えた。

「それは普通のことさ。俺たちが知らない神は他にもたくさんいる。モゴドトとか、ヒゴッダーとか、バゴドリー……。君の後ろにいる神は、もしかしたらボゴドフォーかもしれない。」

マルクールヴィストの目が変わった。同族を見るような視線になった。

「その力で、この4年間何をしてきたんだ?」

「いろいろだよ」とテヒモシンは古木の葉を見上げた。「最初の数ヶ月はヒゴッダーとの終わらない戦いだった。その後の4年は……ただ、仲間を探して結びつける旅さ。」

「羨ましいな」とマルクールヴィストは疲れたように息を吐いた。「僕はこの4年間、ずっとここに座って『人類を助ける』ことしかしてこなかった。」

「君みたいな人間こそ尊敬できるよ」とテヒモシンは励ました。「一箇所に座ったまま、世界を動かせるんだから。」

「ありがとう。それより……『力量階級試験』を受けたことはある?」

テヒモシンは首を横に振った。

「まだだ。俺たちのグループは最初6人だった。神に直接訓練されたのは俺だけで、他の5人には時間がなかったから、神は俺に力を預けて、俺が代わりに伝える形にした。」

マルクールヴィストは納得したように頷いた。

「うちの団長アンもルクザラフトと同じだね。彼も神に選ばれた者で、その後9人に力を分け与えた。」

テヒモシン:「君たちの力は何? 火、水、風、雷……?」

「俺たち10人全員」とマルクールヴィストは声を低くした。「『影』の力を持っている。」

テヒモシンは驚いた。「10人全員が同じ属性?」

「そうだよ。団長が影の力を持っていたから、彼が与えた力は全員同じ源から来ている。」

テヒモシンは少し考えてから聞いた。

「君たちのグループ名は? 俺たちは自称『神の子(Con Thần)』だ。」

マルクールヴィストは少し困った顔をした。

「まだ正式に決まってなくて……『神秘の暗夜』と『強大な影』の間で激しく揉めているんだ。」

「両方合わせて『神秘なる強権』とかはどう?」とテヒモシンが提案した。

「今度みんなに伝えてみるよ。」

テヒモシン:「それより、『力量階級試験』について詳しく教えてくれ。」

マルクールヴィスト:「それは4年前、団長から9人が力を授かった時の話だ——」



第3章:血と影の告発状

四年前の記憶——2019年1月1日、火曜日。

四年前、世界は衝撃に包まれた。一つの国家が自らを「上等」と称し、突如として台頭したからだ。それは「権力に狂った者たち」の国だった。

極端な民族主義と病的とも言える利己主義に支配された国。彼らにとって、他のすべての民族は「下等」、すべての宗教は「テロ」、第三の性を持つ者は「反動分子」として粛清されるべき存在だった。

この「権力狂国」は世界の悪しき見本となった。彼らがEn-rayに侵略を開始した日から、世界に平穏は訪れなくなった。

もし権力狂国がEn-rayに勝てば、他の大国も小国への侵略を始め、領土拡大を正当化するだろう。

もしEn-rayが権力狂国に勝てば、それは人類史に残る伝説となる——小国が大国による侵略を退けた、奇跡の勝利だ。

「嘘つき史上最大」と呼ばれる大統領の下、この国は理由のない侵略戦争を始めた。

「昔は我々の土地だった。今、取り戻すだけだ。何が悪い?」

その厚顔無恥な言い分が、意味のない戦争の火種となった。


指導者アン・モルクザラフトは、自分が見つけた者たちを集め、顔を合わせさせた。

アン・モルクザラフト:「ここにいる者たちは皆、すでに自分自身の復讐を果たしたな?」

「我々の信条はこうだ。相手が魔物でさえなければ、天の果て、海の底であろうと探し出す。たとえそれが骸であっても。」

彼は続けた。

「今の世界はあまりにも穢れている。だからこそ、この世界には浄化が必要だ。一人では到底、世界を救うことはできない。神は私に、助け手を集めるよう命じた。ここにいるお前たちは、神に選ばれた者たちだ。」

「神はお前たちの力がどれほどのものか知らない。ちょうど今、『権力狂国』という国が国際法を無視し、力に酔い、他国の独立・自由・主権・領土保全を自分たちが決めるものと思い込み、無意味な戦争を起こして世界を混乱させている。歴史に寄生し、自分たちが世界最強で最権力者だと信じている連中だ。現代において、いまだに戦争で他国を従わせようとしている。

お前たちの任務は、その無意味な戦争を止めることだ。

24時間以内に、直接戦争を引き起こした者たちを殲滅せよ。より多く殺した者ほど、神の階級は高くなる。」

アン・モルクザラフトは静かに告げた。

「さあ、自分たちの力を皆に見せてみろ。」


24時間後、運命の時計が一日の終わりを告げた時、階級表が確定した。

【神の階級】

時間双神 —— 2名

 それぞれ5億の命を消し去った。

三神 —— 3名

 それぞれ3,000万人の命を絶った。

四聖 —— 4名(マルクールヴィストを含む)

 それぞれ200万人の敵を殲滅した。

想像を絶する死者数を出したにもかかわらず、「権力狂国」はなおも影のようにしぶとく残存していた。


現実に戻る——2023年3月2日、木曜日。

「悪い、話を遮って」とテヒモシンは眉をひそめ、疑わしげな顔で言った。「しかし、一人で5億人も殺せるなんて……正直、信じがたい話だ。」

マルクールヴィストはわずかに唇を歪めた。

「最初、私も団長が結果を発表した時は信じられなかった。だが、あの二人の力を知った瞬間、納得したよ。」

彼は説明を続けた。

「ソガンストマイルムは時間を操る。人間を灰に変えるのも、精子に変えるのも容易い。一秒で百から数千人を殺せる。

オブラルテイクは空間を操る。あいつの視界に入った瞬間、相手は別の場所へ飛ばされる。高空に飛ばされて落下死、海の底に飛ばされて溺死、宇宙空間に飛ばされて落下死、肉食獣の真ん前に飛ばされる……何でも可能だ。」

マルクールヴィストは身震いした。

「あの二人はほぼ無敵に近い。時間神ソガンストマイルムは未来30秒先のお前の行動まで見通す。空間神オブラルテイクには近づくことすらできない。」

「では、お前たちの団長は?」とテヒモシンは尋ねた。

マルクールヴィスト:「我々の団長、『千年に一人の天帝』アン・モルクザラフトが最強だ。あの方は濃密な影の力を操り、一撃で権力狂国を世界最大の淡水湖に変えてみせた。」

テヒモシンは沈黙した。しかし心の奥底では疑問が渦巻いていた。

(彼らは本当に神か? なぜ命の数で力を階級化する? これは徹底的に調べる必要がある。)

テヒモシンの沈黙に気づき、マルクールヴィストは立ち上がった。

「とにかく、君も選ばれた者だ。一ヶ月間、試用期間を与えよう。何も学べなければ、即刻クビだ。」

「ありがとう」とテヒモシンは答えた。

マルクールヴィストはグループの集合写真を取り出し、テヒモシンに渡した。写真の中の顔を見たテヒモシンは思わず言った。

「みんな優しそうで、善人に見えるな……」

マルクールヴィストは腹を抱えて大笑いした。

「はははは! 何を言ってるんだ? この写真を撮った時、俺たちは皆、できるだけカッコよく、怒りに満ち、憎悪に燃えた表情を作っていたんだぞ!」

テヒモシンは微笑み、瞳を深くした。

「僕は目でだけ見ていないのかもしれない。心で視ているんだ。」

マルクールヴィストの表情が和らいだ。彼は写真の中の一人ひとりを指差し、「権能の神秘」グループの残るメンバーの詳細な紹介を始めた。


第4章:取引の機械と神の心

あの日から、テヒモシンは毎朝7時から夜7時まで、マルクールヴィストの傍らに控えていた。千年樹の下で、彼は常識が通用しない世界に足を踏み入れた。

2023年3月3日、金曜日。

初日の見習いは静かな観察で過ぎた。欲深い者たちが宝くじの当選番号を求め、警察官たちが事件解決を懇願しに来るのをテヒモシンは見た。マルクールヴィストはすべてを平然と叶えていった。

客が去り、闇が降りた頃、マルクールヴィストはようやく「奇跡」の裏側を明かした。

「私は触れることで、相手の残り寿命を見ることができる」と彼は落ち着いた声で言った。「そして助けるたびに、その一部を奪う。例えばさっきの宝くじ男は元々70年生きられたはずだった。私は40年を奪って、4億ドルを与えた。彼の30歳の誕生日は、ちょうど葬式の日になる。」

テヒモシンは呆然と口を開けた。

「働かず、楽して贅沢したい奴らもいる。そんな連中も助けてやるよ」とマルクールヴィストは口角を上げた。「短い間だけ思い切り楽しませてやる。そして死ぬ時、九泉で笑っていられるように。」

テヒモシン:「もし彼らが死ぬまでにその金を使い切れなかったら?」

マルクールヴィスト:「その場合は全額、私の口座に自動的に入る。」


2023年3月4日、土曜日。

見習い二日目。

19歳の怠惰そうな青年がやって来た。今すぐ金が欲しい、結婚するためだと言う。マルクールヴィストは助けを承諾した。

元々90歳まで生きられた少年は、70年の寿命を差し出す代わりに7億ドルを手に入れた。ただし寿命は残り6ヶ月——20歳の誕生日は彼の死期となる。

客がいない時間に、マルクールヴィストは過去の話をした。

「病院は金のない患者を救わない。能力はあるのに、だ。私はそんなケースを見たことがある。ある少年が母親を助けてほしいと私に頼んできた。どんな代償でも構わないと。母親は労働災害で重傷を負い、大金が必要だと言われた。病院は母親を放置し、金が揃うまで治療しなかった。家族は必死に借金をしたが足りず、母親は死んだ。」

「私がその母親を死の世界から連れ戻した。」

テヒモシンは水を飲んでむせた。

「死者を生き返らせることもできるのか!?」

マルクールヴィストは当然のように答えた。

「できるさ。私は神だからな。」

テヒモシン:「ではその少年は母親の代わりに死ぬのか?」

マルクールヴィスト:「いや、少年は元々100歳まで生きられた。私は50年の寿命を母親に与えた。母親がどれだけ生きるかは知らないが、少年は確実に50歳まで生きられる。」

その時、次の客が来た。

身長149cmの少女が言った。

「私はモデルになりたい。でも背が低すぎる。174cmにしてもらえませんか?」

マルクールヴィスト:「構わないよ。」

彼は少女を、希望する身長と同じ高さの不思議な箱に入れた。一時間後、少女は望み通りの長身で箱から出てきた。

テヒモシンは頭を抱えた。

(外に出て、ようやくこの世界がどれほど狂っているか分かった……)


2023年3月5日、日曜日。

見習い三日目。

病で重い体になった女性が訪れた。痩せたいが、家が貧しくて報酬を払えないと、恥ずかしそうに俯いた。

マルクールヴィストは言った。

「貧しい者は助けてもらえないのか? 金持ちだけが助けられるのか?」

彼は続けた。

「今は金がすべて、社会の道徳は崩壊した。金持ちは常に優先され、本当に助けを必要としている貧しい人々は見捨てられる。」

マルクールヴィストは優しく微笑んだ。

「安心してください。私は彼らとは違う。助けに貧富の差はない。金など私にはどうでもいい。私にとって大切なのは、すべての人を助けることだ。この社会で、誰一人として見捨てられるべきではない——金持ちであれ、貧しい者であれ。」

テヒモシンはそこに立ち、苦しむ女性に手を差し伸べる「建築家」を静かに見つめていた。

冷たい外見の裏に、驚くほど慈悲深い心が隠されていることを、彼は知った。


第5章:人間性の泥沼における契約

2023年3月6日、月曜日。

見習い四日目。

日が経つにつれ、テヒモシンはマルクールヴィストの傍らで働く毎日は、単なる奇跡の観察ではなく、人間について残酷なまでの教訓であることを悟っていった。

ある曇った午後、千年樹の下の静寂が、慌ただしい足音によって破られた。一人の青年が息を切らして駆け込み、乱れた服装のままマルクールヴィストの前に跪いた。両手にはまだ乾いた血がこびりついていた。

「助けてください……お願いします! 警察がどこでも追っています!」

青年は慌てふためきながら語った。困っている女性を見て助けようとしたところ、嫉妬に狂ったその女性の彼氏に殴りかかられ、逆上した末に思わず殴り殺してしまったという。

マルクールヴィストは青年を直接見ず、遠い目で虚空を見つめながら、冷たい透視を含んだ声でゆっくりと言った。

「これは皆への教訓だ。誰かがすでに恋人や配偶者を持っている場合、最も賢い選択は距離を置くことだ。恋に落ちた者たちは、恐ろしいほど自己中心的になる。愛の世界に足を踏み入れた瞬間、他の社会的関係を捨てる覚悟も同時にしているのだ。」

彼は青年の震える両手を見つめた。

「これからは、婚約指輪をしていたり、手を繋いでいる者を見たら、絶対に近づくな。彼らが困っていても、恋人に任せておけ。それが自分を守る最善の方法だ。……今回のケースは、救わない。お前は世間への警告の教訓となる。たとえ法の裁きを受ける形であっても、お前の犠牲は、無駄にはならない。」

言葉が終わると同時に、街頭の向こうから警察のサイレンが響き始めた。マルクールヴィストはすでにこの男の運命を知り、密かに通報していた。

警察が青年を連行した後、テヒモシンはまだ呆然としていた。彼はマルクールヴィストに向き直り、人間関係の複雑さについて尋ねた。

マルクールヴィストは小さくため息をつき、過去に扱った古い資料を取り出した。

「男の裏切りと女の裏切りの違いを知っているか?」

彼は静かに語った。

「女性が浮気した場合、よくある結末は、嫉妬に狂った夫が牢獄に入り、もう一人の男が死ぬことだ。不思議なことに、世論は時にその女性を最も無垢な被害者のように扱う。しかし男性が浮気した場合、悲劇は全く別の色を持つ。」

マルクールヴィストは記憶のページをめくった。

「私は見たことがある。妻が憎悪のあまり鬼と化し、夫の体を数百の肉片に切り刻む姿を。ある者は一族を連れて愛人を引き裂き、虚しい名誉を取り戻そうとした。また、ある女性は無力のまま泣き続け、日々萎れていくしかなかった。」

彼はテヒモシンの目を真っ直ぐに見つめ、最も誠実な忠告を告げた。

「要するに、平穏で安定した人生を送りたいなら、金科玉条はこれだ。すでに家族や恋人がいる者に近づくな。出口が血と涙しかない迷宮に、決して足を踏み入れるな。」

テヒモシンは言葉を失った。マルクールヴィストは単に外見や金を変えるだけでなく、人間の心の最も醜い暗部を、事件を通じて暴き続けているのだと気づいた。

「君はすべてを見通しながら、最初から介入して止めることはしないのか?」とテヒモシンは聞いた。

マルクールヴィストは立ち上がり、19時を告げる時計とともに机を片付け始めた。

「建築家は設計図を描くだけだ。その罠だらけの家に足を踏み入れるかどうかは、彼ら自身の選択だ。」


第6章:解放のための設計図

2023年3月7日、火曜日。

見習い五日目。

千年樹の下の空気が重く淀んだその日、無表情で疲れ果てた一人の少年が訪れた。

少年は重度の鬱病を患っていた。原因は父親だった。父親は常に少年を罵倒し、母親が庇うことで夫婦喧嘩が絶えなかった。家長主義の父親は「息子のためを思って」と言いながら、実際はただ怒りをぶつける相手を求めていた。ある日、激しく罵倒された少年は高層階から飛び降りようとしたが、母親と兄妹(家族は四人兄妹:男二人、女二人)に必死に止められた。

父親は常に自分が正しく、妻や子供のすることは間違っていると思い込んでいた。

マルクールヴィストは少年を見て、温かさのないが、深い理解を含んだ声で言った。

「なぜ母親は、父親が家長主義の男だと知りながら愛し続けているんだ? 男がイケメンだからか? 金持ちだからか?」

少年は小さく首を横に振った。

「分かった。父親は口が非常に上手いんだな? 相手の急所を突くような、皮肉や嫌味を巧みに使うタイプだ。」

少年が頷いた。

マルクールヴィストは口の端を歪め、皮肉たっぷりの笑みを浮かべた。

「女はいつも、口のうまい男に処女を奪われる。甘い言葉や巧みな弁舌に。」

彼は続けた。

「家長主義で独善的、保守的、女性を尊重せず、常に他人に命令し、自分が正しいと思い込み、物事が自分の思い通りにならないと他人のせいにする……そういう男は家庭を持つべきではない。子孫を絶やし、孤独のまま死ぬべきだ。そういう男は地球から絶滅すべき存在だ。」

少年は「建築家」を見上げ、希望と恐怖が入り混じった目をした。

マルクールヴィストは立ち上がり、コートの埃を軽く払った。

「問題を起こした者がいるなら、その者を解決すればいい。今、家に帰っていい。君の鬱病はもう治った。」

少年は訳が分からず呆然としていた。その時、ポケットのスマホが激しく振動した。

「出ろ」とマルクールヴィストが命じた。

電話の向こうから母親の泣き声が聞こえた。

「子よ……お前の父さんが……交通事故で死んだ! 早く帰ってきて!」

少年は凍りつき、顔色を変えた。マルクールヴィストはさらに冷たい現実を突きつけた。

「母親が不幸な結婚を続けながら離婚しなかった理由を知っているか? 経済的な壁だ。しかし今、父親が死んだことで、全財産が母親のものになる。」

「そんな……」少年は震える声で言った。「それは祖母のものになるよ。祖母は母親を家政婦のようにしか見ていない……」

「まだ祖母が生きているのか?」マルクールヴィストは異様なほど冷たい声で聞き返した。

少年が理解できないでいると、再び母親からの電話が来た。

「祖母も……亡くなった!」

少年は狂ったような安堵感に包まれ、必死に礼を言いながら家路を走り去った。長年の悪夢が、二人の死とともに消え去ったようだった。

テヒモシンは傍らで呆然と立ち尽くした。

「君は……このことも全部予知していたのか?」

マルクールヴィストはただ静かに微笑んだ。

テヒモシンは少年の背中を見送り、再び奇妙な師匠を見つめた。

マルクールヴィストの傍に何日もいたにもかかわらず、彼はまだ「技術」を何一つ学んでいなかった。唯一上達したのは、この「建築家」の残酷でありながら効率的な采配に対して、驚愕の表情を浮かべる能力だけだった。


第7章:道徳の破産

2023年4月1日、土曜日。

一ヶ月があっという間に過ぎ去った。テヒモシンは正式に解雇された。理由は残酷なほどシンプルだった——彼は「建築家」から何一つ技術を学べなかった。マルクールヴィストは、ただ驚いた顔をして立っているだけの人間を必要としていなかった。

テヒモシンは静かに荷物をまとめ、千年樹の下を後にして、12人の仲間が待つシェアハウスへと戻った。

2023年4月10日、月曜日。

一週間後、テヒモシンはいつもの穏やかな笑みを浮かべて、再び姿を現した。

マルクールヴィストは目を細めた。

「確か私は君をクビにしたはずだが?」

「ごめんね」とテヒモシンは頭を掻きながら、誠実な声で言った。「先週は家で解決しなければいけない用事があって、君の側にいられなかった。でも、たとえクビにされても、俺は君にくっついていくよ。」

マルクールヴィストは深いため息をついた。

「君は本当にしつこいな……まあ、好きにしろ。」

時間を潰すために、マルクールヴィストはつい先ほど去った客の話をテヒモシンにした。それは受験生の少年で、試験問題を事前に知りたくて訪れたという。

少年は学校でありがちな皮肉な話を語った。

同じクラスに、愚かで容姿も悪いが金持ちの女子がいた。母親が家庭教師の先生に個人指導を懇願したが、先生はきっぱり断った。「あんたの娘は怠け者だ。いくら教えても無駄だ」。

一方、同じく愚かだが貧しくて美しい女子に対しては、その先生は無料で指導するだけでなく、恋心を抱き、十数年連れ添った妻を捨ててでもその生徒に走ろうとした。

テヒモシンは聞き終えて、ただ呆然と首を振った。

「この世界は本当に……道徳などただの装飾品だな。」

その時、突然混乱した光景が広がった。

一人の女性が正気を失ったように全裸で、千年樹の周りをうろうろと歩き回っていた。その異様な姿に、周囲の空気が一気に重くなった。

マルクールヴィストは何も言わず、軽く指を鳴らした。

目に見えないエネルギーが一瞬で女性を包んだ。途端に、虚ろだった瞳が輝きを取り戻した。長年彼女を蝕んでいた統合失調症が、一瞬のうちに完全に消え去った。

テヒモシンは再び度肝を抜かれた。

(試験問題を当てる、鬱病を治す、今度は統合失調症まで……本当にすごい。こいつの能力に限界なんてあるのか?)

正気を取り戻した女性は、自分が真っ昼間に全裸で立っていることに気づき、激しく羞恥に震えた。マルクールヴィストは無表情で自分のコートを脱ぎ、彼女に掛けてやった。

落ち着きを取り戻した女性は、自分の悲惨な人生を語り始めた。

夫は大きな病院の院長だったが、19歳の医学部実習生と密会を繰り返し、彼女と幼い二人の子供を捨て、彼女を狂気の淵に追いやったという。

「私が復讐を手伝いましょう」とマルクールヴィストは氷のような声で言った。

「どうやって……?」女性は震えながら尋ねた。

「あの病院をこの世のビジネス地図から消します。完全に破産させます。」

「でも、どうやって……?」

「簡単です。患者がいなくなれば、病院など自然に潰れます。」

マルクールヴィストは圧倒的なSNS影響力を用い、たった一つの投稿をした。院長の卑劣な裏切り、糟糠の妻を捨て、二人の子供の未来を奪い、母親を精神疾患に追いやった一部始終を詳細に記した。

怒りの波は嵐のように広がった。市民はこぞってボイコットし、良心ある医師たちは辞職した。わずかな期間で、病院は建築家が設計した通りに完全に崩壊した。

数日後、女性は二人の子供を連れて千年樹の下に現れ、跪いて恩人に感謝した。マルクールヴィストは復讐を果たしただけでなく、母子三人にある程度の生活資金を与え、灰の中から新しい人生を始められるようにした。


第8章:貪欲の設計図と傍観者たち

2023年4月11日、火曜日。

朝の陽光が千年樹の葉をくぐり抜ける中、樹の下の空間は俗世の匂いがするニュースで淀んでいた。マルクールヴィストとテヒモシンは、世間を騒がせているネットニュースの見出しを一緒に眺めていた。

最初に目に入ったのはセンセーショナルな記事だった。

「56歳の夫と18歳の妻が赤ちゃんの誕生を発表」。

テヒモシンは舌打ちした。

「こんなプライベートな話までニュースになるのか?」

「有名人だからね」とマルクールヴィストは口の端を歪め、皮肉たっぷりに言った。「金があるから、報道陣に自分の人生を書かせているだけさ。君は驚くのか? 有名歌手の飼い犬が死んだだけでも一面トップになる時代だぞ。」

さらにスクロールすると、今度は夫からDVを受けている女性が、元彼に助けを求める泣き叫ぶ投稿が話題になっていた。

マルクールヴィストはテヒモシンを見て言った。

「あの娘が夫に殴られる理由、予想できるか?」

「元彼の連絡先をまだ残していたから……じゃないか?」とテヒモシンが答えた。

「正解だ。」マルクールヴィストは頷き、人心を透視するような目で分析を始めた。

「世の中の女には二種類いる。一つ目は、常に元彼と連絡を取り『保険』として残しておくタイプだ。夫や現在の彼氏の後ろでメッセージを送ったり、誘惑したりする。『複数人に餌を撒いておく』考え方だ。万一破綻しても、すぐに次の相手がいるように。

もう一種類は、誠実な男なら誰でも大切にする女性だ。一度新しい恋に落ちたら、元彼との一切の関係をきっぱりと断つ。」

ニュースは次々と流れた。子供を捨てたと非難される男性歌手の話だが、実際は相手の女性が十数人の男と関係を持ち、 paternity(親子鑑定)がめちゃくちゃになっているケース。あるいは「DV男」と呼ばれ、言葉と暴力で伴侶を踏みにじるスターのスキャンダルなど。

「今の報道って、本当に何でも書くよな」とテヒモシンはため息をついた。

その時、二人の目の前で一組のカップルが周囲を気にせず激しくキスをしていた。

マルクールヴィストが聞いた。

「あの男が何歳だと思う?」

「70歳くらいか?」

「82歳だ。隣の少女は18歳さ。」マルクールヴィストは平然と答えた。

二人は沈黙した。説明など不要だった。あれは愛ではなく、明確な利益の交換だ。誰も誰かに借りを作っていない、公正な取引だった。

マルクールヴィストはもう一組のカップルを指差した。

醜く野暮ったい男の隣に、花のような美少女がいる。

「あいつは重度の近親交配だ」とマルクールヴィストは残酷な事実を明かした。「家系が悪い劣性遺伝子を、美しい女と結婚させて改善したいんだ。どう思う?」

テヒモシンは眉を寄せた。

「どうしてあんな美しい娘が、あんな男を受け入れるんだ?」

「全部金さ。あの家の人間は以前、私に莫大な金を稼がせてくれと頼んできた。私は要望通り叶えてやった。あの娘はただの『血統購入計画』の一ピースに過ぎない。」

「あの娘は『金がすべて』という思考なんだな……」とテヒモシンが呟いた。

ここでマルクールヴィストが説教を始めた。

「金こそが人間の創造性と社会の発展を最も強く駆動する原動力だ。これを嘲笑したり非難したりする者は、さっさと家畜の檻に入れ。君たちの思考は現代社会に適合しない。ただの畜生だ! 金の価値を軽んじるなど!」

その攻撃的な言葉の後、空間が静まり返った。

テヒモシンは虚空を見つめ、静かで悲しげな声で答えた。

「なら、俺は家畜の檻に入るべきなんだろうな。金は失ってもまた稼げる。でも、一度失ったら二度と戻らないものがある。時間、行動、言葉、健康、感情、機会……

君の世界は金で回っている。でも俺の世界は、値段のつけられないもので動いている。」

千年樹の下で、二つの対照的な思想がぶつかり合い、運命を変える者と不器用な見習いの間に、見えない溝を生み出していた。


第9章:心生相とつながりの算術

2023年4月12日、水曜日。

千年樹の下は、画面をスクロールする乾いた音が聞こえるほど静まり返っていた。客の来ない一日、マルクールヴィストとテヒモシンはソーシャルメディアのニュースに没頭していた——人間性の最も生々しい暗部が晒される世界だ。

64歳の老人が18歳の妻を迎えたという話。皮肉なことに、その若い妻は夫の息子(44歳)や孫(24歳)よりも年下で、曾孫よりも少し年上程度だった。夫の家族は彼女を、時代遅れの商品を見るような軽蔑の目で眺めていた。

マルクールヴィストは画面から目を離し、諭すような低い声で言った。

「女は自分で自分の価値を創り出すべきだ。生殖機械や、男の玩具にだけなるんじゃない。」

テヒモシンはうんざりした様子でスマホを放り投げ、マルクールヴィストを好奇の目で見つめた。

「なぁ、君には人心を読む秘訣でもあるのか? どうして何でもすぐに本質を見抜けるんだ?」

「人は皆『人心は計り知れない』と言うが、それは経験が足りず、世間を知らず、人を見る目がないだけだ。」マルクールヴィストは人心論を始めた。「外見、話し方、仕草、性格——これだけでその人間のタイプは分かる。なぜなら心生相、相生命だからだ。」

彼は二本の指を立てた。

「最も恐ろしい人間は二種類いる。一つ目は『美人だが心が醜い者』——美しい外見と純粋な仮面を巧みに作り上げるが、中身は悪辣で偽善的、病的な害意を持つ者。二つ目は『醜く心も醜い者』——粗野な外見と狭量な心が一致している。醜いから誰も相手にせず、他人を中傷することで安い友情を買おうとする。」

マルクールヴィストは口の端を歪めた。

「結局、人間のエゴイズムさえ見抜けば大体当たる。誰もが自分さえ良ければいいと思い、『他人を害して自分だけ得する』心を常に温めている。経験を積めば積むほど、人を見る目は正確になる。幸せそうに見える者たちも、皆同じように盲目だ。彼らが見ているのは華やかな金ではなく、人心ではない。」

「では、どうすれば彼らを深く理解できる?」とテヒモシンは尋ねた。

「自分を彼らの立場に置くことだ。ただしそれは経験次第だ。経験が浅ければ視野は狭い。十分な経験を積んで初めて、人を正確に見極められる。」マルクールヴィストは少し間を置き、瞳を深くした。「俺からの忠告はこれだ。慈悲の心を豊かに持て。」

テヒモシンは自嘲するように笑った。

「それなら俺は余るほど持ってるよ。金は貧乏だけど、慈悲の心だけは大金持ちだ。」

その時、ぼろぼろの服装で、目が腫れたいじめられっ子の少年が助けを求めてやって来た。

マルクールヴィストは少年を見て、ゆっくりと諭した。

「人は優しくあるべきだが、優しすぎてはいけない。情に厚く生きるのはいいが、情に流されすぎてはいけない。この世で嫌われないためには、自分が他人より優れていることを見せびらかさず、力もないのに誰かに逆らわないことだ。」

テヒモシンが現実的な声で割り込んだ。

「でも今は、何もしなくても嫌われる時代だろ。人間は物質欲、名誉欲、嫉妬心が強い。誰かが自分より美しく優れているだけで、すぐに憎む。」

少年は激しく頷いた。

「テヒモシンさんの言う通りです。僕、何もしてないのに殴られます。」

マルクールヴィストはさらに軍略めいた言葉を続けた。

「孤立しては誰も生き残れない。つながりが人類最強の武器だ。同じ志を持つ仲間を作れ。強力な味方が後ろにいる者には、誰も手を出せない。そして一番大事なのは、親と教師にすべてを正直に話すことだ。黙って耐えてはいけない。」

「はい、それならできそうです!」少年の目に希望の光が宿った。

テヒモシンは少年が去るのを見送り、最後にマルクールヴィストに尋ねた。

「君は悪い面ばかり語ってきたけど、この世に本当にいい人はいないと思うか? 外見も中身も美しい人、または外見は醜いが心が美しい人。」

マルクールヴィストは長い沈黙の後、夕陽が沈む遠い地平線を見つめながら答えた。

「いるさ。」

彼はわずかに首を傾げ、視線を地平線から離さなかった。

「外も中も美しい人は稀だ。外は醜いが心が美しい人も稀だ。……しかし、稀だからといって存在しないわけではない。」

彼は机に手を置き、軽く指でリズムを刻みながら言った。

「問題は、人はよく勘違いするということだ。悪い人間が少し演技すればいい人だと思われ、良い人間は言葉を美しく飾らないせいで、逆に悪い人間だと誤解される。」

マルクールヴィストはテヒモシンに向き直り、鋭くも冷たくない目で言った。

「本当に良い人間は、自慢しない。傲慢にならない。承認を求めない。彼らは正しいと思うことをするからやるのであって、誰かに拍手されるためではない。」

夕風が強く吹いた。彼は目を細め、静かに続けた。

「そしてたいてい……そういう人間は、この腐った社会に気づかれる前に、潰されてしまう。」

静寂が訪れた。


第10章:利己の本質と肉体取引

2023年4月13日、木曜日。

千年樹の下で、マルクールヴィストは苦い茶を一口飲み、人類の記録を読み返すような目で虚空を見つめていた。

「知ってるか、テヒモシン?」彼は低い声で言った。「年配の人に『人生で一番後悔していること』を聞くと、ほとんどの人が答えるのは『他人にばかり生きてきたこと』だ。若返れるなら、もっと自分勝手に、自己中心的に生きたいと願う。」

彼は茶碗を置き、陶器が木の机に触れる乾いた音を立てた。

「だから今の若者はますます現実的で利己的になっている。他人を気遣うのは罪ではないが、利己的すぎて残酷になるのは立派な罪だ。」

その時、悲しげな顔をした若い女性が近づいてきた。

「私と彼氏は4年間付き合っていました。私が14歳の時彼は19歳で、私が18歳になったら結婚するはずでした。でも彼は変わってしまい、別れた直後に新しい彼女ができました。」

彼女がその男の写真を見せると、マルクールヴィストの唇に軽蔑の笑みが浮かんだ。

「なるほど、この野郎か。驚くな、私はこいつを知っている。」

マルクールヴィストは冷たく暴露した。

「あいつに愛などない。目的はただ一つ、肉体取引だけだ。」

彼は立ち上がり、女性に近づいて鋭く言った。

「あいつは『誰でもいい』という原則で生きている。女で、性欲を満たせればそれで十分だ。恋人のリストは多種多様——平らな胸、猫背、口が大きい、歯並び悪い、太っている、背が低い、年寄り……誰でもベッドに連れ込める。しかしあの女たちは、外見は完璧でなくても頭がある。あいつの本性——最低で女を食い物にする浮気男を見抜いている。」

マルクールヴィストは、彼女の元彼が40人以上の男と写った新しい彼女の写真を指差した。

「これがあいつの今の彼女か?」

女性が頷いた。

「はい、そうです。」

マルクールヴィスト:「見た目は悪くないが、残念ながら頭がないな。君はこんな男のことで落ち込む必要はない。」

女性に新しい出会いの機会を与えた後、マルクールヴィストはテヒモシンに向き直った。

「この仕事を4年やって、ありとあらゆる悲劇を見てきて、一つ断言できる。外向的な人は不倫率が非常に高い。」

テヒモシンは同意するように頷いた。

「外向的な人は人と接する機会が多く、誘惑も多いから避けにくい。一方、内向的な人は純粋で優しいせいで、外向的な人に騙されやすく、三角関係に巻き込まれやすい。」

テヒモシンはさらに尋ねた。

「じゃあ、君は彼らの不倫の理由についてどう思う? 彼らはいつも『家庭が不幸だから』と弁解するよね?」

マルクールヴィストは嘲るように笑った。

「幸せか不幸かなど、際限ない貪欲を隠すための言い訳に過ぎない。不倫の本質は新しい愛を探すことではなく、自己中心的な欲望を満たすための新鮮さを求めることだ。彼らに欠けているのは愛ではなく、自尊心と忠実さだ。一度道徳的原則を失った人間にとって、どんな理由でも正当化の材料になる。」

テヒモシンはマルクールヴィストの辛辣でありながら現実的な結論に思わず拍手した。

この「建築家」の世界では、すべての行動が冷徹に解剖され、内側に潜む醜い骨と肉が暴かれていくのだと、彼は改めて実感した。


第11章:大人ぶった殻の中の子供たち

2023年4月14日、金曜日。

中年男性が千年樹の下に、惨めな姿で現れた。服装は乱れ、目は充血し、酒の臭いをプンプンさせていた。彼は地面に崩れ落ち、泣き叫びながら訴えた——解雇され、妻に離婚を求められ、家を銀行に差し押さえられたと。

「俺は全部失った! あいつら全員殺して、それから自殺する! もう失うものは何もないんだ!」

男は叫びながら、震える手で小さな dagger(短刀)を取り出した。

テヒモシンは男が自暴自棄になるのを恐れ、思わず止めに入ろうとした。しかしマルクールヴィストは片手を軽く上げて制止した。彼は全く怯えず、湖のように静かな目で男を見つめていた。

マルクールヴィストは男を真正面から見据え、冷たい声で言った。

「人間が本当に『失うものが何もない』時、それが最も恐ろしい存在だ。」

男は動きを止め、凶暴な目でマルクールヴィストを睨みつけた。しかし「建築家」は軽蔑を込めた声で続けた。

「自分の姿を見てみろ。何をしようとしている? 怒りを晴らすために人を殺して、臆病者みたいに人生を終わらせるつもりか? それは『失うものがない者』の行動じゃない。ただのおもちゃを取り上げられたガキの駄々っ子だ。」

彼は心配で胸を高鳴らせているテヒモシンに向き直って言った。

「今の人間なんて、みんな大人ぶった体をした子供だ。そういう連中には、大人として接してやるしかない。」

マルクールヴィストは立ち上がり、ゆっくりと男のナイフに向かって歩み寄った。その圧倒的な威圧感に、男は震えながら後ずさった。

「本物の大人なら、灰の中から這い上がって人生を再建する方法を探す。ナイフを持って、他人のものを刺しに行くんじゃない。『何も残っていない』と言うが、まだ命はあるし、両手もある。ただ母親に甘やかされていた頃のように、社会が自分を慰めてくれないことに泣いているだけだ。」

マルクールヴィストは手を伸ばし、優しくも力強く、男の緩んだ手からナイフを奪い取った。

「金は渡さない。復讐も手伝わない。代わりに、西の炭鉱で働く仕事を紹介してやる。そこでお前は一欠片のパンを得るために死ぬほど働け。そこで本当の意味で大人になるか、疲れ果てて死ぬか——選択はお前次第だ。」

男は呆然とした。凶暴さは完全に消え、代わりに苦々しい目覚めが訪れた。彼は深く頭を下げ、黙って住所が書かれた紙を受け取り、静かに去っていった。

テヒモシンは安堵の息を吐き、その場にへたり込んだ。

「危なかったぞ、マルクールヴィスト。あいつ、本当に刺していたかもしれない。」

「奴らを『かんしゃくを起こしている子供』として扱えば、コントロールの仕方が分かる」とマルクールヴィストは平然と座り直し、何事もなかったかのようにスマホを再び手に取った。「この世に本物の大人が少なすぎるからこそ、体だけ大きくなった子供たちが好き勝手に行動するんだ。」


第12章:天才の灰と死の審判

2023年5月1日、月曜日。

すべてはいつも通りの日々だった。マルクールヴィストとテヒモシンは他人の話を聞き続ける仕事を続け、二人の距離は少しずつ近づいていた。

2023年6月1日、木曜日。

異様なほど静かな一日だった。テヒモシンは木の机に座り、客は一人も来なかった。退屈しのぎにソーシャルメディアを眺めると、アイデア盗用をめぐる非難の嵐が吹き荒れていた。ネット民は正義を叫び、警察の介入を求め、怒りに満ちた投稿が溢れていた。

千年樹の下の空気が、急に重く淀んだ。

マルクールヴィストは、自分の死期が近いことを悟っていた。

「テヒモシン、俺の時間はもうすぐ尽きる」とマルクールヴィストは静かに言った。その声はあまりにも平坦で、かえって背筋が凍った。「そして、君に知っておいてほしい真実がある……実は、俺はとっくに死んでいる。」

テヒモシンは言葉を失い、スマホが手から滑り落ちそうになった。彼は、うっ積された過去の物語を静かに聞いた。


マルクールヴィストの過去

19歳の時、彼は建築大学の優秀な学生だった。両親は貧しい清掃員で、彼は学問で人生を変えようと夢を見ていた。

マルクールヴィストは非常に優秀で、勤勉で、聡明だった。天文に通じ地理に詳しく、あらゆる学問で抜きん出ていた。

大学に入ってから、彼は「友達を作れ」と学校に繰り返し洗脳された(幼稚園から高校まで彼には友達がいなかった)。内向的で臆病な彼はそれを信じてしまった。そしてDazragon、Nuvéa、Trélling、Mirellinというグループに入った。

ある日、海面上昇で国が水没する危機というニュースを見て、彼は天才的なアイデアを思いついた。上下に移動可能な回転式建築物——地震、津波、洪水に耐えられる建物。文字通り「X」の形をしたその建物は、洪水が来れば自動的に上昇する。

彼は信頼していた友人たちに、グループチャットで詳細をすべて共有してしまった(利用され、裏切られるとは夢にも思わず)。

しかしグループのリーダーであるMirellinは、彼を嘲笑った。「夢見るだけの馬鹿げたアイデア」「実現不可能」と。

彼は一人で研究を続け、進捗をグループに報告し続けた。そしてついに発明を完成させた。

だがMirellinは密かに研究をすべて盗み、権力と金力で特許を登録した。研究は彼女のものとされ、学校に提出して100万ドルの奨学金を得、アメリカへの留学を果たした。「天才」として。

彼女の父親は建設省の有力者で、多額の寄付を学校に行っていたため、娘の罪はすべて隠蔽された。副学長は自身が経営する建設会社のために彼女の父親の後ろ盾を必要としており、他のメンバーも証言を拒否した。

彼は内向的で人付き合いが少なく、Mirellinは外向的で交友関係が広く、外部の友人や旧友に自慢し、SNSで拡散した(もちろん彼はブロックされていた)。両親は娘を自慢し、周囲は彼女を称賛した。

彼が真実を訴えても誰も信じず、グループチャットは彼女の指示で削除された。学校は彼女を擁護し、証拠は消えた。仲間たちは「そのアイデアは諦めろ」「お前は優秀なんだから他のも作れる」「利用されただけでも幸運だ」と言うだけだった。

内向的な者は常に損をする。

彼らの親は互いにコネがあり、利害関係で結ばれていた(Tréllingの父は建設省プロジェクト管理、Nuvéaの父は建設局、Dazragonの父はある省の知事)。彼らにとってマルクールヴィストは利用価値がない存在だった。

Dazragon:「お前が優秀ならそれでいい。コネもなければ利益もない。お前を雇うメリットが会社にない。」

彼らの人生は親がすでに設計済みだった。努力など必要ない。

悲劇はさらに続いた。彼の父親が交通事故で重傷を負ったが、誰も関心を示さなかった。これは明らかにMirellin派による口封じだった。

父親は孤独のうちに死んだ。

一方、Mirellinの母親が軽い風邪を引いただけで、庶民なら薬局に行くところを、彼らは高級病院で全身検査を受けた。周囲は女王のように彼女の母親を心配した。

うっ積は頂点に達した。武器も鞭もいらない。不正が貧しい天才学生の心臓を締め付け、彼は自室で突然死した。


テヒモシンは思った。(だからマルクールヴィストの被害者は皆、突然死だったのか……)

マルクールヴィストは言った。

「貧しさで死ぬことはない。苦しみで死ぬこともない。しかしうっ積は確実に人を殺す。武器など必要ない。」

テヒモシン:「続きを話してくれ。君は突然死したはずなのに、どうして今ここにいるんだ?」

マルクールヴィストは続けた。

指導者アン・モルクザラフトが現れ、彼を蘇らせ、正義を実行する存在にした。「この世界はお前のような者が必要だ。邪悪な心を持つ者たちから世界を救え。これよりお前の任務は、害意を持つ悪人を殺すことだ。」

彼が死んだ時、学校は一切守らず、調査もせず「死者はもういい、生きている者を心配しよう」と言っただけだった。

彼の告発に対し、学校側が気にしていたのはMirellinの安全だけだった。「彼女を守るためにどうするか」——それだけ。

Mirellinは自分のしたことに一切後悔していなかった。

それが、善人を魔に変えた。

その夜、Mirellinがアメリカ留学前の送別会で祝っているところに、彼は現れた。

彼女は恐怖に震えた。「マルクールヴィスト……お前、死んだはずじゃ……?」

「夢だ……これは絶対に夢だ……」

マルクールヴィストは言った。「俺は真実と正義と公正を求めてここに来た。」

Mirellinは夢だと思い込み、再び傲慢さを取り戻した。

「真実? 正義? 公正? そんなものがこの社会で生きていくのに役立つのか? 家を買えるのか? 車を買えるのか? お前が欲しいものを何でも手に入れられるのか?」

「金こそがすべてだろ? 病気の時、金がなければ病院は診てくれない。罪を犯しても金がなければ弁護士は助けない。この世界は金だけが現実だ。お前が追い求める真実や正義や公正など、意味がない。」

「見てみろ。お前が死んだ時、学校はお前を気にかけたか? それとも生きている俺を気にかけたか? 生きている人間は学校にお金をたくさんもたらす。死人は何もくれない。」

「人間が息をしている限り、金は必要だ。正義も道徳も名誉も人間性も、彼らには必要ない。」

「私が悪いんじゃない。お前が悪いんだ、ははは!」

マルクールヴィストは言った。「死んでも罪を認めないとは。」

「努力して自分の力で手に入れたものを、他人が平然と奪う。このことが人を死に追いやることもある。本気で言っている。」

彼は直接手を下さなかった。血は一滴もついていない。ただ触れるだけで寿命を金に変える。それだけで彼女を永遠の眠りにつかせた。

マルクールヴィスト:「俺が一番嫌いなのは、愚かで間違ったことをしながら、自分は正しいと思い込む女だ。」

「親が子供を正しく教育しない。過保護が駄目な子を作る。『女はいつも正しく、男はいつも間違っている』『私が間違っていたらそれはお前のせい』……なぜそんな思考を娘に植え付ける?」

「その思考が毒のある娘を生む。間違ったら正し、教え直せばいい。なのに『お前は正しい』と褒め、間違った行動を奨励するから、自分は常に正しく、他人は常に間違っているという思考が形成される。」

「親だけでなく、彼女の友達も彼女を駄目にした。女だからすべての過ちを見逃す。どこが間違っているのか教えてやらない。」

翌日、大学は全滅した。警察の調査で全員「突然死」という結論だった。実際はマルクールヴィストに寿命を奪われたのだ。

繰り返すが、マルクールヴィストは決して「人を殺さない」。

「一人の人間が腐っている時、その本人だけでなく、親と友人にも責任がある。」

「Mirellinは傲慢で、頑固で、盲目的で、意見を変えにくい女だった。他人の批判を受け入れず、自分は常に正しいと信じていた。決して人の話を聞かない。」

彼女が死んだ後、彼は悟った。

「この世に天罰などない。悪人はのうのうと生きている。悪を滅ぼすには、自分で手を下すしかない。」

「今の社会は皆、悪事を働いても天罰を恐れない。なぜなら天罰など本当は存在しないからだ。この世界に存在するのは金だけだ。いいだろう、人間が金をそんなに愛するなら、俺が与えてやる。」

マルクールヴィストの信条:

「悪を行えば天が罰する。天が罰さないなら、俺が天に代わって悪を罰する。」

彼はテヒモシンに問いかけた。

「なぜMirellinの友人や親族、知り合いたちは彼女を憎まなかったと思う?」

テヒモシン:「彼らが現実的で、互いに利用し合っているからだ。」

マルクールヴィスト:「正解。もう一つ理由がある。『コミュニケーション上手な人間は嫌われにくい』という言葉を知っているか?」

彼は唇を歪めた。

「第一に、Mirellinのようなコミュニケーション上手は感情を操る術を知っている。タイミングよく褒め、共感を装い、完璧な仮面を作る。人間は耳と目で愛する。常に心地よい言葉を話し、活発で親切に見せれば、人々は彼女の過ちを擁護する。『あんなに気配りができる子が、まさか……きっと誤解だ』——それが社会の仕組みだ。」

「第二に、彼らは嫌われる芽を、金や利益、心理操作で摘み取る。彼女を嫌うことは『悪い』か『損』だと感じさせる。」

「コミュニケーション上手で道徳のない者は、最も危険な悪魔だ。被害者を悪人に、自分を聖女に変える能力を持っている。」

「Mirellinのような人間を、社会心理学では『ハロー効果(Halo Effect)』と言う。外見が良くコミュニケーションが上手いと、周囲の脳は自動的にすべての悪い行動を美化する。」

「Mirellinは無実を証明する必要などなかった。ただ可愛らしく、賢く振る舞うだけで、群衆は勝手に擁護の理由を探した。それが、凡人だった頃のマルクールヴィストが味わった最も残酷な不正だった。彼には真実があったが、彼女には『好感』があった。」

「その巧みさが彼女を『触れられない聖女』に変え、被害者が真実を語っても『嫉妬』とみなされる。」

テヒモシンは初めて、なぜマルクールヴィストがあそこまで冷徹なのかを理解した。彼は悪魔などではない。長く悪魔に支配されてきた世界の、ただの被害者だった。


2023年6月2日、金曜日。

マルクールヴィストの過去をすべて聞いた後、テヒモシンは樹の下で静かに座っていた。行き交う人々の中には、「優しそう」で「気配りができそう」な人間が大勢いた。

「なぁ」とテヒモシンが言った。「コミュニケーション上手な人間はあんなに嫌われにくいなら、彼らの仮面を剥がす唯一の方法は何だ?」

マルクールヴィストは顔を上げず、金貨を指で弄びながら答えた。それは彼がこれまで奪った寿命の象徴だった。

「簡単だ。彼らを『優しく見せているもの』を奪い取ればいい。あいつらは金と権力と観客があってこそ優しく振る舞える。追い詰められ、利益が脅かされれば、中の鬼は自ら牙を剥く。その時、彼らの言葉は蜜ではなく毒になる。」

彼はテヒモシンを見て、鋭い目を向けた。

「Mirellinも同じだ。死ぬ直前、彼女は演技をやめた。俺を呪い、正義を嘲笑った。あれが彼女の本性だった。残念ながら、その時の観客は死神ただ一人だけだった。」

マルクールヴィストは立ち上がり、彼の影が地面に長く伸びて光を遮った。

「なぜ俺がお前を見習いとして選んだか分かるか、テヒモシン? お前は俺を見て怯えず、崇めもしなかった。俺を一人の人間として見てくれた。たとえ俺がとっくの昔に幽霊だったとしても。」

彼は古びてボロボロの革表紙のノートをテヒモシンに渡した。

「俺の時間はもうすぐ尽きる。この世界は気配りの上手い人間は溢れているが、真実を直視する勇気のある人間は少なすぎる。美しい言葉に騙されるな。彼らが拍手されない時に、何をするかを見ろ。」

テヒモシンは信じていなかった。マルクールヴィストは毎日「時間がない」と言いながら、毎日誰かを助け続けていた。


第13章:奇跡が消えた時と、感謝の心の空虚

2023年7月1日、土曜日。

世界は突然、その中心軸を失った。

かつて「建築家」の静かな事務所だった工科大学の正門前で、すべてが恐ろしい速度で崩れ落ちていた。

テヒモシンは呆然と立ち尽くした。

彼らの会話を見守り続けた巨大な千年樹は、今や干からびた骸のように枯れ果てていた。

華やかな大学キャンパスは一瞬にして荒廃し、何十年も放置されたように埃だらけで冷え冷えとしていた。

マルクールヴィストは死んだ。

それは予感でも、謎の失踪でもなかった。一ヶ月前、彼から過去と自身の正体を聞いたテヒモシンは誰よりもよく知っていた。マルクールヴィストが自然に消えるはずなどない。

彼には戦闘能力などなく、ただ「死神の手」——寿命を奪い、金に変える冷酷な権能だけがあった。

テヒモシンは小さく呟いた。

「……結局、誰が、あるいはどの組織が彼を殺したんだ?」

石の机の上に、一通の手紙がぽつんと残されていた。

インクは完璧に乾き、文字はマルクールヴィストらしい——簡潔で、潔く、無駄な飾りのない筆致だった。彼が人生を扱う方法そのものだった。

テヒモシンは手紙を開いた。一行目に自分の名前があった。


テヒモシンへ、

この手紙を読んでいるということは、俺はもうここにいないということだ。

俺の他の友人たちを探してくれ。

代わりに、彼らを助けてやってくれ。


裏面にはこう書かれていた。

俺の友人たちへ、

彼の名はテヒモシンだ。

良い人間だ。

彼が、お前たちを助けてくれる。


しかし本当の悲劇は、ここから始まった。

マルクールヴィストが死んだ瞬間、彼が与えた奇跡はすべて砂の城のように崩れ始めた。

街中で悲鳴が上がった。

彼によって「修正」された人々が鏡の前に立ち、絶望に震えていた。

長身で美しい女性たちは元の小柄な体に戻り、40kgの華奢な体は再び70kgの肥満体に戻っていた。傷一つなかった完璧な顔はひび割れ、元来の醜い欠陥を晒した。

最も恐ろしかったのは、死の世界から引き戻された者たちだった。彼らはその場で倒れ、身体は急速に冷たくなり、本来あるべき墓の下の骸へと戻っていった。

人々はマルクールヴィストを探しに殺到した。

しかしそれは純粋な愛情からではなかった。彼らは金と、自分の利益のために彼を求めていた。

この4年間、マルクールヴィストは狂ったように気前よく富をばらまき続けた。10ドルの水を買うのに1000ドルの札を出し、お釣りなど一切受け取らなかった。彼は小さな商店の命綱であり、貧者たちの希望だった。彼が消えた瞬間、金の流れは止まった。店は客足が途絶え、感謝の笑顔を浮かべていた店主たちの顔は、今や不安と「移動するATM」がいなくなった喪失感に変わっていた。

しかしその実利的な群衆の中で、本当に悲しんでいる目もあった。

幼稚園から大学生までの子供たちだ。彼は悪人の寿命を金に変えて得た金で、長い間こっそり彼らの学費を支えてきた。

彼らにとってマルクールヴィストは、悪魔でも変わり者でもなく、世界が背を向けた時に唯一、手を差し伸べてくれた人だった。

テヒモシンは手紙を強く握りしめた。

彼は苦い真実に気づいた。マルクールヴィストは正しかった。

人間は、奇跡が自分に利益をもたらしている時だけそれを大切にする。奇跡が消えた時、彼らは奇跡を生み出した人を泣かない。自分の財布が空になることを泣くだけだ。

「全部見抜いていたんだな、マルクールヴィスト……」

テヒモシンは虚空に向かって呟いた。「君がこの手紙を残したのは、俺に彼らを救わせるためじゃない。君が救おうとした社会の本当の姿を、俺に見せるためだ。」

夕風が枯れた樹の根元を吹き抜け、古い新聞を巻き上げた。

テヒモシンは肩にのしかかる重い責任を感じた。

彼は「建築家」が描いた道を歩き始めた。

マルクールヴィストの「友人たち」を探す旅が、ここから始まる。

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